朝まで一緒に

byゆうりん様

 

「TOCT(トースト)」
横浜のカフェバーで大神とマリアは乾杯するとカクテルを片手にとりとめのない会話で楽しい時間を過ごし夜更けまで語り合った。
店を出ると二人は夜の横浜の海を見に行った。
春先とはいえ夜ともなるとまだまだ寒く冷たい海風に吹かれてマリアはかすかにブルッと震えた。
「さすがにまだちょっと寒いよなあ。でもここからみる夜景はほんと見事だよ」
沈黙を破るように大神はぽそっと言った。
マリアは美しい色とりどりのライトが灯る夜景には目もくれず、ただじっと暗い何も見えない海を眺めていた。
「マリア、どうしたんだい?」
大神はいつまでも一心に海を見続けているマリアのことが気になって声をかけた。
その声にハッとなってマリアは我にかえり、少し顔をうつむかせて話し始めた。
「…思い出してたんです。ロシアからアメリカに向かう船の上でずっと夜の海を眺めていたあの時のことを‥」
マリアは手を胸の上に置き、ロケットの感触を確認しながら一呼吸おいて話を続けた。
「甲板の上から一人で黙って海を眺めていると何だか吸い込まれていきそうなそんな気を起こしたこと何度もありました。不思議ですね。今はなんでそんなことを考えたのかと疑問に思うくらいなんですから」
そう言って大神のほうを見つめ微笑んだ。
大神はその微笑みにつられるようにマリアに近づき優しく抱きしめてささやいた。
「良かったよ。その時君が思いとどまってくれて。でなきゃこうして楽しい時間を過ごしたりすることもなかっただろうし、ましてや好きになることだって…マリア、君と出会えて本当に良かった」
マリアはしなやかな身体を大神に預けていたが、その言葉を聞いてゆっくりと顔を上げ綺麗な翡翠の瞳でじっと大神を見つめた。
二人は遠く響く汽笛を耳にしながらいつしか深い口づけを交わし抱きしめあった。
しばらくしてマリアはそっとためらうように訊いた。
「あの‥隊長、もうこんな遅い時間ですしそろそろ帝劇に戻らないと‥」
「ああ、そうだな。じゃ行こうかマリア」
大神はマリアの手を取るとスタスタと歩いていく。
急な坂道の階段を昇りどんどんと早足で歩いていく大神にマリアは途中で足を止め、少し咎めるような口調で訊いた。
「隊長、いったいどこ行くんですか?こっちは帝劇の方向じゃないですよね」
大神は振り向いてうん、とうなずくとつらっとした顔で言った。
「この上のホテルの部屋に予約を入れてあるんだ。そこに行こうと思って」
マリアは少しの間、じっと佇んでいたが大神の手を振りほどきくるっと背を向けると階段を下り始めた。
「あ…マリア、どこいくんだい?」
「帝劇に決まってるじゃないですか。早く戻らないとかえでさんが心配しますっ!」
大神は慌ててマリアの前にまわり動きを止めるようにギュッと抱きしめた。
「離してください、隊長」
「離さないよ。今夜はマリアとずっと一緒にいたいんだ。外泊許可だってちゃんととってあるしね」
マリアは驚いたような表情をし大神の顔をじっと見つめた。
「外泊許可‥って誰にですか?まさかかえでさんに?」
「うん。俺がマリアと出掛けることを伝えたらあそこのホテルの予約を手配してくれたんだ。たまには二人でゆっくり過ごしてきなさいってね」
その言葉を聞いてマリアの顔がパーッと真っ赤に染まった。
大神はまっすぐにマリアを見つめて続けて言った。
「ごめん。何も告げずいきなりで。だけど二人っきりで過ごせるかと思うと嬉しくて気が急いちゃってね。‥改めて訊くよ。今夜はずっと俺と一緒にいてくれるかい、マリア」
マリアはうつむいてた顔を少し上げ、まだ頬を赤く染めたまま上目づかいに大神を見てブツブツとつぶやくように言った。
