もう一つのプレゼント〜お約束〜

 

鷹通はいつものように、礼儀正しく、ごちそうさまの挨拶をすると、あかねが片付けやすいように空いた食器を重ねてくれた。いつものように洗い物くらいはやりますという鷹通の申し出を断り、汚れた食器を片付けていく。今日は特にそうした時間が必要だった。すこし、気持ちを落ち着かせなければだから。
このあと、あかねはもうひとつ、プレゼントを鷹通にあげるつもりだった。その準備にこうした時間が必要だったのだ。何度も何度も考えて、それであかねがプレゼントする決心をしたもの。もしかしたら拒否されるかもしれないとちらりと脳裏をかすめるけれど、それでも、不思議とあかねにはある程度の自信があった。それが何に裏づけされているわけでもない。でも、きっと鷹通は受け取ってくれる。
洗い物が終わると手を拭いて部屋に入った。今朝、鷹通が出かけるのを待って、部屋に入ったときにすぐに干した布団をそろそろ取り込まなければならない。窓を開けて、手すりに干してあった布団を取り込んだ。
「あ、すいません。あさ、忙しかったので、つい干すのを忘れてました。」
「いいんですよ。今日はいいお天気でしたから。シーツもついでに洗っちゃいました。」
嬉しそうに鷹通が微笑む。京では貴族の子息で自分の身の回りの世話などしなくても済んだ人間が、こちらの世界にやってきて急にあれもこれもというわけには行かない。それでも鷹通は生来のまめな性格が幸いして、一般の男性よりもかなり程度の良い生活を送っていた。それでも、し忘れたことなどはあかねがこうしてかわりにしている。あかねにとってはそれがまるで奥さんのようで嬉しくもあり、かいがいしく鷹通の世話をしているのだが。
布団を取り込んで、シーツをかけてしまうとあかねはふぅっと息をつき、決心を固めた。
「あのね、鷹通さん。もうひとつ、特別なプレゼントがあるんだけれど。」
「え?」
「もらってくれるかなぁ?」
「それは、もちろん頂きます。あかねが用意してくれたものなら、何でも。」
鷹通はにっこりと微笑んだ。
「じゃあ、準備があるから、そっちを向いていてくれる?」
「え?こっちですか?」
「そう。絶対に目を開けないでね?」
「なんでしょうね、一体。」
鷹通はくすくすと笑いながらあかねの要求どおりにあかねに背を向けて目を閉じた。
その背中をみながら、もう戻れないと、自分に言い聞かせ、緊張のあまり震える手で着ていたセーターを脱いだ。どきどきと大きく脈打つ胸を隠すブラをとってしまうと部屋は少し寒い。そして、スカートを脱ぎ、ゆっくりとストッキングと下着も外してしまうと、さすがに恥ずかしく、手近に合った毛布で体をくるんだ。鼓動はもうばくばくと破裂しそうな勢いで、顔から火が出そうなほどになっている。それでも、あかねは鷹通と一つになりたいと、それだけで決意した。
「もういいよ。」
かすれる声でいうと、鷹通がゆっくりと振り向く。そして、振り向いてあかねの姿が目に入ると、鷹通の顔はぼっと一瞬で真っ赤に染まって硬直した。
「あ、あ、あかねっ!?」
驚きのあまり、声が裏返っている。
「鷹通さん、私を…もらってください。」
裸で毛布にくるまっただけという姿にいくら鷹通といえども平静でいられるはずがない。それがなんでもない、関係のない女性ならば鷹通は平然として服を渡すくらいの余裕はあっただろう。しかし、相手はあかね。自分が愛してやまない、そして、いつかは心だけでなく、体もつなぎ合わせたいと思っていた相手なのだ。動揺しまくって、とりあえず、あかねのその姿を直視できず、俯いてしまった。
「そ、その、もらってくださいって…。」
どう返事をして良いものやら、鷹通は普段は回りの早い頭を一生懸命に動かそうとした。けれども、どうしても頭が真っ白になってうまく働いてくれない。
「抱いてください。」
あかねの声に、思わず鷹通はごくりとつばを飲み込んでしまった。
ぱくぱくと金魚みたいに口を開け閉めしている鷹通を、あかねは不安な気持ちで見ていた。断られるだろうか。そして、思い切った行動に出てみることにした。
「お願いっ。」
そういってあかねは鷹通に抱きついて無理にキスをした。抱きついた瞬間に毛布がはらりと落ちて、細身の、けれども着やせして見える胸が鷹通の胸にあたった。うけとめた鷹通の体にあかねの柔らかな体がほんのりと温かく、また、緊張のためにわずかに震えているのを感じた瞬間、鷹通の頭は真っ白になってしまった。
