伝説のオウガバトル異聞

孤高の聖騎士
「おのれ!我が父を愚弄する気か!」
「何言ってんのよ。ラシュディごときの魔力に屈するなんて
 情けないわねって言っただけじゃないのッ!」
「聞き捨てならん!覚悟しろッ!」
「お、おい、こらオメーらやめろ。シャレんなんねーよ。」
「黙れ!今度こそ、この魔女の息の根を止めるッ!」
「うっさいわね。出来ないことを言うもんじゃないわよ。
 そこのトリ!黙ってきちんと見てるのよッ!」
「ぬ!!トリって言うなーー!!」
「3人とも!何をやってるの!敵を目前にしてッ!
 今度の敵は今までとは格が違う!相手は帝国最後の要、
 大将軍ヒカシューなのよ!」

「・・アーウィンド」「ぶー。」「す、すまねぇ。」
「ま、いいわ。皆落ちついていられないのは確かなんだし。
今日はここでキャンプを張るしかないわね。」

帝国暦24年。シャロームの辺境に端を発したレジスタンスの反乱は
勢力を拡大し、ついに帝国上都ザナドュに侵攻、その本拠を目前にしていた。
しかし、ザナドュには帝国屈指の将、ハイランダー・ヒカシュー大将軍率いる
精鋭が反乱軍を待ち構えていた。


反乱軍ザナドュ駐屯地・作戦室

「皆、聞いて。この都も、残すは敵本拠地のみとなったわ。
しかし、そこにはヒカシュー大将軍率いる精鋭が待ち構えている。
そこで、編成を新たにして、一気にたたきつぶす。
まず、カノープス。あなたには、今まで通り仲間の運搬役も兼ねて
前衛についてもらいたいの。」
「まかせろ。大将軍相手か。腕がなるぜ。」
「次にデボネア将軍」
「アーウィンド、将軍はやめてくれ。俺は既に反乱軍の一員だ。」
「ごめんなさい、デボネア。カノープスと一緒に前衛を頼むわ。」
「承知。」
「後衛はラウニィーと私、そしてデネブ。あなたたちに任せたいの。
特にラウニィーにはつらい任務となるかもしれないけど、
あなたにこそ相応しいはずよ。」
「・・・わかったわ。私も、父上には聞きたいこともある。」
「デネブ?」
「・・・ラシュディごとき魔力に屈するような相手に、私が出るまでも
無いとは思うけど、ま、いいわ。付き合ったげるわッ。」
「く!またしても!!」
「やめなさい!二人とも。今は、私情を抑え目的を達することだけを考えるのよ!」

「ランスロット、トリスタンは部隊を率いて敵後方に廻って。万が一もあり得る。」
「了解した。」「よし。」

「三騎士殿達にはそれぞれ、我が部隊の後詰めをお願いしたいの。栄えある貴殿らには
物足りない役回りかとも思うけど・・・。」
「何を言う。この仕事、主らの役目ぞ。我らに構うな。」
「そうね。私たちは見るのが仕事。しくじらないようにね。」
「HAHAHAユーたちならシンパイ無いデース。」

「ありがとう。明日は日の出と共に出発する!解散!」

      ・
      ・
      ・

夜

がさ・・・。カノープスが眠っている木の下に、忍び寄る影が一つ。
気付いているのか居ないのか、カノープスは動かない。
その影は木に背中を預ける様に立った。

「カノープス。」
「なんだ?デボネアか?まさか、緊張して眠れないってのか?ははは。」
「いや、違う。」
「相変わらずかてーな。オメーはよ。で?なんだ?」
「さっきの編成だけどな、どうしてあの二人が一緒なんだ?
言ってしまうが、彼女らの相性は最悪だ。そのことがわからない
アーウィンドでもないだろうに・・・。」
「そのことか。オメーの言う事も最もだけど、ランスロットも、ウォーレンでさえ
何も言わなかったろ?心配ねーよ。俺らは大将軍からあいつらを守ってればいいのさ。
今までも、一緒だったんだしよ。って、オメーはこのパーティーに入るの初めてか?
まぁ、最初は驚くかもしんねーけど、要は慣れよ、慣れ。」
「・・・そういうもんか?」
「そういうもんだ。よけーな事考えてねーで、早く寝ろよ。」



日の出と共に進軍を開始した反乱軍、歴戦の勇者に加え天空の三騎士までもが
戦列に加わったとはいえ、ザナデュを守る帝国軍の士気は高く、戦闘は熾烈を
極めた。
しかし、日も傾きかけた頃になり、ようやく帝国軍に疲れが見え始めた。
その隙を素早くついたフォーゲル隊が、帝国軍の一角を突き崩す。

