温泉に行こう3 その弐

 

マリアは深く反省していた。さっき、お風呂場で大神に抱かれ、その時に声を漏らしてしまい、恥ずかしさの余り逃げるようにそのまま部屋に戻ってきてしまったからだった。隊長はきっと怒っている。時計を見ると既にあれから1時間以上経っている。大神はまだ部屋に戻って来ていないということは、きっと怒ってここに戻って来たくないからだわ。マリアは深くため息をついて立ち上がった。ともかく、隊長を探しに行こう。部屋のカギを持って戸口に出かけたときだった。からりと外の格子の開く音がして、続いて部屋の戸も開いた。
「隊長…。」
大神は無表情でそのまま部屋に入ってきた。真っ直ぐに部屋を横切ると窓辺にあるタオル掛けに持っていた浴用のタオルを掛け、続いて無言で丹前を脱ぐ。
「あの…隊長…?」
マリアの声も聞こえないふりをしてそのまま大神は敷いてあった布団に潜り込んだ。無視されている。その事実はマリアの心臓を凍らせる。何を失ってでも大神だけは失いたくないのに。どうしたらいいの?マリアは恐怖で凍りそうになる意識を必死の思いで繋ぎとめ、どうにか大神の怒りを解く方法を考えた。
「隊長…?」
マリアは大神の布団の横に座り込んで名前を呼びかける。けれども返事はない。
「あの…すいませんでした…。」
なんて言っていいのか分からずにとりあえず謝る。
「怒ってらっしゃるんですか…?」
聞いてしまってから我ながら馬鹿な質問だと思う。怒っているのなんか見ればすぐに分かるのに、それでもそのほかに言葉が出てこない。まだ無言でいる大神にマリアは焦り始めた。このまま、ずっと怒ったままだったらどうしよう。そんなイヤな考えがふっと脳裏をかすめる。
「ごめんなさい。…隊長、隊長…。」
嫌われたくなんかないのに。ずっと側にいたかったのに。愛人でもただの副官でも何でも良かった。一緒にいることさえできれば。でも、こんなに怒らせてはそれさえ叶わなくなるかもしれない。そう思った瞬間にぽろぽろと涙がこぼれてくる。大神と会えない生活なんて嫌だ。考えられない。考えようとすると頭が真っ白になる。
「隊長…許して…ください…。」
泣きながらマリアは大神に訴えた。
「なんでもします…だから、許して…。」
布団の横で泣きじゃくるマリアに大神はふぅっと小さなため息をついた。
「なんでもする?…本当に?」
しゃくりあげながらマリアは必死に首を縦に振る。
「どんなことでも?」
念を押すような大神の言葉にマリアは唇をきゅっとかみ締めてもう一度うなづいた。
「じゃあ、まずはマリアがどれくらい愛してくれているか見せてくれる?」
大神の言葉の意味がうまく飲み込めなかったマリアはきょとんとした顔で大神を見たが、すぐにその真意がわかったようで顔を赤らめ俯いた。
「そ、そんな…。」
できない。そんな恥ずかしいこと、自分にできるわけがない。拒否しようと顔をあげると、大神の冷たい視線に出会い、自分の現在置かれている立場を思い出す。大神の言う通りにすれば、ずっと大神といることができるかもしれない。断れば、口数も減り、段々自分から遠ざかって行く。それどころか、花組のほかの隊員と仲良くなって、同じことをするのかもしれない。それだけは耐えられない。マリアは意を決してこくんと大神にうなづいて見せた。
「さぁ。マリア。」
大神は自分の布団を捲ってマリアを呼ぶ。どきどきする胸を抑えながらマリアはそっと大神に近付いた。
「ど、どうすればいいんですか?」
マリアは緊張しながら大神に尋ねる。
「マリアがしたいようにすればいい。」
