「夕食、何が食べたい?」
土手から降りて、夕暮れの街をスーパーに向かって歩きながら龍麻が僕に尋ねる。
「僕が作るよ。今朝のお礼。」
「ダメだよ。紅葉に食べてもらうのに、必死で練習したんだもん。ちゃんと成果をみてくれなきゃ。」
龍麻は頬を膨らませて反論する。それじゃあ、何か簡単に作れるもの。僕は考えて無難な答えを口にする。
「じゃあ、…パスタ。」
「了解。なんのパスタが好き?」
「龍麻は?」
僕はそれほど何が好きというものはない。いっそのこと龍麻の好みに合わせようと逆に尋ねてみると嬉しそうに声を弾ませて答えてくれる。
「なんでも!ツナときのことか、ナスとひき肉とか、ピーマンとエビとか。カルボナーラも、普通のミートソースも好きだし。」
「じゃあ、オーソドックスにミートソース。」
「ん、わかった。」
スーパーに入ると、かごは僕が持って龍麻の後を付いて回る。いつもは一人で、さっさと10分もかからずに済ますけど、龍麻はあれこれ悩みながら買い物をする。
「ねぇ、赤ワインなんてある?」
「料理用でいいなら、まだ半分くらいあるけど。」
「たまねぎとか?」
「たまねぎは…ないな。」
「オリーブオイルは?」
「ある。」
いつもの僕なら、買い物に何十分もかけるのは時間の無駄だとかって思うだろうけど、龍麻が一緒だというだけで買い物自体もとても楽しい。スーパーの袋を下げて、僕の部屋に戻る道行きも隣に龍麻がいるだけで全然違う、とても楽しい時間。
「紅葉ってさ、拳武館の師範代なんでしょう?」
「一応ね。」
「じゃあさ、卒業してからも拳武館に指導とかで行くの?」
「ああ。時間が出来ればなるべくは顔を出そうって思っている。」
「そうなんだ。私も、行っても大丈夫かなぁ?」
「勿論だよ。…龍麻だって、奥義を習得したんだからね。」
きっとその方が館長も喜ぶだろうし、僕だって一緒にいると嬉しいから。兄妹弟子だということにさえも感謝したくなる。
マンションに戻ると龍麻は腕まくりをして早速支度に取り掛かった。それでも心配だった僕はキッチンに入って手伝おうとしたが、逆に龍麻を怒らせてしまい、キッチンからの強制退去を命じられてしまったのだ。
仕方がないので僕はキッチンの龍麻の後姿が見える位置にクッションを置いて座っている。如月さんの家で料理の手ほどきを受けてきたというだけあって、仕事の様にはあまり不安な様子はない。たまねぎをみじん切りしている包丁のリズムも多少僕よりも遅いけれど悪くはない。ぼんやりと龍麻の後姿を眺めながらじわりと、胸に甘いうずきが広がる。
僕の半身。陽の龍。
誰からも好かれる人。こんな僕を好きだと、血に塗れた穢れた僕を好きだといってくれる人。心に純白の羽を持つ人。
一生、叶わない思いだと諦めていた。僕はずっと眺めているだけで幸せだと思っていた。その彼女が今、キッチンで僕のための夕食を作ってくれている。
息が止まりそうなほど幸せな時間。僕をこんな幸せな気持ちにしてくれる龍麻に、どうしたら僕は報いることが出来るだろう。
そう考えると、龍麻に何も返すことの出来ない自分にひどく失望する。
せいぜい、龍麻が好きなケーキや料理を作るだけで、それさえも如月さんにだってできること。僕だけが龍麻にしてやれて、喜んでもらえることがない。
「お待たせ〜。」
龍麻がキッチンから出来上がった料理を運んできた。見た目も味もなかなかで、料理はあまり得意じゃなかったはずの龍麻が、相当頑張ったんだなということがすぐに分かった。
そんな龍麻に僕は何をしてやれるのだろう。
「紅葉〜?」
隣にいた龍麻に呼びかけられてはっと我に返る。