「ゆけ、勇者たちよ!敵は目前。ふり返るな!」
「承知!」


上都ザナデュ・主城

「さぁ、着いたぜぇ。もう、後戻りは無しだ。」
「ヒカシュー大将軍!貴殿が守るべき帝国はもはや瓦解した!
無益な戦いはあなたの望むものでは無いはず!」
「うむ・・・。帝国もここまでか・・・。神は貴殿らを選んだようだな。
しかし!ハイランドの誇りと名誉のため!たとえ我らが間違っていようとも、
貴殿らをこれ以上進ませるわけにはいかん!」

「父上!」
「!ラウニィー!」
「父上!帝国の、エンドラ殿下の変わり様、父上もお気づきのはず!
なのに、なぜ戦おうとするのです!」
「言うなッ!我がウィンザルフ家は代々王家に仕えてきた家柄!最後まで
王家をお守りする義務がある!それを判らぬお前ではあるまいッ!
これ以上言うことは無い!聖騎士たるお前の力、お前の信念、見せてみよ!」

fight it out!


戦闘は烈しく、前列・後列の区別もなかった。乱戦。
さすがに大将軍の側近だけあり、カノープスもデボネアも
前線を二人で守り切るには手に余る。
その隙を見逃す大将軍ではなかった。
一瞬の隙ををついて後衛へと肉薄した。

「魔女よ。覚悟は、良いか。」
「・・・将軍。その目は・・・。自らの意思で自らの騎士道を
貫こうというのか?」
「ふん。魔女の口から騎士道などと、聞けるとはな。」
「娘は・・ラウニィーはどうする?」
「・・・後の憂い無くして、この地に立てるかッ!覚悟!」
「デネブ!」
娘の声に躊躇いを見せたのか、正面の敵に気を取られ過ぎたのか、
ラウニィーの槍はヒカシューの胸に吸い込まれるように突き刺さった。

「父上・・なぜ・・・。」
「ラウニィーよ、我が娘よ。聖なる女騎士、ウィンザルフ家の宝よ。」
「父上・・」
「頑固な父ですまなかった・・。父は、こう・・することでしか
生きることが出来・・・なかったのだ。ラウニィーよ。
ただ・・忘れないでくれ。父は、わしは、お前の・・・ことを・・。
・・・殿下を、エンドラ殿下を止めてくれ。ラシュディに惑わされている
だけ・・・なのだ。」


「ち、父・・・・・・・・・・・・・」
「ラウニィー殿・・・」
「・・・デボネア、今はだめよ。」
「デネブ殿。」
「アーウィンド、あなたは酷い人。こうなることが判っててラウニィーを
連れてきた。そして、こうすることを予測して、私も連れてきた。
ふふ。いいわ。今は、手の上で踊ったげる。ヒカシュー大将軍に免じてね。
じゃ、私たちは本拠地で待ってるから、終わったら迎えに来てねッ(は〜と)」

言うや、デネブはラウニィーを連れて消えた。

「はいはい、後片づけは任せなって。しっかしあれだけの魔力残してんなら
もちっと手伝えってんだよなぁ。あー。ま、じゃ、行きますか。疾風の。」
「・・は?なんだそれは?」
「将軍はやめたんだろ?」

将軍を失った帝国軍は、それまでの戦闘が嘘だったかのように
鎮まり、そして、ある者は野に下り、ある者は反乱軍に降った。





「父上・・なぜ・・・。」
「ラウニィーよ、我が娘よ。聖なる女騎士、ウィンザルフ家の宝よ。」
「父上・・」
「頑固な父ですまなかった・・。父は、こう・・することでしか
生きることが出来・・・なかったのだ。ラウニィーよ。
ただ・・忘れないでくれ。父は、わしは、お前の・・・ことを・・。
・・・殿下を、エンドラ殿下を止めてくれ。ラシュディに惑わされている
だけ・・・なのだ。ラウニィー、愛しい娘・・よ・・・。」
「父上!父上ーーッ!」



帝国暦24年。シャロームの辺境に端を発したレジスタンスの反乱は
勢力を拡大し上都ザナドュに侵攻、帝国最後の要大将軍ヒカシューを倒した。
大将軍を失った帝国軍は、間もなく潰走。
上都ザナドュを通過した反乱軍は間を置かずしてゼテギネアに侵攻、
女帝エンドラをも打倒した。
・・・助けられることも無く。