「そんな改めて訊かれると私、その‥何て言ったらいいのか‥」
それでもかすかに首を縦に振るマリアに嬉しさを隠しきれない様子の大神は今度はマリアの肩を抱き、ホテルへの階段を昇った。
大神に肩を抱かれながらマリアはしょうがないという顔つきで恋人の顔を見つめた。
そのマリアの胸の中に去来するものは喜びと淡い期待とそして何故かかすかな不安だった。


部屋に着くと窓から見える夜景の美しさに思わず見とれてしまい、マリアはしばらく窓ガラスに手を置きじっとそのままでいた。
「きれい…上から見る夜景の美しさって星空を見上げるのとはまた違った何ともいえない趣きがありますよね」
そう言うマリアを大神は後ろからそっと抱きしめ「そうだね。でも夜景も綺麗だけど俺は目の前の君の方が何倍も綺麗に見えるけどな」と言うと絹糸のような淡いブロンドの髪に顔を埋め、ほの甘いマリアの香りを思いっきり吸い込んだ。
「あ…っ」
マリアは小さく呻くと身体を戦慄かせる。
大神は白く滑らかなうなじに唇を這わせると手を前に持っていってスーツの上から豊かな乳房を揉みしだいた。
「待って…下さい隊長、お願いです。明かりを消してください」
大神は意地悪く笑って答えた。
「いやだよ。明かりを消したらせっかくのマリアの身体が見られないじゃないか。それに二人っきりの時は隊長はなしって言っただろ」
「あ、すみません大神さん。でも‥あっ」
言葉を言い終える前に大神は突然マリアを抱きかかえると唇を重ねてベッドに移動し、壊れものをあつかうかのように優しくそっとマリアを下ろした。
大神はマリアの身体に覆いかぶさると普段は隠れている左側の髪の毛をかきあげ、緑の宝石のような両眼を見つめ耳元でささやいた。
「でも…なんだい?」
「恥ずかしいんです‥だから‥」
消え入るようにつぶやくと訴えるような目で大神を見つめる。
ロシアで初めて結ばれて以来、その後何度か愛を確かめ合ったがいつまでたっても少女のように初々しいマリアに大神はたまらなく愛しい気持ちが溢れ、またつい意地悪をしてみたくなる悪戯心もでてしまう。
大神はネクタイを外すとマリアの頭に巻き目隠しをして言った。
「これならマリアの目も見えないし恥ずかしくないだろ?」
「た、隊長。そういう意味じゃなくて‥」
マリアの懇願するような声を無視して大神は素早くスーツの上衣を脱がせると薄手の白いセーターを胸元までたくし上げ、明るい光の下に形の良い乳房を晒した。
ゴクリと唾を飲み込むとマリアの耳元に「綺麗だよ」とささやき、大きな手で胸を揉みしだきながら目隠しが外れないようにセーターをゆっくり脱がせた。
「あ‥っ‥ん」
胸を揉まれながら時々乳首をつまみ上げるのでマリアはたまらず声をあげてしまい慌てて口を手でふさぐ。
「大丈夫。ここは二人っきりだから声、だしてもいいよ。マリアのエッチな声もっと聞きたいな」
「そんなこと…ひどいです‥」
マリアは目隠しを外そうとして両手首を押さえ込まれ、唇に暖かい感触を感じたかと思うとぬらっとした舌が歯の隙間をぬって割り込んできてマリアの舌を絡めようとした。
「う…んっ‥」
舌と舌を絡めあい大神は押さえ込んでいた片手をずらして乳首に刺激を与える。
深いディープキスと胸への愛撫でマリアはすっかり身体の力が抜けてしまい甘く痺れる快感に身体をうちふるわせていた。
やがて大神は唇をゆっくりずらすと顎、首筋、肩、鎖骨と少しづつ下にずれて焦らすように双丘の谷間や乳輪の周りを舌で這わせる。
マリアは目隠しをされているので今どこを愛撫しているのか感覚でしかわからなかったが唇が乳首に触れた途端、ビクビクと身体中に電流が走ったかのような感じを受け思わず淫らな喘ぎ声を出してしまった。