「さっきから、ここ、眉間に皺寄ってる。」
龍麻は食後のコーヒーのカップを置いてから自分の眉間をぐりぐりと指した。
「あ、ごめん。」
慌てて顔の筋肉の力を抜く。
「何か、悩み?」
龍麻は僕の顔を下から覗き込んだ。至近距離で見た龍麻の瞳の綺麗さに改めて驚いて、思わず目をそらしてしまった。
「そんなんじゃ、ない。」
「じゃあ、なんで目をそらすかな?」
ずずいと龍麻は僕に攻め寄ってくる。その拍子に触れた龍麻の体に、僕の体は過剰反応を示してしまう。どきどきと鼓動が早くなる。本を持っていた手のひらは汗をかく。
龍麻を抱きたい。そんな衝動が僕の中を稲妻のように走り抜ける。
龍麻本人は、僕のそんな気持ちに気付かないのか、さっきと同じ体勢のまま僕の顔を覗き込んでいた。
「ちょっと考え事。」
僕が答えると龍麻はふっと表情を凍らせてすいっと僕から体をひいて元の体勢に戻っていった。龍麻の体が触れていたところの感触がなくなったことに残念に思いながら龍麻を見ると、少し俯いて表情を曇らせている。
「た、つま?」
声をかけるとすぐさま、にこ、と微笑んで返してくれる。それがあんまりに綺麗な笑顔で、僕はまた性懲りもなくどきどきとしてしまった。
さっき、土手でキスをした。もう一度したら、怒るだろうか?
ふと、龍麻の手を見る。白くて、華奢な細い手は、あれだけ強力な剄を繰り出すなんて信じられないほど。この手を握って、華奢な体を抱き寄せたら、龍麻はどうするだろう?怒るだろうか、許してくれるだろうか。
自分の手をぴくりと動かしかけて、途端に僕は凍り付いてしまう。
この汚らわしい体で龍麻を抱いたら、龍麻を汚してしまう。
僕は動かしかけた手を握り締めた。
丁度ついていたテレビが8時の時報を鳴らす。
このままここに一緒にいたら、僕は自分を抑える自信がない。
「…そろそろ、帰るかい?送っていくよ。」
僕は絶望に近い気持ちで立ち上がった。
先に立ち上がった僕を見上げた龍麻の顔は、冷たい表情で、彼女もすぐに立ち上がって玄関の方に歩き、置いてあった彼女のバッグを拾い上げる。
「送らなくっていい。一人で充分。」
「でも、夜道だし。」
「陽の龍の技も、陰の龍の技も使える人が危ないって?」
くすっと笑うと靴を履いて、続いて靴を履こうとした僕を目線だけで制止する。
「また、ね。」
そう言って龍麻はあっという間に玄関から出て行ってしまった。
僕は龍麻の消えた扉を呆然と見つめ、その場に崩れるようにして座り込んだ。
これでいい。
龍麻はその純粋さゆえにみんなに愛されている。僕がそれを汚してしまうことなんて許されない。
そう思っているのに。ひどく悲しくって、心が凍るようだった。
もっと自分の手が綺麗なら、龍麻の手を取ることが出来るのに。龍麻の手を取って、自分のものにしてしまえたのに。
僕は己の両手を見ながら力なく笑った。
こんな僕でも、人並みに人を好きになって、思いがけずそれが叶って。そうして、また思い上がって。…本当に甘ちゃんは自分自身だ。穢れている自分には変わりないというのに。
「ははは…。」
自分でも呆れてしまう。
それなのに、やっぱり龍麻が欲しくて。汚してしまうと分かっているのに、欲しくて。産まれて初めて他人に側にいてほしいと、心も体も自分の方に向いていて欲しいと願う。
玄関で急いで靴を履く。まだその辺にいるかもしれない。
鍵もかけずに部屋を出てエレベーターの前に行くとエレベーターは1階で止まっていた。
階段で降りた方が早いか?そう考えて、階段に行こうと振り返った時だった。
「お出かけ?」
壁にもたれて立っていた龍麻が笑った。