ラシュディはゼテギネアには居なかった。
王子ガレスと共にシャリーアの魔宮に向かったと言う。

反乱軍はもはや反乱軍ではなく、解放軍と呼ばれるようになっていた。



ゼテギネア城医務局

「よぉ。ラウニィーの具合はどうだ?」
「んー。まだまだね。相当だわ。」
「結局、エンドラとは会うことなく、遺言も守れぬまま・・だしな。」
「ま、一人のために戦況を変えてまで約束を守るわけにもいかない。
・・・ってのは判るんだけどねぇ。アーウィンドも変わったわ。」
「言うなよ。ラウニィーはエンドラと会わなかった方が良かったんだよ・・。
って、おめー、病人の看護に飽きてきたか?」

「誰が病人ですって?カノープス。」
「ラウニィー・・。よぉ。元気みてーじゃねぇか。」
「相変わらずね。。殿下は・・エンドラは打ち取られたみたいね。」
「まぁ・・、な。」
「仕方がないわ。民衆の支持を得るためには、一人の、しかも死人の
言う事など聞いていてはいけない。」
「ラウニィー!」
「ふふ。怒らないで。一般論よ。アーウィンドは悪くない。
ただ、私はラシュディを許さない。彼のやり方を。目的を。
そして、私自身も。エンドラと遭えなかったこと。私の弱さを。
だから、ラシュディは、彼だけは、私が倒す。必ず。」
「・・・目的、ねぇ。」
「なんだ?何かあったか?」
「ん〜ん。なんでも。」


ゼテギネア城騎士団長室

「アーウィンド!」
「ラウニィー。・・ごめんなさい。」
「リーダーが何を言ってるの。あれでよかったのよ・・。」
「ごめん。」
「いいのよ。ところで、ラシュディと戦いたいの。」
「・・・・・・・・やはり、ね。
「ダメとは言わせないわ。私情を挟む余地は無いとは判ってる。
でも、これは私のけじめ。譲れないッ。」
「もちろん、私もねッ(は〜と)」
「デネブも?以外ね。・・・いいわ。端から貴方達の戦力は必要だったのよ。」
「ありがとッ(は〜と)」



女帝エンドラを倒し帝国が崩壊したことを受け、アーウィンドは
ゼテギネアにおける秩序の回復と、ゼノビア王国再建のため、
トリスタンを筆頭に、ランスロット、ウォーレンなど王国所縁の
部隊を駐留させることに決定、自らは残りの部隊を率いて
ラシュディを追うこととした。


戦力を分けたとは言え、天空の三騎士をも前線に投入した
解放軍の戦力は、襲い来る魔獣はおろか、黒騎士ガレスでさえも
対抗出来得るものではなかった。


魔宮シャリーア最深部大神殿

「ラシュディー!ガレス皇子いや、黒騎士は倒れた!残るはお前だけだ!」
「ふ・・・。来たか。やはり運命には逆らえぬと見える。
しかし!大人しくやられてやるわけにも、いかん。」

「そんなこと言わずに、くたばっちゃって欲しいんだけどなぁ〜」
「・・・デネブか。お前のような魔女がここに何用だ?
今さら、儂に降るようなお前ではあるまいに。」
「ふふッ。確かにね。以前ならいざ知らず、今のあたな程度の魔力には
もはや魅力もなにもないものね。かぼちゃの方が可愛いわッ(は〜と)」
「・・・言ってくれるわ。と、いうことは、目的はあれか。」
「察しがいいわね。でも、ちょっと考えれば判ることかしら。
他にめぼしいものは無いものねッ。」
「そのために、わざわざここまで来たというのか。愚かな。
お前ほどの魔力を持っておれば、見ておることも出来たろうに。
命を失くしてしまっては元も子もなかろう。一体どの風に吹かれた。」
「ん〜。白く輝く北からの風・・・かしら。ね(は〜と)」

「・・ほぅ、父殺しの聖騎士か。君主を裏切り、父を殺し、そして祖国を
滅ぼさんとする者。お主こそが暗黒騎士たるに相応しい。ククク・・・。」
「何を言うか!外道!
王国を、殿下を、そして父を殺した報いを受ける時が来たのだ!覚悟!」
「くくく。憎いか。憎むがいい。儂を。神を!
その憎悪こそが最上の供物!我の力!」


fight it out!!