「いいのですか?」
それでも、蒸発しかかった理性を総動員してあかねに尋ねてみる。恥ずかしそうにあかねがうなづいた。
それを確認してから、鷹通はゆっくりとあかねを布団に横たえて、それから自らの衣服を脱いだ。
あかねが初めて見る鷹通の胸は、思ったよりも広くてたくましい。華奢な印象がしていたのだけれど、こうしてみるとやはり男性なのだ。
鷹通は額にかかったあかねの前髪を手で払うと、そっとキスをする。柔らかな唇の感触を充分に味わうように、なんども軽く吸い上げてから、あかねの口内にそろりと舌先を送り込んだ。最初は硬く閉じていた歯も、ゆっくりと何度か舌で往復するうちに緩んでくる。薄く開いたところからさらに奥に入り込むと、おずおずとあかねの舌がそれを出迎えてくれる。互いに絡ませるようにしていたが、やがてあかねが息が続かなくなったのか、ふうっと息をついた。ゆっくりと顔を離すと、あかねの顔が紅潮している。
そのまま桜色に染まった首筋へと唇を這わせると一瞬、びくりとあかねの体がすくむのがわかった。
「くすぐったいですか?」
「なんだか…へんな…かんじ。」
あかねは放心したような、どこか熱に浮かされたように返事をする。さらに首筋にある唇を移動させるとぴくぴくっとあかねの体がわずかにひきつける。あかねの体の中に熱がこもったような感覚が生まれた。
鷹通は手を滑らせて胸のふくらみのほうに移動させる。
「や…。」
その手を無意識のうちにどかそうとするが、鷹通の手がやんわりとそれを制止した。そうだった、自分から誘ったはずなのに。あかねは真っ赤になりながら、抵抗するのをやめて鷹通のなすがままにした。
「綺麗ですよ、あかね?」
初めてみるあかねのふくらみは、やわらかな曲線を描いている。普段は着やせをするのか、鷹通が思った以上にそれは大きく、先端にはまだ本人以外には誰も触れたことのないであろう、淡い色の突起があった。
右手で胸の片方のふくらみを包むようにして触れると、吸い付くような感覚がする。壊れ物でも扱うかのようにゆっくりと揉みしだくと、あかねの唇から小さな声が漏れた。柔らかな乳房は手のひらの中でふわふわと、いままで感じたことのないような感触で踊っている。そのたびに、きゅっと目をつぶっているあかねからは短い息継ぎのような喘ぎがもれてくる。それは、まるで天女の声のする楽器を奏でているようだった。
鷹通は指先で淡く色づいている先端を摘んでみた。
「きゃぅっ…。」
先ほどよりも幾分、声が高くなる。予期せぬ感覚にあかねが戸惑い、先端をくりくりと弄ぶ鷹通の指に力が入るたびにあかねの声があがる。また、声をあげるたびに、逃れようとするのか、身を左右に捩り、その感覚を散らそうとしているようだ。けれども、それは決してあかねにとって嫌悪を感じる行為ではないということはすぐにわかる。最初は悲鳴に近かったそれは、だんだんと甘味を含んだ声色になってきている。
ぞくぞくするような、落ち着かない感覚があかねの体中を這いずり回っている。こんなの、いままで感じたことがなかった。だから、このまま、この不思議な感覚に素直に身を任せてしまっても良いものか、あかねは逡巡していた。ただ、胸に新しい刺激が加えられるたびに体の中に新たな熱が生まれていくのだけは真実だった。
鷹通はすっかりと硬く立ち上がった先端を口に含んだ。舌先でころりと転がすようにすると、余計にあかねの体は硬直したように跳ね、甘い声が一層高く部屋に響いた。
初めての快感にあかねの全身に電流が走ったようになる。体が無意識のうちに痙攣したようにひきつり、コントロールがきかなくなってしまった。
「あかね、あんまり声をあげると隣に聞こえますよ?」
耳元で囁かれてあかねの顔が羞恥で再び真っ赤に染まる。すぐに声をあげまいと、あかねの歯が赤い唇をかみ締めた。
けれども、そんなのは気休めにしかならなくって。鷹通に舌先で胸に愛撫を受けるたび、あかねはその細い体を戦慄かせ、かみ締めたはずの唇は開いて甘い声をあげてしまっていた。甘い声は、あかねの無意識のうちに鼻にかかったような、どこか艶めいた響きを帯びてきていた。