「た…つ…。」
予想外の出来事に呆然として立ち尽くしている僕にかまわず、不満そうに龍麻は呟く。
「ちょっと、自信無くすよね?一緒にいるのにうわの空だし。もう帰れとかって言われるし。」
「あ…。」
僕はそこで初めて龍麻にすごく悪いことをしていたことに気付いた。
「ほんとはこのまま帰っちゃおって思ったけどさ…。ホワイトデー終わるまでは紅葉の側にいようかなって思って。」
「まさか、ここにずっといる気で?」
「ここが一番、紅葉に近いでしょ?」
くすくすっと龍麻が笑う。
次の瞬間には僕は龍麻を抱きしめていた。
「ごめん…。」
外に出ていたのは少しの時間だというのに腕の中の龍麻は冷えていた。それでも笑ってくれる。
「中に入ろう。」
龍麻を抱えるようにしたまま家に戻ると暖房を少し強める。温まるように紅茶を淹れて龍麻に出した。
「…僕は…龍麻に…何をしてあげられるんだろうね。」
ふー、ふーと紅茶を冷ましながら飲んでいる龍麻に僕は問い掛けた。
「僕は、龍麻がいると、こんなにも幸せなのに、僕は龍麻に何もしてやれない。…そう考えたら、とても…。」
「おんなじだよ?」
龍麻の声に僕は俯きかけた顔をはっとして上げる。
「紅葉がいると、幸せ。だから同じ。」
今更何を言う、というような顔で龍麻が笑う。
「それどころか、私の方が一杯助けてもらってる。…自覚ないのね?」
彼女はそう言っておかしそうに笑った。
「どうしても何かしてくれるって言うなら、側にいて。ね?」
鮮やかに笑った彼女に、僕は叶わないと、そう思った。
「でも、僕は龍麻の側にいると…。」
「うん?」
「龍麻が欲しくなる。」
「じゃあ、抱いて。」
いとも簡単に龍麻は口にする。
「ダメだよ…僕じゃ、君を汚してしまうから。」
そう言った僕に龍麻はきょとんとした顔をした。
「龍麻は真っ白だから。僕なんかが抱いたら、穢れちゃうよ。」
「真っ白、じゃないよ?」
「ううん。…僕には、龍麻が純白に見えるんだ。」
すると、うーんと龍麻は困った顔をして、でもすぐに何かを思いついたようで嬉しそうに微笑んだ。
「あのね、聞いた話なんだけどね。」
龍麻はそう前置きをしてから座りなおして僕に向き直る。
「車のスーパーホワイトって色、知ってる?」
「ああ。真っ白な色。」
「うん、そう。あれね、どうやって作るか知ってる?」
急に何を言い出すんだろうと僕は首を傾げた。
「ううん。」
「ホワイトって少し黄ばんだような色でしょう?そのホワイトの塗料に、黒を少しだけ混ぜるんだ。そうするとね、鮮やかな白になるの。」
にっこりと彼女が微笑む。
「ほんとは、私は純白なんかじゃないけどね。紅葉が私は白って言うんならそれでもいい。だから汚せないっていうのなら、こう思って?白の私を純白にするために紅葉がいるって。すこしだけ混ぜる黒が紅葉だから。黒がないと、純白にならない。」
そう言った龍麻の瞳は強かった。
ああ、本当に君には叶わない。龍麻は華奢な腕を僕に向けて伸ばすと、そうっと僕を抱きしめて僕の唇を塞いだ。長い口付けのあと、離れていく龍麻の唇を残念に思いながら見ると、悪戯っぽい笑顔で微笑んでいた。
僕は龍麻を抱きあげて隣の部屋に入る。そっとベッドに降ろすと龍麻はくすぐったそうに微笑んだ。
「もう止められないよ?」
そういう僕に龍麻がうなづく。その紅い唇に自分の唇を重ねて、柔らかさと暖かさを味わって、またすぐに離し、再びまた唇を重ねる。そうして短い、ついばむようなキスを繰り返し、だんだんと長いものに変わっていく。重ねるだけだった唇の隙間から僕は舌を龍麻の唇に潜りこませ、薄く開いた歯列を割り龍麻の舌に絡ませる。吸い上げるようにすると龍麻の息がふぅんと甘い響きを含むようになってきた。