その声を聞いて大神はニコリと笑うと左右の乳首を交互に舌と唇で執拗に責め、手は徐々にスラックスの方へ伸びて脱がせに入る。
マリアはハッとしたように身をよじらせるがそれより早く大神はスラックスと下着を一気に引き剥がした。
明るい光の下、全裸になったマリアの身体を大神はじっくりと眺める。
いつもの白い陶器のような肌は先程からの愛撫でうっすらとピンク色に染まり、横になっても形の崩れない豊かな乳房と固くピンと尖ったピンクの乳首。
ほっそりした曲線のウエストを辿りなだらかなお腹の下の淡い金色の茂み。
そこまで目がいくと大神の興奮度は一気に上昇した。
人差し指で秘唇の割れ目をなぞりやがてゆっくりと中に進入させる。
「は‥あっん…」
敏感に反応してマリアの身体がしなり甘い声を漏らす。
大神は指で一番感じやすいマリアのピンクの突起をさすり意地悪くささやいた。
「今、どこをさわっているかわかるかい?」
マリアは粗い呼吸をしながら小さくうなずいた。
「じゃ‥言ってごらん」
「そ‥んな言えません‥」
マリアは恥ずかしさで顔を真っ赤にしてつぶやくように言った。
「言わないとこうするよ」
突然、大神は両足をガバッと左右に大きく開かせると秘唇をめくりあげむきだしになった隆起を強く指でこすりあげて顔を埋め歯で甘噛みをする。
「いやあああ‥っ!は‥あっ‥」
大神のこの行為にマリアはあられもない大きな声をあげいやいやをするように首を振った。だが大神は何度かその愛撫を繰り返す。
「大神さん、もう…」
これ以上されたらおかしくなってしまうと感じたマリアが大神に訴えるように言った。
「‥言う気になった?」
マリアはうなずくとその名称をやっと聞き取れるかどうかの小さな声で大神に告げた。
その答えに満足した大神は今度は愛液で濡れまくっているマリアの花弁を押し開き2本の指で膣壁をこすりあげる。
「う‥っはあ‥んっ」
大神が指を抜き差しする度にどくどくと新しい愛液が溢れそれは下に伝ってシーツの上に大きな染みを作った。
「すごいよマリア、こんなに濡らして。わかるかい?」
そう言ってわざとぐちゅぐちゅと大きな音を響かせ、マリアに聞かせるようにするとあいた指で自己主張をする如くムクムクとぷっくりふくれた隆起を撫でてもう片方の手で左の乳首をつまんだりこすったりを繰り返した。
三ヶ所を同時に責められマリアは昇りつめていく感覚が一挙に高まっていった。
心の片隅でこんな淫らな声をあげ、愛撫に反応していやらしく腰をふる自分に驚きと羞恥を覚えたが絶頂に近くなるとそんな思いもどこかに吹き飛んでしまっていた。
「お‥が‥みさんもう‥」
掠れた声でとぎれとぎれにつぶやく。
「いいよ。いっちゃっても」
大神は更に激しくくちゅくちゅとマリアの中で指を動かしピンと軽く隆起を弾いた。
そのとたんマリアの意識はぷっつりと切れ、反った身体をがくんと落としはあはあと息をはずませて手足がだらんとのびた。
大神はマリアの絶頂を満足そうな顔で確認すると指を抜いて手早く自分の衣服を脱ぎ捨てマリアの目隠しを外した。
昇りつめた後でマリアの瞳はとろんとなっていていきなり目隠しを外されたため目の焦点が合っていなかったが、目前の大神の隆々とした一物を認めると目を大きく開き慌てて反らす。
大神はマリアの手を取ると自分の一物の方に持っていき握らせてして欲しいことを伝えた。
明るい中でまじまじと男性部分を見るのは初めてだったマリアは顔を真っ赤にさせながらぎこちなく大神の言われたとうり右手でしごき始める。
ビクビクと脈をうちマリアの手の中でそれは大きく固くなり、今にも爆発しそうにピンと上を向いている。
しばらくそうしているうち堪らなくなった大神は「マリア、キスして‥」と言うとマリアの顔に自分の一物を近づけた。