舌先を尖らせ、くるりと突起の回りを滑らせると、それだけであかねの体が反応する。軽く吸い上げ、きゅっと歯を立てると体を痙攣させるようにして反応を返した。感じやすい体質なのか、あかねは鷹通から受ける初めての強い刺激に息が詰まってはぁはぁと呼吸を乱すようになってきた。
今度は反対側の胸の先端を、先ほどと同じように舌先で弄びながら、鷹通の右手はするりと白く滑らかなあかねのおなかを滑り、薄い茂みに触れた。あかねの胸から唇を離すと、体を起こしてあかねの下肢に目をやった。白い腿が鷹通の目の前にさらされる。あかねは恥ずかしさのあまり顔を両手で覆い、足をもじもじと擦り付けて、大事な部分を見せないようにしている。その痴態が余計に男の劣情をそそるのだということも気づかずに。その艶かしさに鷹通は陶然として、一瞬見とれてしまった。
「いや…見ないで…。」
その声に促されるように、鷹通はあかねの足の方に座ってあかねの両膝裏をひょいと持ちあげた。
「きゃっ!」
いくら足を閉じてはいても、腿を胴につけるようにしてたたまれては元も子もない。すぐに鷹通の目の前に柔らかそうな襞の重なる花が現れた。そこは、中心から既に蜜が溢れ、部屋のあかりに照らされて光っている。花弁から毀れそうなほどの蜜はかろうじて、その襞の間まで潤してとどまっていた。
「ああ、とても綺麗ですね…。」
鷹通は人差し指で花弁の回りからなぞるようにしていく。その刺激に先ほどよりも大きくあかねの体が跳ね、甘い声が唇から漏れる。しまったとでも言いたげにあかねは口を両手で抑えるが遅かった。
続いて花芯に指を運ぶとつうっと芯のまわりを露出させるようにして撫で上げ、やや赤みを帯びた芽をすっかり露出させると丹念に人差し指でくりくりと刺激を加えていく。
「ああっ…ん…。」
あかねは不意をつかれたように媚びた声をあげ、背をしならせてその愛撫に答える。震える足は、最初は強く閉じられていたのに、そのあまりの強烈な刺激に油断したのか力が抜け始め、膝頭が割れていた。さらに花芯への愛撫を加えると、ひくひくと襞がうごめき始め、足も完全に力を失ってくったりとしてしまった。鷹通があかねの両膝に手を掛けて大きくあかねの足を左右に割ると、電灯のもとにあかねの秘所がさらされる。恥ずかしさに慌てて閉じようとする足に、鷹通は自身の体を滑り込ませて閉じさせないように防いだ。
さきほどの花芯への愛撫で、新たな蜜があふれ、とうとう襞の間でとどめることができなくなり、零れ落ちていく。みずみずしい果物を思い起こさせるそれに、鷹通はためらいもなく口付けた。
「や…ん…。」
絡み合う襞を押しのけて蜜の毀れだす秘裂に舌を差し入れ、丹念に襞の一枚一枚を舌先でなぞるたびに腰がわずかに動きだし、さらに蜜が毀れだしてきた。あかねの唇から紡がれる声も、もはや意味もなさず、先ほどの甘い声からだんだんと媚びた声に変わってきていた。
鷹通はわざと大きな水音を立ててあかねの秘所を責めていく。あかねはあがってしまう声をこらえようとして唇をかんだりするが、そのあまりにも甘美な刺激に我慢ができず、思わず声を漏らしてしまう。ぴちゃぴちゃという鷹通のたてる水音がやけに響き、あかねの恥ずかしさを一層あおっていった。
快感にこらえきれなくなったあかねの発する声が、やがて、媚びたものから切なげな響きを含むものに変わっていった頃、あかねの内腿が痙攣をするようにがくがくとひっきりなしに震え始める。
「や…おかしく…なっちゃうよ…。」
荒い息の下から涙ぐみながら訴えるあかねに、鷹通は微笑んでさらに秘裂のあたりをさまよっていた舌先を上に向けた。そうして、花芯を舌が捉えると、さきほど胸の突起にしたのと同じようにして愛撫し始める。
「ああっ…はぁっ…っく…。」
さきほどまでのむず痒いような感覚とは違う、もっと別の、痙攣しそうなほどに強烈で我慢ができないほどの快感にあかねの声がだんだんと高くなり、やがて切羽つまったような声になったとき、鷹通は歯先でかりっと軽く芯をかんだ。
「きゃぁっああん…。」
あかねは一瞬、からだを大きくのけぞらせ、やがてかくりと崩れるのと同時にその体のこわばりを解いた。あかねはぐったりとして荒い息遣いのままベッドに横たわっている。目の焦点はぼんやりとして、あってはいず、呆けたように天井に向けられていた。