キスをしながら、僕の手は龍麻の衣服を取り去ろうとしていた。元来薄着な彼女、シャツをたくし上げ、ブラのフロントホックを手探りでぱちりとはずすと押し込められていた果実がぷるんと震えるように開放される。ついでに穿いていたスカートも取り去ってしまうと一度唇を離して、龍麻のしなやかな裸体を眺める。体にぴったりとした服を着ているのを見たことがないので今までわからなかったが、こうしてみると随分良いスタイルをしている。あの一連の事件で体のあちこちに傷が残っているが、クリスマス前のあの大怪我でさえ黄龍の生命力によるものか、既に傷痕は薄くなりつつある。白い、すべすべとした肌が晒され、いくら暖房をつけているとはいえ、多少の寒さのせいか、胸の突端にある飾りはぷっちりと誘うように立ち上がっている。そのあまりの美しさに、僕はかなり興奮を覚えて、喉に溜まった唾液を嚥下する。
「恥ずかしい…。」
あまりに僕がじぃっと見るので、龍麻はそう呟いて腕で胸を隠して身を捩ろうとするがそれを抑えて龍麻の体にのしかかろうとする。
「紅葉も、脱いで?」
龍麻の言葉に僕は苦笑した。全く着衣を崩していなかった僕は、そのままシャツなど着ている物を全て脱ぎ捨てた。そうして改めて両膝に手をかけて足を割るとその中に体を割り込ませ、覆い被さって、白く細い首筋に口付ける。直接肌に感じる龍麻の体温が心地いい。
「あ…ん。」
くすぐったいのか、龍麻が漏らした声音に大きく心臓が跳ねる。思ったよりも遥かに甘い声に、それだけで僕のモノに血液が流れ込んでいく。まずい。本当に押さえが利かなくなるかもしれない。
僕は龍麻の首筋に所有の証に紅い印を刻みつけながら、手は柔らかな双丘に這わせた。外側から包み込むようにしてそっと揉みあげると龍麻の体がびくりと震え、先ほどよりもさらに甘い声を漏らす。
龍麻はその声に自分でも驚いたのか、小さくイヤイヤをした。
「もっと、啼いてごらん?」
耳元でそう囁くと龍麻は真っ赤になり、恥ずかしそうに唇をきゅっとかみ締める。けれども、胸に加えられる刺激に我慢できず、すぐに鼻にかかったような甘い喘ぎが唇から漏れ始める。
僕はそれに気をよくして白い首筋から鎖骨を通って唇を胸に滑らせ、ピンク色の突端を口に含んでちゅくちゅくと吸い上げた。
「ふっ…んんっ…。」
龍麻の声が少し高くなり、それを聞きながらさほど大きくない突端を潰すようにして舌で愛撫をする。鼻にかかった龍麻の嬌声が舌が動く度漏れて、一層下半身が猛っていくのを覚えた。舌での愛撫をしながらそっと龍麻を見ると、とろんとした目は微かに潤んでさらに僕を煽る。
もっと龍麻の痴態を見たい。そう思って今度は軽く歯を立ててみた。
「きゃ…あぁん…。」
声をあげて体を大きくしならせた。
「やぁっ…くれ、はぁ…。」
いやいやをするけれど、僕はそれに従うつもりなどとうにない。
片手を胸からするりと滑らせて撫でるようにして脇腹、腰、体の外側のラインに沿って手を這わせていくとびくびくと律儀なほどに体が反応する。膝のところまで行った手を膝頭でUターンさせて内腿をゆっくりとなで上げると柔らかな感触がして、くすぐったいのか、龍麻の体が捩れる。
そこまでいくと僕は我慢が出来なくなって、そっと秘裂に手を這わせた。そこは既に含みきれなくなった大量の蜜が溢れ、手を触れただけで指先がとろりとした感触に濡れる。
「すごい…濡れてるよ…?」
