出していた肩がすっかりと冷えて、その寒さで目を開けるとカーテンからぼんやりとした明るさが漏れている。ぶるっと身震いをしてから布団を自分の肩まで引き上げて暖をとる。はっと気がついて横を見ると、自分に腕枕をしてくれている大神の肩もすっかりと出ていて手を伸ばしてそっと触ると驚くほどに冷たい。マリアは自分は頭半分布団に埋まるような感じで大神の肩まで布団を引き上げてやった。このままでは風邪を引いてしまうから。布団に包まった大神は少し背筋を伸ばしたが、まだ目覚めるような気配はない。見ると、大神は浴衣を羽織っていなかった。昨夜の行為のあと、そのまま寝てしまったようだ。そういう自分もかなり疲れていてそのまま大神に抱きかかえられて眠ってしまったので裸であるのは同様だ。少し暖を取って落ちついたマリアは大神を起こさないようにそっと布団から抜け出して、籐の椅子にそのままになっている自分の浴衣と丹前を取り上げて身につけた。部屋の暖房を入れてから窓辺に近づくと、そっとカーテンをめくって外を覗いてみる。外は上も下も分からぬくらいに一面が真っ白である。そして空を眺めると天からはばさばさと飽かずに雪は落ちてくる。
「今日は…止みそうにないわね。」
重い空は昨日のような晴れ間を期待できるわけはなく、そのままマリアはため息をついてカーテンを戻そうとした。
「あ…れ?マリア…?」
眠そうな大神の声に気づいてマリアが降り返る。
「おはようございます、隊長。」
「あ、ああ、もう起きていたんだね。」
「ええ、今しがた起きたばかりなんです。」
「えーと、うわ、もう7時をとっくに回っちゃっているんだね。」
そろそろ朝食の時間である。大神は慌てて布団から起き上がって身支度をした。部屋で食事なのでそれまでに起きていないと食事にならないのだ。マリアも洗面を済ませるとカーテンを明け、部屋の中に外の明かりを取り入れる。
「すごい雪だねぇ…。」
大神はタオルで顔を吹きながら窓辺で呟いた。
「ええ。これじゃ今日はスキーはできませんね。」
「仕方ないな。これじゃスキーの前に遭難しちゃうよ。」
「視界はほとんどなしですからね。危険です。」
そう言っている間に朝食が運ばれてきた。
「それならここらへんを散策でもなさったら如何ですか?」
朝食の後、暇を持て余した二人にそう提案をしてくれたのは女将だった。
「狭い町ですけれど、あちこちに共同浴場がございますし、それに神社などもありますのよ。田舎のものですけれど、美味しいお蕎麦やうどんを商っているところもございますから。」
女将はそう言いながら紙に簡単な地図を書いてくれた。共同浴場の場所や、女将オススメのお店などを記入してくれる。
「ありがとうございます。じゃあ、行ってみようか、マリア?」
「はい。」
二人は地図を頼りに街中へと出かけていった。神社や寺を回って体が冷えた後、湯畑近くにある白旗の湯に浸かり、そしてまた街中を散歩する。お昼を老舗のうどん屋で取ると湯冷めしそうだった体も再び温まり、また歩き始める。途中のみやげ物屋で二人だけの旅の記念になりそうな物を眺めながらようやく旅館に戻ったのは午後3時頃だった。
「おかえりなさいませ。」
玄関で雪を払っていると女将の綺麗な声が出迎える。
「あれ?」
大神は玄関に男物の長靴が3足ばかり干されているのを見かけた。
「今日お泊りになるお客様なんですよ。半年に一度、富山の方から商いにいらっしゃるんですの。」
「へぇ…。」
大神はコートについた雪を払い終わると簡単にハンカチで水気を拭ってから上がる。マリアもそれについて部屋に向って行った。部屋に入るとすでに暖まっていて、ほっとする。
「なんだか、少し疲れちゃったなぁ…。」
部屋の温かさに安心した大神はコートを脱いで寛ぐとごろりと横になる。
「隊長、そのままでは風邪をひきますよ?」