鷹通はそっと己のものに目をやると、それは既に我慢ができないほどに怒張し、痛いくらいになっている。あかねの蜜も充分すぎるほどに潤い、とどまりきれなかった分は既にこぼれてシーツに水染みとなっていた。
あかねの足をひらくと鷹通は腰を前に進め、あかねの秘裂を覆っている襞にぴたりと己をあてがった。あかねはその異物感に一気に我に返り、目を鷹通に向けた。
「あかね。いいですか?」
鷹通の問いかけにあかねがこくりと小さくうなづくと、鷹通はそのまま一気にあかねの中に押し入ってきた。
「…っく!」
今度は痛みをこらえるためにあかねは唇をきつくかみ締めた。
鷹通は窮屈なほどに狭いあかねの中でどくんどくんと激しく脈打つ己のものを抑えるのに苦心していた。うねうねとまとわりつくあかねの襞の感触に、今にも爆発してしまいそうになる。入り口で誘うようにひくついていた花弁がさらに強く蠢いている。このまますぐにでもあかねの中で己を擦りあげ、果ててしまいたい欲求をなんとか抑えながら、あかねの様子の落ち着くのを待った。苦しそうな表情で、必死に痛みを逃そうとしているあかねだが、その内部ではきゅうっと鷹通のものを柔らかく締め付けて、快楽にいざなっていた。
しばらくの後、鷹通のものの怒張は少しだけ落ち着き、あかねもまた少し落ち着いてきたようだった。
「動きますよ?」
鷹通はそう断ってから、ゆるゆると腰を引き、あかねの中に収まったものを引き抜き始める。あかねはほっとした表情を顔に浮かべたが、次の瞬間、再び鷹通のものが勢い良くあかねの奥まで一気に押し入り、その表情も一気に苦悶に変わった。
あかねのなかは狭くて、一気に押し入ると中で押し広げられた襞が反動で強く絡みつき、余計に擦れて鷹通を絶頂へ導こうとする。歯を食いしばってそれを我慢しながら、何度もあかねの奥を突きあげる。そのたびにぐちゅぐちゅという卑猥な粘性の水音があかねの秘所からしていた。
「あ…ふぅん…んんっ…。」
やがてその水音と共にあかねからも再び甘い声が漏れてくるようになる。鷹通が勢い良くあかねの奥を突き上げると同時に嬌声があがり、沸きあがってくる快感を振り払うかのようにあかねはふるふると頭を振った。わずかづつ、あかねの足や腰に震えが走るようになる。
「ひぃ…んんんっ…あんっ…。」
「あかね?お隣に聞こえてもいいのですか?」
鷹通は意地悪く微笑みながらあかねの耳元で囁くが、もはやあかねには強烈な快楽に声を出さずにはいられないのである。
「やぁ…も、だめぇっ…。」
鷹通の下で切れ切れにあかねのこぼした言葉に鷹通はあかねの限界が近いの知った。自分もそう長くはもたないだろう。そう判断し、あかねの腰をしっかりと押さえつけると今までとは比べ物にならないほどの速さと強さで一気にあかねの中を行き交い始めた。あかねに腰を打ち付けるようにして激しく中に押し込めば奥の壁にめり込むような感触を得る。
「うくっ…。ふ…ああああぅ!」
あかねはやがて、背をのけぞらせ、足や手を突っ張り、がくがくと大きく震えた。それと同時に鷹通のものを飲み込んだまま、きゅううっと強く収縮し、その急激な締め付けに耐えられず、鷹通はあかねの奥に向かって勢い良く精を吐き出した。

「あかね、あかねの誕生日には私も何か贈り物をしなければなりませんね?」
鷹通はあかねを抱きしめたまま言った。
「あかねの誕生日はいつですか?」
鷹通の問いに、あかねは困ったような顔をする。
「どうかなさいましたか?」
「あの…ね、私、1週間前だったの…。」
消え入りそうな声で言うあかねに鷹通は少なからずショックを受けた。鷹通は祝ってもらったのが嬉しくて、そのお礼にあかねの誕生日にはあかねが喜んでくれるように、できる限りのことをしようと思っていたのだった。
「あかね、すいませんでした。」
「あ、うん、いいの。私もテストとかで忙しかったし。それに、鷹通さんとこうして一緒にいられるだけでいいの。」
胸の中であかねがあまりにかわいらしいことを言う。
「では、お誕生日のプレゼントは後日、一緒に見に行くとして…。あかね、私からのもうひとつのプレゼントを受け取ってくださいね?」
鷹通は嬉しそうに微笑むと、あかねの返事をきかないまま、再びあかねの体にキスの雨を降らし始めた。



END

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