龍麻に囁くと恥ずかしそうに顔を背けてきゅっと目を瞑る。その様子があまりにも可愛らしくて、ぞくぞくと背筋の辺りを怪しい感覚が走り抜ける。さらに指を上に這わせて、花弁にも触れてみた。
「や…ああん…。」
甘い嬌声が彼女の口から漏れる。もっと指を上に這わせると花芯に行き当たる。人差し指と親指で軽く摘むと甘い悲鳴とともに激しく体が戦慄いた。愛撫を続けていた胸から唇を離して彼女を見下ろすと、刺激のたびに息を詰めるので苦しいらしくて、短くせわしない呼吸になっていた。とても感じているようで、潤みっぱなしの目が切なそうな表情になって僕を見つめていた。
もっと、狂わせたい。
僕は再度、彼女のおなかの辺りに唇を落として、滑らかな肌を貪るように徐々に下半身の方に辿っていく。途中で、僕が何をしようと思っているのか気付いた龍麻は慌てて僕の頭を押さえようとした。
「やっ、紅葉っ、そんなトコ、汚いっ…。」
足を閉じようとしているけれど、すでに僕の体が割り込んでいるためにそれもできず、龍麻は切なそうに身を捩る。
「汚くない。龍麻の体で、汚いところなんかどこにもない。」
そう言って僕は龍麻の秘所に唇を這わせた。
途端にびくりと、跳ねるように大きく背が反って、両手でシーツをぎゅうっと拳が白くなるほど握り締める。僕は愛撫を与えやすいように両手で各々の膝頭を左右に大きく開いた。目の前に晒された龍麻のソコは綺麗な色で、先ほどからの刺激にひくひくと震えている。舌先を尖らせて裂け目の中に差し込むと龍麻の背が再度大きくしなった。
「やぁっ…あああっ…。」
がくがくと震える足、漏れる嬌声がさらに僕を煽り立てる。とろとろとしたぬめりを帯びた蜜がさらに溢れ、わざといやらしく音を立てて舐めあげると龍麻はいやいやと首を振る。くちゅくちゅと舌先を蠢かせるとそれが合図のように、龍麻の体に緊張が走り、びくびくと震え、舐め取った蜜がまた新たに毀れだす。快感に身を捩り、悶える龍麻の表情を見ながら舌を花弁に這わせ、重なり合った花びらを舌で舐め解いていくと、ピンク色の芯が現れる。両手で龍麻の細い腰をしっかりと抱きかかえてから花芯に舌先を伸ばすと途端に龍麻の体は大きく跳ねた。
「ひゃあんっ…。」
それに構わずに先端の部分を舌で転がしたり、擦ったりしているとひっきりなしに龍麻の甘い嬌声があがるようになってきた。
「やあっ…も、やっ…やめっ…あああっ…。」
それとともにがくがくと激しく、痙攣のように龍麻の下半身が震えだす。
「いやぁっ…だめぇっ…。」
半分悲鳴のような声があがり、僕が芯に軽く歯を立てると、龍麻の体は強張り、硬直して、やがてくったりと弛緩していった。どうやら愛撫だけでいってしまったらしい。見ると秘裂からはまた新しい蜜がとろとろと溢れ出し、お尻を伝ってシーツに水染みを作っている。龍麻は放心したようにぼんやりと焦点の合わない目で天井を見つめ、胸はせわしない呼吸で早く上下している。僕もそろそろ限界だった。
力なくシーツの上に置かれている龍麻の手を取る。そして僕の猛った男根に導くと驚いて龍麻の手が止まった。
「握って…?」
恐る恐る龍麻の手が開かれる。龍麻の手に握らせるとその手の暖かさに僕のモノはびくびくと脈打ち、もうこれ以上ないくらいに怒張した。
「もう我慢できないんだ。龍麻の中に入れていいよね…?」
耳元で囁くと龍麻の顔が羞恥でぱぁっと赤くなる。それでも微かにうなづくのをみて、僕は龍麻の足を再度左右に開き、猛った男根の先の部分を秘裂に押し当てた。先端に蜜が絡みつき、それが潤滑油となって先端の半分まで難なく龍麻の中に潜りこむが、その奥には入らない。龍麻を見ると微かだが震えている。
もしかして、初めてだろうか?
