川崎−木更津間フェリー
最近、ちょっと公私いろいろとあって気が塞ぎ込んでいました。休日と言えばやれ洗濯だ、やれ遣い物を届けに行けとか言われてゆっくりしている暇もなかった状態だったわけです。 そんな訳で昨日、休日だったことも忘れそうになって予定を組んでなかった為にぽっかりと暇ができてしまいました。これを散歩の日に使わないわけはない。そう思った私は気晴らしに前から言っていたフェリーに乗りに行ったのでした。 さて。現在東京湾を横切る感じで走っているフェリーは2つ。1つは川崎−木更津を結ぶもの、1つは久里浜−浜金谷を結ぶもの。後者は今年の正月に乗ったばかりなのでどうでも良かったのですが、前者にはずっと乗りたくてうずうずしていたわけです。まずは川崎に向いました。千葉の方に行くには遠いし、お金もかかるからです。フェリー乗り場は川崎駅からバスがあって、それに乗って行きます。バスはどんどんと工業地帯へ向けて走って行き、産業道路に入りました。さすがに休日だけあって道は空いていましたが、休日でも働いている人がいるようで、道の両側に林立している煙突からはもくもくと白い蒸気みたいなものがたっていました。また、バス停の名前も工業地帯らしく 「**工業前」というように企業名を付けているものが多かったのです。バスは30分ほどで終点に着きました。 出航時間を見ると今さっき出たばかり。仕方なく待合室で座ってようと中に入りました。売店があって、それを眺めるとなんとそこには「男女7人秋物語テレホンカード」なるものが売られていました。なんだかそれは千葉の銚子で見た「澪つくしの舞台 銚子」と似たものがあります。やがて船が着いたようなので私は乗船口へと向いました。 乗船口へと向った私は呆然としました。普通なら乗船口ってもんがありますが、そのような物は見当たらない。 ウロウロとしていた私を見て一杯荷物を持ったおばさんが「おねーちゃん、こっちだよ」と教えてくれたのは車が降りてくるところでした。「ここからですか?」と聞くと「そーだよ」と顔の皺を余計に深くして笑って答えました。船に乗ると船室を抜けてデッキに出ました。デッキには椅子が沢山あって船の後側の手摺の前の椅子に私はどっかりと落ちつきました。ここならよく景色が見えます。船がエンジンの音を響かせてゆっくりと出航しました。私はわくわくしながらじっと景色を見ていました。ふっと低音の爆音に気が付いて左を見ると羽田空港が近くにあります。飛行機がゆらゆらと熱気でぼやけていました。滑走路に入ると低い爆音を轟かせて一気に空へ駆け上がります。下にいる 私に灰色の腹を見せてみるみるうちに飛行機は遠ざかって行きました。その風景を飽きることなく何度も何度も見ていました。やがて川崎は小さくなり、銀色に光る煙突の林も随分向こうになってしまいました。席を立って左舷に回ってみると木更津の工業地帯がすぐそこにまで迫って来ていました。天気も川崎を出た時には晴天だったのが雲が出始めて海の上に濃い影を落とし始めました。木更津の煙突が煤けた赤茶色に見えたのは天気のせいだけだったのでしょうか。 防波堤の中に入ったフェリーはぐるりと回り込んで埠頭の方に向います。埠頭近くには橋があって その上に沢山人がいて下を通る船の方をみんな見ています。まるでパンダみたいだと思いながら その下を通過しました。そして埠頭が…埠頭が…。埠頭と言うよりも船着き場って感じでした。ともかく降りて木更津駅に向いました。駅からJRで浜金谷へ出るためです。キオスクで時刻表を買って電車の中で時間を調べました。電車は4:46頃に浜金谷に着きますがフェリーは4:50発だから一本ずらすことにして、次の5:30のに乗ることにしました。天気は段段と悪くなってきて雨がぽつぽつと降り始めて急に寒くなってきました。フェリーのデッキに上がった時にはもう日が暮れ始めてわずかに向こうのまだ天気のいいところだけが明るいようです。その境目のところにある雲は不思義な色をしていました。薄いピンクにわずかにグレーがかかって、まるでそれ自体が発光しているかのようでした。しばらくの間それに見とれていて気がつくと船はもう久里浜に向けて出航していました。水平線がうっすらとまだ分かります。空の薄いブルーグレーと海の濃いブルーグレーがゆっくりと混ざり合ってとうとうそれがわからなくなった頃にフェリーは静かに久里浜に着岸しました。 久里浜からはJRで鎌倉まで出て江の電、小田急といつものコースを辿りました。江の電に乗ったのは19:30過ぎでしたが、なんとなくいつも乗っている時と感じが違いました。休日で沢山の客を載せて忙しく動き回って、ようやく客がひいてほっと息をついているといったような安堵感みたいなものがありました。私の前に座っていた女の子が5、6才ぐらいの子でしたがかわいいピンクのワンピースを着て両手には一杯の花束を抱えていたのがとてもかわいらしかったです。 |