いきり立ったものが口の中に入り込み、異物感とのどの奥にまで進入してくるそれに吐きそうな気分に襲われそうになったが何とか持ちこたえ、やがておずおずと舌でつつみこむようになっていった。
「う…っ」大神は短く呻くとマリアの口腔に白い精を放出した。
生あたたかい液体が口から溢れ独特の匂いと未知の不思議な味でたまらずマリアはむせ込んでしまった。
「ごめん、マリア。あんまり気持ちよかったから‥」
大神はそう言いながら備え付けのタオルでマリアの顔を拭いた。
マリアは首を横に振ると大神にもたれかかる。
少しの間、抱きしめ合っていた二人だったが大神はゆっくりとマリアを横たえさせ再び深く口づけをすると足を割りその柔らかい襞肉の中へ自身を埋め込んでいく。
「あん‥あっ」
さっきの愛撫でしっとりとなっていたため難なく大神の物を受け入れ、やがて大神が腰を使いだし蠕動の動きをするとマリアの腰もその動きに合わせ喘ぎ声もだんだん大きくなり快感も高まっていった。
それから二人はいろいろと体位を変え最後に大神の上にマリアがまたがる形で結合し同時に昇りつめ果てた。
互いにはあはあと息をはずませベッドに横になりじっと見つめ合う。
ふと、マリアの表情の奥に不安そうな陰を認めると片手で金糸を指に絡ませ抱き寄せると「どうしたんだい?そんな不安そうな顔をして」と訊いた。
「私、そんな顔してましたか?」
「うん」
マリアは切ない顔をして小さくため息をつくと話はじめた。
「幸せすぎて‥恐いんです。こんなにあなたの愛情を受け、傍にいて暖かい温もりを感じるのにどうしても大神さんが私から離れていってしまうような不安が消えないんです」
大神は以外だという表情でマリアの顔をじっと見つめた。
「俺が君の傍から離れるなんてそんなことあり得ないよ。だいいち翔鯨丸の中で誓ったじゃないか。君は俺が守るって。あれは嘘なんかじゃないよ」
大神の少し強い口調にマリアはハッとなりうつむいて「ごめんなさい」と謝った。
首に架かっているロケットをギュッと握りしめて小さくなっているマリアを見つめていた大神は今度は優しい口調で語った。
「俺はね、マリア。この先はどうなるかなんて分からないけどマリアを大切にしたいという思いは絶対に変わることはないよ。この気持ちは信じてほしいんだ。それでも‥不安になる?」
真摯な顔で一言一言強い自信でみなぎるように話す大神にマリアの胸はジンと熱くなり、涙に潤んだ瞳で大神を見上げ小さく首を横に振るとニッコリ微笑んだ。
大神はその微笑みに安心したような顔をすると今度はおどけた口ぶりでマリアに尋ねた。
「ところで‥さ、そのロケットの中身やっぱり見せてくれないの?」
マリアはフフッと笑うと「ええ。内緒です」と答えた。
「じゃあ、俺またマリアをいじめちゃおうかなあ。さっきのマリアはとっても可愛かったし」
「隊長!!」とたんに顔を真っ赤にしてマリアは大神の胸に拳をふりあげる。
大神はその振り上がった拳を寸前で握りしめ、顔を近づけるとキスをして舌を割り込ませる。
「う‥っ‥ん」
突然のディープキスに呼吸が一瞬止まり、戸惑いながらも侵入してきた舌を優しく受け止めた。
ようやく唇を離すと大神は愛おしそうにマリアを見つめ「今夜はずっと‥いや朝までマリアと一緒だ」そう嬉しそうに呟くと再びキスをして身体を重ねる。
マリアは大神に抱かれながら今このひとときの安らぎを大切にしようと心に決め、そっと微笑みを浮かべると目を閉じた。



                      fin


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