僕は手近にあったタオルケットをすばやく龍麻の下に引き寄せて、体をかがめて龍麻の額にかかった前髪を払って額に小さくキスを落とす。
「大丈夫。」
龍麻がきゅっと下唇をかみ締めてうなづくとそのまま一気に龍麻の中を貫いた。ビッと何かを破ったような感触がし、中に入ると、思ったよりも狭い中に驚きながら見ると、僕のモノはまだ3/4ほどしか入っていない。苦しそうに息を吐き、息を整えようとしている龍麻の様子を見ながら全部を入れるのを少し待つ。
「痛い?」
しばらくして尋ねるとふるふると首を左右に振る。僕も余裕はあるわけじゃない。無意識に僕の男根に絡み付いてくる襞に気を抜けばいってしまいそうになる。
「動くよ…?」
ゆっくりと中から引き抜いて、先端まで引き抜いてから僕の体重をかけて一気に全てを龍麻に飲み込ませる。
「ひっ…。」
龍麻の表情が苦痛に歪む。奥の壁にめり込むようにして収まった僕のものに龍麻の中は一杯で、それに耐えるために再びせわしない呼吸が始まった。
ゆっくりと動かしていると龍麻の表情もやがて苦痛から快楽に少しずつ変わってくる。そして、次第に苦しそうな呻き声は甘い、媚を含んだ喘ぎにと変わってきた。
「やぁ…も、おかしく…なるぅっ…。」
「なっていいよ?」
さらに龍麻を激しく突き上げる。その刺激に耐えようとシーツを握り締め、下唇をきゅっとかみ締めたりするが、またすぐに喘ぎ声が漏れてしまう。その様子に煽られて僕ももっと深く龍麻の中を穿つと、彼女はそろそろ限界も近いらしく、体が小刻みに震えだした。
「くれ…は、ああんっ…く…れはっ…。」
「なに?」
「す、き…。」
思わぬ言葉に僕は嬉しくなって、最速で龍麻を突き上げ始めた。すると小刻みに震えていた龍麻は痙攣のように大きく震えだす。それとともに龍麻の中も急激に収縮運動を強め、中に入っている僕のものをきついほどに締め上げていく。
「ぁああっ…あああっ…!」
「…っ!」
龍麻が全身を弓なりにしならせてイクのとほぼ同時に、僕も龍麻の子宮に流し込むようにどくりどくりと精を最奥に注いでいた。
はぁはぁという荒い息遣いだけが部屋に響く。龍麻といえばいった余韻と、初めての行為にぐったりとしてそのままベッドに力なく横たわっている。首筋から胸にかけて僕のつけた紅いしるしが散らばっていて色白の肌とのコントラストが妙に艶かしい。
どくん。
龍麻の中に入れたままのモノに再度力が宿るのを感じる。
僕は苦笑しながら龍麻の左足を肩にかけた。
「くれ…は?」
何をするのというように、龍麻が僕を凝視する。僕はそれには返事を返さずに、ゆっくりと腰を引いて、先端近くまで引き抜いてから再び勢い良く龍麻の中に押し入った。
「きゃあっ!」
僕の予想外の動きに龍麻が悲鳴をあげた。それに構わずに、僕は腰を龍麻に擦り付けるようにして小刻みに動いて龍麻の一番感じるところを探しにかかる。僕が動かすたびに先ほど僕の放った精がぐちゅぐちゅと卑猥な水音を立てて秘裂から溢れ出す。すぐにポイントを探り当てた僕はそこを重点的に責め始めた。擦りあげるようにして動くとその刺激に耐え切れず、再び身悶えして切なげな声をあげ始める。
「んんっ…そこぉ…。」
「ここ?」
龍麻に聞きなおしながらさらにそのポイントを責める。すると一層高い嬌声と、ぬちゃぬちゃと粘性の水音が響く。
「どうしてほしいの?」