「んー。」
大神は生返事だけ返してそのまますぐにすーすーと安らかな寝息を立て始める。
「まぁ。」
マリアは目を細めて微笑みながら押入れから肌掛けを出してきてかけてやった。無防備な寝顔は帝劇内ではそうそう見れるものではない。自分たちよりも遅く寝て早く起きる人だから。その寝顔を見ている幸せをそっとマリアはかみ締めた。この人に愛される幸せはこんなに嬉しくて、くすぐったくて、そして熱く激しいもの。この幸せを逃したくない。
「ずっと離さないで下さいね?」
マリアは大神の寝顔につぶやいた。
結局、大神はそのまま食事の時間の直前まで眠ってしまっていた。
「それでは、私はお風呂に行ってまいりますので。」
マリアはタオルと洗面道具を持つと戸口に向う。
「待って、マリア。一緒に入ろう。」
「え?」
「家族風呂。あったじゃないか。」
「で、でも…。」
「女将さんは勝手に使っていいって言ってたよ。」
大神はそう言ってタオルを持つとマリアを促した。
家族風呂は小さな入り口が男湯と女湯の間についている。入り口となっている引き戸をあけるとすぐ手前にあるスイッチを入れて中の灯りをともす。大神は中に入るとぐるりと見まわした。後から続くマリアが入り口の使用中の札をかけてから入ってくる。脱衣所は狭く、それこそ4人も入れば一杯なくらいで、したがって脱衣カゴも6つしかない。大神はさっさと丹前や浴衣を脱いでいく。マリアは慌てて大神から目を逸らしてどうしたものか、困ったようにもじもじと洗面道具をいじっていた。
「マリア?」
「はい…。」
「何してるんだ?」
「そ、その…。」
真っ赤な顔が俯いて慌てて後ろを向く。その様子に苦笑した大神はマリアに近づき後ろから片手で細い腰を抱いた。
「きゃっ。」
「手伝うよ?」
くすくすと笑いながら大神は開いている片手でなれたように紐を解いていく。そしてあっという間にマリアの浴衣まで脱がせてしまうと乱暴に脱衣カゴの中にそれらを放り込んだ。
「さぁ、早く入らないと風邪をひくよ?」
マリアは真っ赤になりながらそれでもタオルで前を隠して大神のあとをついてお風呂場の中に入っていった。
「へぇ、やっぱり男湯と女湯の間にあるんだなぁ。」
内湯の男湯と女湯の間に家族風呂がある。簡単に壁で仕切ってある程度で、この家族風呂が真中にあるお蔭で男湯からは女湯が覗けないようになっているようだ。内湯の外側は男湯、女湯ともに露天風呂になっているのだが、家族風呂には露天風呂はついておらず、ちょうど中間の緩衝地帯よろしく綺麗な庭がしつらえてある。
二人はお湯をかけて体を流してから揃って湯船に浸かる。草津のお湯は大体が熱いが、家族風呂のはそんなにひどくない。水でうめる必要もなく、そのまますぐに入ることが出来る。しばらくそうしていたが、段々熱さに耐えられなくなったマリアが先に湯船から出て洗い場で髪を濡らし、洗いはじめた。いつもは透ける様に白い肌がお湯のせいで全身ほんのりとピンクに染まっていてなんとも言えない艶かしさがある。大神はごくりと競り上がってきた唾を飲み込むと自分も湯船から上がって髪をわさわさと洗う。
「ああ、そうだ。せっかくだから、マリアに洗ってもらおうかな?」
髪を洗い終えた大神はいいことを考えたとでも言いたげに嬉しそうに微笑みながら言う。きょとんとしているマリアの右手をとると自分のタオルをマリアに握らせた。
「ね、頼むよ。」
やれやれという苦笑混じりにマリアは了解するとタオルに石鹸を摺りつけ、よく泡立ててから大神の背中を流し始めた。広い背中には小さい傷跡がいくつか見える。今までの戦いの中で出来たものであろう。刹那に捕まったときに助けに来てくれてその時に受けた傷も随分目立たなくはなったが残っていた。感慨深げに背中をゆっくりと洗うと大神に声をかける。
「終わりましたよ。」