「輝け閃光!唸れ雷鳴!自らの意志を持ちて彼の者を討て!
大いなる神の怒りよ!サンダーフレア!!」
「ぐぬぅ!」
荒れ狂う雷。飛び来たる隕石。轟々たる魔力の氾濫。
ラウニィーの放った雷は、無限に続くとも思われた
形あらざる力の応酬に終止符を打ったかに見えた。
「・・・もはや、これまで・・か。
ふ、ふふふ。はははははは。
我が野望は成就せり!」

突如、地面が揺れた。
地面と言うより、神殿自体が揺れて居るかの様にも感じられる。

「な、なんだ!」

「ククク・・。聞こえるか?ディアブロの息づかいを・・・。
残念だったな・・・。儂は、死ぬ。しかし、一人では・・死なん。
目覚めよ。暗黒の破壊神。ク・・ククク・・。」

「我が眠りを妨げるものは誰だ・・・」

聞く者をして心胆寒からしめるとは、まさにこの事かと
心の底から思いたくなるような暗い声。
暗黒神の息遣い。
闇の目覚め。

「暗黒神ディアブロ・・・ラシュディはこんなものを呼び寄せようと
していたのか・・・」
「きゃー。助けてぇ、カノぷ〜(は〜と)」
「何余裕ぶっこいてやがる!ちょぉっと、やばいんじゃねぇか?おい。
こりゃぁ、桁外れだぜ。」
「ん〜。ここまでは予想できたんだけど、こっちのやられ具合は
予想以上なのよねぇ。出てき過ぎちゃったかなぁ。」
「く・・!このままでは。」

「HAHAHAあーうぃんどサン!お困りデスか〜?」
「せっかくいいところで出てきたのに、緊張感もなにも無いわね。」

外の敵を蹴散らせたのか、神殿の異変を感じ取ったのか、
神殿の入口には三つの人影があった。
この世で敵う者など居ないであろう、最強の戦士ドラグーンの姿。

「スルスト!フェンリルも・・」

「久々に腕の鳴る相手だな。雑魚相手のつまらん仕事ばかりで
退屈していたところだ。助太刀いたす!」
「HO!ここに来てホンネデ〜スね。そんなだから元に戻れないデスね〜。」



天空の三騎士の力を得、凄絶な戦いの末にディアブロを破った
アーウィンドたちは、ゼテギネアに帰還。
その報告を受け、トリスタンは新生ゼノビア王国の建国と
国王即位を発表、ここに、ゼノビア戦役は終了。
解放軍の立役者アーウィンドを妃に迎え、王国は新たな時代を迎える。


1年後
新生ゼノビア王国王城謁見の間

「ラウニィー、それは実か?」
「はい、トリスタン王。私は王家の守護者でありながら、君主を裏切り
父をもこの手に掛けました。」
「それゆえ、聖騎士の称号を返還する・・・と。」
「はい。それと・・・旅に出たく存じます。」
「!」
「ラウニィー!」

「アーウィンド妃殿下・・。
どうぞラウニィーめにお暇を頂きたく存じます。」
「なりません!あなたが居たからこそ、ハイランドの民も混乱することなく
迅速にまとめることができたのです。あなたが居ればこそ・・・」
「ですが・・・」
「でも、ラウニィーが居れば争いの種にもなるわねッ(は〜と)」
「デネブ」
「確かに、ラウニィーが居たからハイランドの民も上手くまとめられたわ。
でも、これからは違う。ラウニィーを担ごうとする者も出てくるわッ。」
「そ、それは・・・」
「・・・よし、許そう。」
「王!」
「アーウィンド。私は、ラウニィーを危険視しているのでは無い。
ラウニィーはこれまで、己を殺し、帝国の打倒を決意しそして、
ゼノビアの再興に大いに尽力してくれた。
これからは、ラウニィーの思うように生きて欲しいのだ。
そして、またいつの日か、ゼノビアに戻ってきて欲しい。」
「トリスタン・・。」
「はっ!ありがたき幸せ・・!」
「いいこと言うわねぇ。ついでに、あたしも旅に出たいわッ(は〜と)」
「デネブ、いやデネブ殿。あなたには、宮廷魔術師として、今少し
力を貸して頂きたい。」
「堅苦しいのって嫌いなのよねぇ。退屈だしぃ。ウォーレンが居るでしょ〜?」
「ウォーレンとあなたとでは、見ているところが違うのだ。
今しばらく、仕えてはくれまいか。」
「あったま堅いわねぇ。いつもいつもそんなに真面目にやってると
疲れちゃうわよッ。ま、じぃさん一人には荷が重いしねぇ。確かにッ。
もう暫くつきあったげるわッ(は〜と)」

「ラウニィー・ウィンザルフ!唯今を以って、聖騎士の称号の返還を認め、
無期限の暇を申し渡す!そして、白銀の戦乙女の称号を授ける。」
「・・・はっ!有り難く頂戴仕ります!
失礼いたします!」



