自宅〜鎌倉(バス)

 



バスが 鎌倉迄 つながりました
コ―スは
王子ー高円寺陸橋(新宿駅西口行)
高円寺陸橋ー野沢銀座(野沢銀座行)
野沢銀座ー五反田駅(五反田駅行)
五反田駅ー川崎駅(川崎駅行)
川崎駅ー横浜駅(横浜駅行)
横浜駅ー上大岡駅(栗木行)
上大岡駅ー鎌倉駅(鎌倉駅行)
となりました

所要時間はバス待ちを含めて7時間かかりました

土曜日は人が少なくていいです。やたらめったら観光客などいるとうざったくなって嫌になります。会社によっては3連休などということもあって主要幹線道は混んでいました。
 そのためかまずは高円寺陸橋そして野沢銀座へ行くまでえらく長くかかりました。その間私は近所の本屋で買った「伊集院大介の私生活」という本を読んでいました。
 川崎までは慣れた道なのでずっとそうしていましたが、川崎から先がまだ行ったことのない道なのでしっかりと回りを見まわしていました。横浜までのバスはずっと1号線を走ります。1号線はその独特の風景(道の両側が高い崖に囲まれて草木が茂っている)を見せていました。
 途中から近所の高校の生徒で空いてたバスは急に混み始めそして騒がしくなりました。彼女らの話の中心はいかにも学生らしく「気にいらない山本先生の行動」でした。他のグル―プは男の子の話、後にいたグル―プは昨夜のテレビの話をしていました。バスは遅れて横浜駅東口へ着き、まるで示し合わせたかのようにそれぞれのグル―プは近くのデパ―トに飛び込んで行きました・・・・。ああ、絵にかいたような女子高生(いかにもマンガに出てきそうなタイプ)なんだなと私は彼女らの後姿を見て思いました。
 私は横浜駅で磯子駅か大船駅か上大岡駅へ行くバスを探しました。その3つの駅が直接または間接的に鎌倉へ繋がるのを知っていたのです。
 そしてその3つともに行くバス(あ、3つともじゃない別々にです)行くバスを見つけました。
 磯子へ出るとそこから金沢八景へ行くバスに乗れる。しかし金沢八景からのバスはいつも乗ってつまらないので私は大船か上大岡へ出ようと思いました。幸い両方とも同じ11番から発車するので行ってみて早く来た方に乗ろうと思っていました。しかしです。大船行は朝夕しかなく仕方なく私は 上大岡を通るバスを選ばざるを得なくなりました。私の前にはおばさんが1人待っていました。
「あんた、栗木行に乗るの?」
おばさんは私を胡散臭そうに見て言いました。
「はい。上大岡までですがそのバスに乗ろうと思っています」
私が答えるとおばさんは腕時計を見せて
「29分発が来ないのよ、もう20分も遅れているわ」
と言い、
「正確には22分ね」
とつけたした。
「今日は道が混んでみたいですね」
と私が言うと
「そうね、どっかでお祭りがあるみたいだから」
と彼女は言った。
やがてバスが26分遅れで発車した。
「あんた学生さん?」
おばさんは私の前の席から振り返って言った。
「いえ違います」
私が言うとそのおばさんは不思義そうな顔をして
「そんな格好をしてるからお勤めしてるように見えないのよ、ごめんなさい」
おばさんは私の格好を見て言った。
「最近の若い子はやたらとおめかししてるからねぇ。年が若いくせに化粧だけは40の女に負けないぐらいに濃いんだから」
と言って笑った。確かに私はスッピンでボ―ダ―シャツにジ―ンズそして黒のズルズルのコ―ト(!?)を着ていたのでおばさんのその範囲には入らなかったようだ。おばさんはそれから20分ほど最近の若い子の事や息子がいかに頭がいいかなどの話をして降りていった。
 おばさんの話から解放されて私は改めて車内を見回した。運転手の他にもう一人同じ制服を着た人が乗っている事に気がついた。どうやら新米の運転手の指導らしい。新米運転手は上大岡へ着くまで3回も停留所を通り過ぎ、その度ごとに降りる客に謝っていた。
 そしてよーやく上大岡に着いたのは午後3時を回った頃だった。
 上大岡で鎌倉行を探すのは簡単でした。大船行と同じ4番から出ていたのです。大船経由で行くよりも直接に鎌倉を目指したので何本か大船行をやり過ごし待っていました。あまりに遅いので時刻表を見てみると鎌倉行は朝夕に5本ほどしかありません。
「げ、はまった!!」
と思いきや、それは平日用で土曜のを見てみると35分というのがあり、私はほっと胸をなでおろしました。そして日曜のを見てみると日曜は朝夕1本ずつしかなかったのです。
「今日が土曜でよかった」
と思いながら15分遅れのバスに乗りました。客は少なく8人ほどでその全員が5つ目あたりで降りてしまいました。とりのこされた私は本を読んでると運転手さんが
「おねーさん、どこまで行くの?」
と聞いてきました。
「鎌倉までです」
「駅まで?」
「はい」
私は答えました。
「こんな雨の日に観光かい?」(乗る時に私は金額を聞いたので近所の人ではないと悟ったのだろう)
と運転手さんはクラクションを鳴らしながら聞いてきた。
「いえ、ほんのちょっとした散歩です」
「バスで?」
運転手さんは珍しそうにバックミラ―で私の顔を覗いた。
「はぁ・・・。バスが好きなもんで・・・。」
「なんとかいうテレビ番組でバスに沢山乗るって、あれかい?」
「まあ、そんなところです」
「そういう人もいるんだねえ・・・もっとも俺らなんかは仕事だから毎日乗ってるけど」
と言って運転手は笑っていた。
「バスはねぇ、電車と違ってしょっちゅう遅れるからねえ。今日だって、随分遅れてるしねえ」
「そうみたいですねえ」
「しょうがないんだよね、こう車が多くちゃ混んで当たり前だからね。でも お客さんてのはそういう風には思ってくれないからね。この前は30分も遅れて文句を言われちゃってねえ。しょうがないんだけどね。道の混んでるのはどうにもならないからね。バスは空を飛べないしね」
運転手さんは笑いながら言った。
「お客さんに文句を言われるのも今じゃ仕事の一つだと思ってるからね」
運転手さんはそう言いながら大船駅前のバス停にバスを止めた。
 大船からは沢山の人が乗ってきた。ガラガラだったバスは急に混んでがやがやと騒がしくなる。これがさっきまでと同じバスの中だろうか?と思うほどに騒がしい。
バスは北鎌倉を過ぎた。大船から乗ってきた人が降りる代わりに観光客が乗って来る。さすがに外人さんも多かった。
 バスは明月院、建長寺を過ぎて八幡宮を過ぎてようやく目的地の鎌倉駅に着いた。一番最後に降りる私に運転手さんが振り向いて
「今度来る時は彼氏とおいで」
と言ってにかっと笑った。
鎌倉駅の駅舎の時計はすでに5時を指していた。さあてと。私は小町通りに入ると本屋に向った。ここに来る度に買う「かまくらからの手紙」という雑誌を買ってそのまま江ノ電に向う。それを読みながら今度は何に乗ってここまで来ようかなどと江ノ電の中で考えていた。
 とりあえず、それよりもマックでダブルチ―ズバ―ガ―を食べる方が先だなと思いつつ鎌倉を後にした・・・
 

indexhome