「腕も。」
「はいはい。」
マリアは再び苦笑しながら大神の腕を取って丁寧に洗い始めた。全く、時々まるきり子供のような駄々のこねかたをするんだから。そこが好きなところでもあるんだけどね?そう思いながらも腕を洗い終える。
「ダメだよ。全部洗って。」
マリアは笑いながら胸やお腹を洗い始めた。すると、1箇所、どうすることもできない場所があることに気がついた。とりあえず、そこだけ残して、足を先に洗ってしまった。
「はい、終わりましたよ。」
あとは自分で洗ってもらおう。マリアは終了を宣言してタオルをゆすいだ。
「まだだよ。大事な場所が残っているよ?」
大神は悪戯っぽく笑うとマリアの右手をとって石鹸をつけて、自分の股間に誘った。
「あっ…。」
初めて手で触れる感触に彼女の手が瞬間、引っ込みそうになるが大神がしっかりと握っていて離さない。
「ほら、ゆっくりと洗って…。」
マリアは初めての経験に真っ赤になりながら顔を背け、強引におそるおそると言った手つきでゆっくりと石鹸のついた手で陰嚢の上を滑らせるように洗って行く。
「マリア、ちゃんと見てくれないと洗い残しが出ちゃうよ。」
そう言われてマリアは渋々マリアは顔を戻した。それでもまだ正視できないでいるらしくて視界の片隅に入れている程度である。
「今度はこっちも。」
大神の手に導かれてマリアの手が大神の男根を握った。恥ずかしさのあまり今までなんとか視界の片隅に入れていたがきゅっと再び目を閉じてしまう。
「マリア?ダメだよ。」
大神に促されて再び目を開けた。手の中には柔らかいものがある。マリアはとりあえずそれをそろそろと洗おうと少し動かしたが、途端にびくびくと手の中で震え、震えるたびにそれは硬度と太さと長さと熱さを増して行った。
「や…。」
マリアは手を引っ込めようとするが大神は依然それを許さない。
「マリアが変なふうに手を動かすからこんなになっちゃったよ。」
すぐにマリアの手の中のものは何度もマリアの中を穿った固いものに変化していた。
「それとも、こうしたくてわざとあんな風に手を動かしたのかい?」
悪戯っぽくマリアの耳元で囁けば紅い顔を慌てて左右に振って否定する。
「ほら、ここをこうして…洗ってくれるかい?大事なところだから何回も丁寧にね?」
大神はわざと自分のものを扱くような動きをマリアに教え込んだ。マリアはそうとは知らずに教えられた通りに大神のものを握ってゆっくりと扱き始めた。
「う…。」
マリアの手の動きに高められた大神は余りの良さに思わずうめき声をもらしてしまった。
「だ、大丈夫ですか?」
「ああ。」
これ以上されたら出てしまうかもしれないと思った大神は静かに自分の体についた泡を流し始めた。
「今度はマリアを洗ってあげるよ。」
「い、いえ。自分で…。」
「ダメだよ。ほら。」
大神はマリアのタオルを取り上げてしまうと石鹸をつけてマリアの背中を流し始めた。
「すいません…。」
「いいんだよ。俺も洗ってもらったからね?」
背中から腕を洗うとマリアがタオルを取り上げようとするがそれを許さずにそのまま足を洗ってしまった。
「も、もういいです、あとは自分で。」
「だめだよ。ここからがいいところなんだから。」
大神はそう言うとタオルで簡単にマリアの胸とおなかを洗ってしまう。そうしてお湯を張った洗い桶にタオルをつけてしまい、今度は自分の手に石鹸を摺りつけてマリアの胸の膨らみを両手でなでつけるようにした。
「あっ…。」
「ここも綺麗にしないとね?」
大神は石鹸のついた指先で両の乳首をきゅうっと摘み上げた。
「きゃあっ!」
思わずマリアの口から悲鳴が漏れた。
「た、隊長!こんなところで!誰かがきたらどうするんですか!」
「誰も来ないよ。もっとも、来た所でマリアさえ声をあげなければ何をしているか分からないからね。」