にべもなく大神に言われてマリアは困惑した表情を浮かべる。いろいろと考えて、マリアは震える指で自分の丹前の帯を解き、しっかりと着込んでいた丹前を脱ぐ。そして次は浴衣の帯に手を掛けた。端を力なくひいて結び目を解くと帯ははらりと落ち、合わせていた浴衣もはだける。浴衣の下からはマリアの白い肌と弾力のある豊満な胸が見え隠れしていた。小さく息を吸い込んでマリアは思いきって浴衣を脱いだ。電灯の元にさらされたマリアの肌がなまめかしく輝くのを見て、大神は思わず唾をごくりと飲み込んだ。マリアは大神の元に寄ると大神の浴衣の帯を解き、合せを開いてから帯を体の下からするりと抜いた。そうしてから大神の横に添って寝ると彼の唇に自分の唇を合わせた。
「ん。」
大神の口腔内にマリアの舌がおずおずと遠慮がちに侵入してくる。大神はくすぐったい気持ちでそれを受け入れるとマリアの舌を絡めとリ、逆に強引に吸い上げ、舐る。
「んんっ。」
している積りがいつのまにか大神にされてしまい、マリアは大神にいいように翻弄されていた。ようやく互いの唇が離れると大神がマリアに言う。
「ちゃんとしてくれないとダメだよ?」
マリアは浅い息で小さくうなづく。でも次はどうしたらいいのだろう。マリアが困っていると大神はマリアの手をとって自分の股間に引いていった。
「さっきみたいにして。」
無理に大神に握らされるとそれは既に屹立し、熱く固くなっている。マリアが手を根元に向って引きおろすと尚更怒張し、固さを増して行った。先ほどお風呂場で大神に教えられた通りに扱くとマリアの手が上下するたびにびくんと脈打つのが分かる。
「ちゃんと見て、マリア。」
大神は背けていたマリアの顔を自分の男根にむけさせた。初めて直視するそれは大きく、グロテスクで、こんなものが自分の中を行き来しているのが信じられないくらいだ。そう思った瞬間にマリアは下肢のあたりに何かがじわりと滴るのを感じた。
「ねぇ、マリア。口でして。」
口で?マリアは一瞬硬直した。どうしようと逡巡している間に大神の視線とぶつかる。今の自分に拒否権はない。マリアは諦めてうなづくと恐る恐る大神の男根に顔を近づけていった。先走りに濡れて光る亀頭にマリアは覚悟をきめると唇をよせ、一気に口中に先端を含んだ。
「ううっ…。」
マリアの口の中の熱さに思わず喘ぐ。初めての経験で勝手の分からぬマリアはそのまま馬鹿正直に喉奥まで一気に咥え込んでしまい、すぐにごふごふと涙目でむせた。
「マリア、大丈夫かい?」
大神はマリアの背をさすってやりながら体勢を整えさせた。
「ほら。片手で根元をしっかりと持って。」
マリアの右手をもう一度自分の根元に添えさせる。
「最初は舌を使って。」
大神の見つめる前で、マリアは紅い唇からピンクの舌を出し、ちろちろと大神の括れの周りを舐める。その感触が思いのほか良く、大神はうめき声をあげそうになった。
「今度は口に含んで。」
先ほどのようにえづくことのないようにマリアは注意しながらもう一度大神の男根を口に含む。マリアの紅い唇に自らのものが納まっていくのを見た時に大神は体中の血がそこに集まって行く気がした。
「こうするんだよ。」
大神はマリアの頭に手を添えると静かに自分の男根から頭を引き上げ、唇から先端が出るか出ないかのところで再び口中に納めるように頭を自分の体に近づける。大神が手を離すとマリアは自らの意思でゆるゆると運動を開始した。頭が動くたびにマリアの髪が揺れる。苦しげに眉を寄せ、唇から自分のものを何度も出し入れしている姿や時折あがる唾液の音に欲情が余計に煽られる。マリアの口の良さに破裂せんばかりに怒張している自分がわかる。
「ああ…マリア、いいよ…。」
思わぬ誉め言葉にマリアの顔がぽっと染まる。もどかしいまでの運動が続く中、限界が近付いてきたのを知った大神はマリアを止めた。
「マリアの中に入りたい…。」
大神はマリアに囁くと自分の体の上にマリアをまたがらせる。
「自分で入れてごらん?」
マリアは大神に言われるままに自分の中にすっかりと大きくなった大神のものを入れようとするが、あまりに勢い良く、腹につくほどに勃っているのでそのままではうまく入らない。大神は苦笑しながら自分の物に手を添え、上を向かせるとマリアを促した。マリアは大神の男根の先端を自分の秘裂にあてがい、ごくりとつばを飲み込むと意を決し、そこに腰を沈めた。