体を屈めて龍麻の耳元で囁くと、潤んだ目で僕を見返す。その色っぽさに僕は速度をあげると龍麻の体は刺激に耐えられないのか、身じろいで上の方にずりあがっていくけど、それを捕まえて引き戻し、奥の壁にめりこませるように深く埋めこむとひときわ高い声が漏れ、きゅうっと中全体が収縮する。
「っああ…。」
「龍麻、どうしてほしい?」
再度、耳元で尋ねると龍麻は苦しいのかぱくぱくと口をあけるだけで返事にならない。言葉になるまでぬちぬちと動きながら様子を見ていると、ようやく小さな声が聞こえる。
「…もっとぉ…。」
腰を引き寄せている腕に力を入れて、さらに奥深くまでねじ込んでやる。
「もっと…してぇっ…。」
僕が龍麻に腰を打ち付けるのと同時に、龍麻の腰も僅かずつうごめき始める。龍麻が僕の腰に接合部を擦り付けるようにするのにあわせて僕も動くと、より一層結合が深くなり、龍麻が大きくのけぞった。ぷるんと胸が揺れ、僕は腰を引き寄せている手を片方外して胸の先端を摘むとそれだけで龍麻は細い悲鳴のような嬌声をあげて戦慄く。同時に中も先ほどよりも僕を締め付け、意思をもっているかのようにざわざわと中の襞が僕のモノに絡みつき、放精を促す。なんとかそれを堪えながらもう少し速度を上げていき、体を屈めて今度はちゅっと胸の先端を唇で吸い上げた。
「っ…!ぁああっ…。」
びくびくと龍麻の体全体が震える。思い切り開かせた足を布団に押し付けるようにして、上から突き刺すようにして彼女の中に埋め込んでいくと、さらに中はきつくなる。急速に高められ、我慢できなくなった僕は最速で龍麻の中を行き来する。奥の壁に僕のものがめり込むほどに突き上げられるたびに、龍麻の切なげな声があがり、それが段々に切迫してくる。
「っああ…、はぁっ…イッ…っちゃ…う。」
我慢できないと言った風に頭を左右に振りながら龍麻が喘ぐ。
「イッていいよ…。」
そういう僕も、もうそんなに余裕がない。叩き付けるようにして動かすと、大きく龍麻の体が痙攣をする。
「や…ああ…っん…。」
声と同時に龍麻の体は硬直し、中の収縮が強まり、僕は我慢しきれずに中で2回目の精を放った。
結局、それから体液や血液でぐちゃぐちゃになった体を流しに入ったお風呂場でもう一度してしまい、いくら体力のある龍麻といえどもぐったりとしてしまった。抱えてベッドまで戻ってから僕は龍麻を宝物のようにそうっと抱きしめて横になる。
「ごめんね…。」
予想はしていたけど、やっぱり龍麻は初めてで、慌てて龍麻の体の下に敷いたタオルケットは案の定、血塗れで。にも関わらず、最初ッから3回もいきなりしてしまって、龍麻の体にはかなりの負担がかかっていた。謝る僕に龍麻は苦笑して僕の胸に額を当てる。
「ねぇ…。」
「なに?」
「私、汚い?」
急に変なことを聞かれて、僕は驚いて龍麻の顔を覗き込む。
「ねぇ、教えて?」
真剣に聞かれて僕は龍麻の耳元で即答する。
「勿論綺麗だよ。」
すると龍麻はニコ、と満足げに微笑んだ。
「ね?紅葉が私を抱いても、穢れたりなんかしないでしょう?」
にこやかに笑ったその顔は、してやったりと得意気で。
本当に君には叶わない。僕は思わず笑い出してしまった。
「そうだね。」
笑いながら僕は龍麻の体を抱きこんだ。心地の良い人の肌のぬくもりがする。一度は諦めた最愛の女性が腕の中にいる。この幸運がどうか夢ではないように。そう思いながらいつしか僕は眠りのふちに引きずり込まれていった。
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