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1999.9.1発行              編集・発行:鴨池公園愛護会
第14回 自然教室(トンボ王国生き物探検)の報告です!

今回で14回目を迎える自然教室は、8月22日(日)に鴨池の生物相保護区で行われました。途中から参加した人も含めると、おとなとこども併せて合計30人くらいが集まりました。

その時の活動状況をご紹介します。(当日の天気 ; 晴れ、 気温 ; 33.5℃)


1. 水質調査(パックテスト)

集まった子供たちは、3班に分かれてまず水質調査を行いました。 これは毎年やっているパックテストという簡易測定方法で、COD(化学的酸素消費量または要求量)と呼ばれています。この数値が大きいと、水中の酸素が少ないことを示し、この値が高すぎる場合は生き物にとっては厳しい環境になります。 結果は最終頁のとおりです。


2. 池の中の生き物調査

☆ 去年より増えた! 〜 マミズクラゲの謎 〜

これは去年の自然教室のとき、池の水面にかなり浮遊しているのが発見されましたが、今年は更にその数が増えました! マミズクラゲはこのまま増えていくのでしょうか?

もし近隣の池でマミズクラゲを発見された方がおられましたら教えて下さい。

☆ アメリカザリガニがいない! 〜 それはブラックバスの腹の中だった! 〜

今回も池の中には日本在来種の生きものは殆ど見られませんでした。 しかしそれより驚いたのが、去年から数が減っているアメリカザリガニがわずかしか釣れなかったことでした。 これと反対にたくさん釣れたのが「ブラックバス」! 食べ物を調べるためにブラックバスを実験解剖したところ、出てきたのは「アメリカザリガニ」のハサミ! ブラックバスのすさまじい食欲は有名ですが、なんとアメリカザリガニを食べていました。

ブラックバスが増加とアメリカザリガニの減少は、どうやら無関係ではなさそうです。

☆ ヤゴの姿は ? 〜 トンボ王国の危機!〜

ヤゴが見られないだけでなく、トンボが飛んでいる姿もあまり見られませんでした。 「トンボ王国」として、たくさんのトンボが見られた鴨池は、もう過去のものになりました。 アメリカザリガニを釣って他の場所に移すことで、少しでもヤゴを守ろうとしていましたが、今ではそのアメリカザリガニに替わってブラックバスが鴨池に君臨しているようです。


3.ベイトトラップ

前日に仕掛けておいたベイトトラップには、常連(?)のオオヒラタシデムシ以外にオオセンチコガネやセマルオオマグソコガネなどがトラップに見られました。 残念ながら、去年確認されたベッコウヒラタシデムシやアオオサムシは見られませんでした。


これからの鴨池をどうしていくのか? 自然教室の総括

☆鴨池の現状と今後 〜 極めて貧弱な生態系 〜

今回の自然教室の報告にあるとおり、鴨池の在来種の生きものたちは、ブラックバスなどの外来種によって駆逐されてしまった状況です。もしこのままだと、外来種でも大型の個体だけが残り、在来種は更に少なくなり、極めて限られた種だけが棲息する池になってしまいます。豊かな生態系の必要条件である「多様性」とは全く反対の状態になってしまいます。

☆「トンボ王国」という呼び名 〜 私達の目指してきたもの 〜

日本はその昔「あきつ洲(あきつしま)」と呼ばれていました。あきつは「トンボ」の古い呼び名ですが、その昔にはいろいろな種類のトンボが数多く飛び交っていました。その環境には、様々な水生昆虫やメダカが見られるという日本古来の豊かな生態系がありました。鴨池では「トンボ王国」の呼び名で、何年もかけて愛護会メンバーが整備してきました。それはトンボが棲息できる環境が、多種多様な生きものが共存する理想的な生態系であり、トンボがその象徴であるからです。

(愛護会は「トンボおたく」だけの集団ではありません...)

☆これからどうすれば良いのか? 2つの課題について

今回の自然教室の結果にあるように、いまトンボ王国には存亡の危機が迫っています。この事態にどう対応していくのか?という件については、多くの議論があると思います。その中から、今回は2つの課題について考えたいと思います。

(課題その1) 掻い掘り(かいぼり)について

今から6年前、鴨池で「掻い掘り」(=池の水を全て抜き、外来種を駆除する)を実施しました。その後2年間程度は多くのトンボが確認できましたが、次第にその数は減っていきました。一度は駆逐されたはずのブラックバスやブルーギルが、いつまにかはびこるようになっていたのです。わずかに残った水(というより泥)の中にこれらの外来種が生き残っていたのか、誰かが別の場所で捕まえたものを鴨池に放したのかは不明ですが、掻い掘りからわずか5、6年で鴨池は外来種だらけになってしまいました。 今回の結果を見る限り、再度掻い掘りをして外来種を駆逐しない限り、トンボの乱舞する鴨池の状態は戻りません。

しかし!...。確かに掻い掘りが必要だとしても、掻い掘りをしたところで、5年程で今と同じ状態になってしまうのではないでしょうか? 自然環境と向き合うとき、テレビゲームで「リセットボタンを押す」ような安易なやり方は決して好ましくないはずです。

掻い掘りをするには、多くの公園利用者の合意を得ていく必要がありますが、その後の鴨池をどうように保全していくのか?という点を(具体的方法で)よく議論してからでないといけないのではないででしょうか?

課題その2 「釣り禁止」の問題

今迄、鴨池では「トンボ王国」を守るために釣りを禁止してきました。しかし今の鴨池の生態 系の頂点にいるのは、バスなどの外来種です。つまり「釣り」が豊かな生態系を維持す るための手段になるのではないでしょうか? 鴨池で密かに活動する「バス釣り少 年達」は、ある意味で自然に対する興味を持っている、あるいは興味を持つ可能性のある存在と言えます。そこで彼らに対して、鴨池公園で目指し ている「トンボ王国」の姿について説明し、そのためにバスなどの外来種を排除するということを理解してもらった上で、バスの天敵としての役目を担ってもらうというのが実現できないでしょうか? (例えば定期的な「釣り大会」の開催など)またその時にその際、ヤゴなどの生きものにダメージを与えない「鴨池流釣りのマナー」を教えるだけでなく、 飼わなくなった外国産のペットを公園等に逃がしたりすること(=誤った動物愛護意識)が、自然環境への深刻な影響を与えていることを、参加者に伝える良いチャンスです。(ペットショップで売っているミドリガメが成長すると、アカミミガメになるのだそうです。) バスなどの外来種の繁殖力は強力で、効果については不明なので、「掻い掘り」前に是非その効果を確かめておく必要があります。効果によっては「掻い掘り」後の保全策の一つとして考えられなくもありません。

他に何かアイデアをお持ちの方、是非教えて下さい。

 

皆さんにお伝えしたいことはまだまだありますが、今回はこれくらいにして、皆さんからのご意見をお待ちします。よろしくお願いします。

by 事務局


今後の活動について

* 10月 2日(土) 19:30-21:30 定例ミーティング けやきが丘集会所にて

* 10月 3日(日) 10:00-12:00 竹切り、雑木林の手入れ、枯れ木や枯れ枝の処理

* 10月17日(日)  森のまつり

* 11月 6日(土) 19:30-21:30 定例ミーティング けやきが丘集会所にて

* 11月 7日(日) 10:00-12:00雑木林の整備(間伐、下草刈り)


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