「ああっ…。」
大神が自分の中を貫いた衝撃に体が震え、声が漏れてしまう。もう何度も体を繋いだというのに、未だにこの感覚には慣れないでいる。いや、慣れてなんともなくなるのではなく、慣れてだんだんと喜びを持って大神のものを受け入れるようになっている自分がいる。
「マリアが動いて。」
「ど、どうやって…?」
大神がマリアの腰を持ち、彼女の体を引き上げた。ずずずっとマリアの中を一気に出て行く感触にマリアの体がしなる。そうして、マリアの中から自分のものが出る前に勢い良く彼女の腰を自分のものに向って強く引きおろした。粘質の水音と共に大神が自分の中を押し広げ入ってくる感覚にマリアは思わず嬌声をあげてしまった。
「さぁ、マリア。」
大神に促され、マリアはゆるゆると自分で腰を持ち上げた。大神の先端が出きらないうちに腰を下ろす。
「っ…。」
大神が自分の最奥にめりこむ感触がし、声を上げそうになった。
「声、出して。」
そう言いながら大神はマリアの腰を持って再び持ち上げ、そして自分の腰に押しつけるように勢い良くおろす。
「ああっ…。」
自分で動いたときよりも深い結合に我慢していた声も漏れてしまう。大神は腰を突き上げるようにしてマリアに動くように促した。ゆるゆるとマリアの腰が上下する。そのたびにくちゅくちゅという水音が部屋の中に響く。大神の体の上でマリアは胸を上下に躍らせながら上下運動を続ける。大神は手を伸ばし、ゆさゆさと弾む胸を両手にそれぞれ取ると入とおしそうに乳房を揉みしだき、その手触りを楽しむ。そして、先端の突起をきゅっとつまむと結合している彼女の中からまた新たな蜜がとろりと大神のものにまとわりつき一層すべりを滑らかにした。同時にきゅっと中の襞も一斉に大神に絡みついてきた。大神は我慢できずマリアの上体を倒させ、豊かな胸を自分の顔の前に持ってこさせると立ち上がった先端を口に含んだ。
「きゃぁっ。」
ぴりっと体中を走った電流に思わずマリアの体が跳ねる。そして心持ちマリアの動きも速くなる。
「あ…んんっ…。」
止まない刺激に切なげに腰を動かしながらマリアは喘ぎをもらし始める。大神が奥を突き上げるたびにいいようのない甘い疼きが全身を這いまわり、体の中で凝り固まって痺れにも似た熱になる。ひどく気だるげなはずなのに、もっとその疼きが欲しくて腰だけは段々と激しく動くようになる。そして激しく動けば動くほど、もっともっと欲しくなる。
「ああっ…んん…くぅ…。」
上げる声も次第に高くなり、溢れる蜜も多くなったのか、抽挿の度に響く水音も段々と大きく水分を多く含んだ音になってきた。
「た…いちょう…もう…許して…。」
体がばらばらになりそうな程の快感を得ながら、マリアは大神に限界を訴えた。大神はそのままマリアの胸を離し、マリアの腰に手を添えるとそのままマリアの体を力任せに引き上げ、そして自分の上に押しつけるように落とす。
「くっ…んああっ…。」
マリアは背をのけぞらせ、その衝撃を味わった。今までよりもひときわ高い声があがる。大神が続けて何回かそうしている間にマリアの体は大神の上で大きく震えた。同時にマリアの中の肉襞も大神の逐精を誘うようにざわざわと絡みついてきた。
「くっ…。」
大神は歯を食いしばり、運動を続けた。そうしてマリアが短い悲鳴のような喘ぎと共に背を一層大きくしならせ、硬直した瞬間に大神のマリアの中にその精を放っていた。


「まだまだ…だな。」
慣れない運動に疲労し、先に眠ってしまった彼女には大神の呟きなど知る由もなかった。



END

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