そう言って更にくりくりと捏ねまわすように指先を動かす。
「はぁっ…。」
マリアは思わず漏れた吐息を打ち消すように頭を降った。指から与えられる刺激に先端がぷっちりと固く勃ち、更に摘みやすいようになってきた。マリアは目を伏せると大神のなすがままになり、その場に座り込んでしまった。
「もう…やめて…。」
うっすらと涙を浮かべながら懇願するマリアに大神はようやく指を離すと今度は秘所に指をあてがった。マリアが体がびくりと強張る。大神の指は後ろから前へと花弁の合わせ目をゆっくりとなぞった。ぬるりとした液体がそれだけで指に絡みつく。
「こんなになっちゃってるんだ。」
そう言うと大神はゆっくりと襞を解き、撫でるようにして洗いながらそのひとつひとつを丁寧になぞって行く。マリアにとってはもどかしほどの感覚が体の中を走りぬけた。
「はい、これで終わり。」
体をわななかせ、更なる愛撫を知らず知らずのうちに待っていたマリアにわざと大神は明るくそう言うとマリアにお湯をかけてやる。残念だったような、ほっとしたしたような複雑な気持ちのマリアはタオルをゆすぎ、石鹸の残りがないか確認しながら丁寧に体をすすいでさっぱりとした。そのまま浴場から出ようとして立ち上がりかけたマリアの腕を大神が取る。
「まだだよ。」
そう言うが早いかマリアの体を自分の方に引き寄せて抱きとめた。
「た、隊長?」
びっくりしたマリアが真意を伺うように大神の顔を覗き込む。
「ほら。」
大神は器用にマリアの足を割り、中に自分の体を入れると胡座をかいた自分のひざの上に座るように納める。そうして桃色に上気した彼女のお尻を持ち上げて体を浮かすと今度は一気に大神の楔の上に彼女を引きおろした。
「あああっ!」
マリアの背中が激しく反りかえり、白い喉元を見せて彼女がのけぞった。襞の外側の蜜は先ほどのお湯で流されはしたが、中にはまだたっぷりと蜜が残っていて思いのほかスムーズに大神はマリアの体の中に入り込んだ。
「い、いや…。」
マリアの声も無視して再び大神は彼女のやわらかなお尻を鷲掴みにし、引き上げては突き落とす。
「ひぃっ…。」
激しく突き上げるような動きにマリアは喉を引きつらせながら大神に抗議の言葉を投げることも出来ずにその感覚と戦った。突き上げられるたびに自分の奥と頭の芯が一つの線で結ばれ、奥にあたるその刺激が心地よい痺れとなって全身を駆け巡り頭の中まで支配しようとする。マリアはそれに負けまいと必死で抵抗するが、大神の与える強烈な快感に負けそうになった。
「おー、誰もいねぇぞー。」
その時、男湯のほうから声が聞こえてきた。マリアがびくりと体を竦ませる。
「冬はすいているからなぁ。」
男湯の方に人が来たのだ。マリアは大神の膝の上から逃れようとしてよろよろと這いずるようにして体を離す。しかし、逃れることも叶わず、今度は逆にバックの体勢でそのまま捕らえられ一気に貫かれてしまった。
「…っ!」
奥まで一気に押し込まれた後に掻き回すように腰を使われ、声にならない悲鳴をあげる。その充分な締めつけに大神は満足そうに微笑みながら今度は小刻みに腰を使う。マリアは自分の上体を支えている手を握り締め、襲い来る快感と必死に戦っていた。大神は容赦なくマリアを責め続ける。そうしてとうとうマリアを快感の大波が襲い、マリアの中が強い収縮をはじめ、固い理性が一瞬流されたとき。
「ああっ!」
ついにマリアの唇から声がもれた。
「ありゃ?誰かいるんか?」
隣の男湯から声が聞こえた。さぁっと青くなったマリアはそのまま全力で大神の腕を振り解くと脱衣所に飛び込んでいった。あとには、タイルの上に大神の飛沫が転々と散らばっているだけだった。
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