ウィンザルフ家ゼノビア別荘ラウニィー私室

ぴシュン
「はぁい(は〜と)」
「!デネブ!」
「いいなぁ〜。私もどこかに行きたいなぁ〜」
「まだ言ってるの?あきらめが悪いのは、可愛くないわよ。」
「あ。言ったな〜。そんなこと言うと、あげないわよッ。」
「え?」
「餞別」

デネブは抱えていた包みを無造作に渡す。
受け取ったラウニィーにしても、何気に包みをほどいてみる。
それは、一振りの剣であった。
しかし。

「・・・・これ!デネブッ!!」
「ニセモノよ。」
「な・・・。」
「そう。残念ながら、ホンモノじゃないわ。
それでね、ホンモノは既に盗まれているの。」
「・・・に?」
「今、王室に飾られているのはニセモノよ。
ホシの目星はついてるみたいなんだけどね。
今は、捜索隊を編成中。」
「そ、そんな最中に・・私は・・自分のことを。
デネブ!犯人は誰?私も行くわ!」
「あなたもトリスタンに劣らず堅いわねぇ。そんなのじゃこの先
乗りきれないわよ。あなたには、任務ではないけど、必ずそこに
行かねばならない場所があるのよ。」
「え?」
「よく聞いて。ラシュディが復活するわ。」
「!!」
「場所は・・・それが、よくわかんないのよねぇ。転生ってのは、
生まれてみるまでわかんないのよ。しかも、上手く生まれ変われても
前世の記憶を取り戻すかどうかは、また一苦労なのよ。普通はね。」
「普通は?」
「そ。普通の転生は、生まれ変わる目標の設定と記憶の再構築が
とことん難しいのよ。」
「でも、ラシュディはできる?・・・あの時言ってた、
あれって、そのことなの?」
「あら。よく覚えてるわね。そうよ。」
「でも、デネブも転生してるんでしょ?あなたのことだもの
転生先は選ぶんじゃないの?」
「ま、私も転生してるんだけど、私の場合は一度死んでから
生まれ変わる種類の転生じゃなくって、魂と魔力の引き継ぎなのよね。
正確には。・・・つまり、どこかで生まれる赤ん坊が目標なんじゃなくって、
あらかじめ転生先を用意しておくのよ。例えば、ラウニィーみたいな・・
くくくくく。」
「!なに!?」
「・・・冗談よ。剣なんて構えないでよね。その剣、ニセモノとは言っても
彫ってあるルーンも材質もホンモノの聖剣と同じなのよ。
足りないのは、神の祝福だけ。
ま、それはともかく、ラシュディが知ったのは今の肉体が
完全に死んでからでも、復活できる”転生”なのよ。」
「・・・それじゃぁ、倒しても意味がないんじゃ・・」
「ま、準備が済んで無いうちに倒すってのが一番手っ取り早いかしらねッ。」
「・・いいわ。何度生まれ変わろうと、私が必ず倒す。」
「あまり気張らないようにね。目的は、達成していくらなモノよ(は〜と)」

「でも、なぜ私にこれを?」
「ん〜。なんていうか、大将軍がね。目を見てたら、なんとなく。」
「父上が?」
「ま、なんでもいいじゃないの。貰えるものは貰っておくものよ。じゃ。」
ぴシュン
「あ、デネ・・・。父上・・・。」



「あ〜。やっぱり、ガラじゃ無いわよねぇ。ラウニィー、ごめん。」
「なにがだよ。」
「ぅうぇぇ!?って、何よあんた。驚くじゃない!」
「・・・さっきから居たんだけどな。判らなかったのか?」
「え?あ、あ、そう?おほほほ。」
「おほほほ。じゃ、ねぇ。俺達はもう出るぜ。おめーもそのうち
来るんだろうけどよ。やることやってからにしろよ。」
「な〜にが。偉そうに、このトリは言うか。」
「トリって言うな〜!ってよ、おめー、一体ナニモンだ?」
「ナニモンって?言わずと知れた美少女うぃっちデネブよん(はーと)」
「・・・・ヽ(´ー`)ノま、素直になれねーガキってトコかな。」
「な、何を・・」
「お。見ろよ。ラウニィーが出て行くぜ。何も言わなくていいのか?ん〜?」
「・・・・!!!くー。」
「くっくっくっく。」

『デネブーーー!ありがとーー!』
「・・!」
「いい奴じゃねーか。じゃな。」
「ふんだ。」


「・・・ま、いいか。柄でもなければ、興味も無いことだったんだけどね。
まだ暫くは付き合ってあげるわ。退屈しそうに無いもんね。」
ぴシュン。

人々は語る。白銀の剣を振るう長髪の女騎士の物語を。
白銀の戦乙女の黒き賢者を打ち倒す物語。



pei@pluto.dti.ne.jp