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発行日:1998/12/1発行責任:グループ「ぐろーいんぐ」

 

創刊にあたって思うこと

 子どもがいきいきと成長して行くには、どんな子どもでも、一人の人間として愛され受け入れられ、自尊心をもてることがどんなに大切か、障害を持つ我が子の成長を通して痛切に感じています。ひとりひとりの子どもの力にあった教育が用意され、またすべての子どもがそれを受けられるよう学校・家庭・地域で支えていかなければならないと思うのです。

 「障害」という響きは、当事者のみならず、周囲の入たちをもとても困惑させてしまうでしよう。時には、障害を持つ人たちは周囲の人の無責任な思いやりに傷つき孤立してしまうこともあります。また、障害ということばへの偏見から、軽度な障害の場合、対応が遅れてしまうことがしばしばみられます。障害児教育についてもいろいろな考え方があるのも事実ですか、地域で支えるためには、共通の教育観、療育観が必要となってきます。

 この度、このような状況に心を痛める障害を持つ子どもの親と地域の人が中心となって、子どもたちの幸福な未来のために力を合わせ、学校教育、特殊教育、障害者の社会自立等について、いろいろな視点から考えていこうというグルーブ「ぐろーいんぐ」ができました。その第一歩として、さまざまな障害について正しく理解することが大切だと考えています。また当事者自身が障害を素直に受け入れていけるような環境づくりにも寄与できればと思っています。さらに、よき理解者、支援者の輪を地域に広げていきたいとも思っています。まず当面は、いろいろな情報の発信元として活動していきます。どうかご理解、ご協力をお願いします。そして是非、グループ「ぐろーいんぐ」にご参加下さい。

  グルーブ「ぐろーいんぐ」代表 吉田千代 E-Mail ychiyo@a2.shes.net

ホームページに関することはpearl@pluto.dti.ne.jp

今回のテーマはズバリ、「障害児教育」です。

 「現在我が国では、特殊教育を受けている学齢児は、学齢児全体のl%にすぎません。この数字は欧米先進国に比べて著しく少なく、特にアメリカの12%、カナダの15%、イギリスの20%に対しては桁違いの低さです。この大きな差の主な要因は、アメリカ、カナダでは学習障害児(LD)、イギリスでは学習困難な子どもを特殊教育の対象に含めているところによるものです。

 一概にはいえないとしても、たくさんの子どもたちが、本当は必要であるはずの援助を受けることなく通常学級に在籍していることになります。もちろん各国の教育事情の違い、特殊教育のあり方の違いがあるとしても、果たしてこの子どもたちにはなんの援助も必要がないと言い切れるのでしようか。「統合教育」であろうと、「分離教育」であろうと、特別な配慮を必要とする子どもたちへの適切な教育的対応という意味において、我が国の特殊教育Special Educationはたくさんの課題を抱えています。


なかでもお寒い(?)横浜の障害児教育

 他人の芝生がよく見えるわけではなく、実際、他都市から引っ越してきて横浜の特殊教育事情にがっかりする人も多いようです。「ススんでいる」と言われている他市の実例も追々ご紹介するとして、今回は横浜市の小中学校における障害児教育「入門編」です。

 就学指導基準、すなわち通常学級、特殊学級、養護学校、盲学校、聾学校、就学猶予のうちどれを選択するかの指導基準は文部省通達で示されていますが、その判断は各市町村の教育委員会次第です。法解釈は別として、横浜市は養護総合教育センター(略して養総)か中心となり、関係機関とよく話し合った上で就学指導がなされますが、最終的には親(保護者)の選択が尊重されるようです。といっても、校区の学校に特学がないとか、通常学級に在籍しても特別な援助を受けられなかったりと、選択肢が豊かなわけではありません。

 通常学級に在籍した場合、通級指導や介助員制度など平行して利用できるシステムがあります。しかし残念ながら、このオプションを十分に生かすための横浜市のビジョンが確立しているとはいえません。たいていの場合、校長先生や、先生の裁量次第だったり、親が東奔西走してくたくたになった末だったり、というのが現実です。それが横浜の最大の弱点といえます。


通級指導教室

 小中学校の通常の学級に通っている比較的軽度の障害がある児童生徒に対して、教科等の指導は通常級で行り、障害に応じた特別の指導を行うための教室です。

通級指導教室  対象となる児童生徒

弱視   両眼の矯正視力が0.3未満か目の機能障害があるもの

難聴・言語障害 聴力に障害があるもの。構音障害や吃音など話し言葉や話すリズムに
          障害があるもの

情緒障害    自閉傾向などで他人とのコミュニケーションに障害があり、集団参加
          に援助が必要なもの

設置校 :小学校10校(北部では市ケ尾小、綱島東小)
     うちl校はLD児の研究校として個別指導教室設置、中学校l校(共進中)のみ

指導内容:心身の障害の状態を改善することが目的で、これを目的とする養護・調練の指導が中心。
     情緒障害は小集団指導、その他の教室は個別指導。

指導時間:原則として週l〜2回、1回l〜4時間(原則として、保護者の付き添いか必要)


介助員制度

 障害を持つ児童・生徒について、登下校、校内移動、着替え、食事、排泄の手助けや安全の配慮など学校生活のサポートする「介助員」が付き添う制度です。

 趣旨は、保護者が緊急事態にあって付き添いができない場合を対象に行われる[保護者支援」で、利用に制限があります。

1日7時間以内、年間40日以内、同一介助員の雇用はひと月8日以内

 

現場がらの声・声・声..・

○付き添いは親がするものという考え方の上に立った介助員制度では、子どもの教育権が保障されているとはいえない。

○年間登校日は、約210日です。すべての登校日が保障されるべきです。

○着替えやトイレの介助は同性の介助員の方がいい。若い男の人も介助員になれるような安定した雇用形態にしてほしい。

○―ヶ月8日以内という制限があっては、介助員の継続性、専門性を高めることが難しい。

○校外学習などにも適応して!


ところで、就学時検査は終わりましたか

 就学時健診におけるいわゆるOX式の知能テストは3年ほど前から面接方式に変わってきました。とはいえ、結果によっては「適切な措置をとらなければならない」(学校保健法)となっており、本質的には振り分けのきっかけになっています。来年4月からの就学方針が決まらず不安な気持ちでいっぱいの方も多いと思います。

通常学級か、特殊学級か、養護学校か、、、だけでなく、少ない選択肢の中からもいろいろな方法が考えられます。「先輩」のお母さん、お父さんの苦労、試みをいくつかご紹介します。

☆校区の学校に特学がなく、校区外の特学に通ってる場合。平日は在籍校土曜(といっても第2,4週は休み)は校区の学校で全日交流。運動会は両校参加。

☆養護学校と地域の学校との交流。

☆普通級に籍を置いて、週に何時間か特学で授業を受ける―校内通級。

☆特学のない学校だったので通常学級に籍を置いたが、高学年になってからは、毎週2時間の個別指導を受けた。

☆肢体不自由児で通常学級に在籍、チームティーチングによる指導・援助を受けた。

☆LD児で自校に特学がないため通常学級に在籍、他校の特学に通級。

☆介助員による授業中のサポート。

……などなど「こういう例もなくはない」という希少な例も含めてご紹介しました。

 チームティーチングとは92年度から文鄭省の肝いりで始まった「複数教師による指導」。複数担任制とも異なるなるが、教科のむずかしさや子どもの実態によって多様な指導ができるよう教員を配置するシステム。活用の仕方は学校によりいろいろ。


都筑区障害児教育事情(’98年度当初)

 都筑区には養護学校も通級指導教室もありません。特殊掌級もすぺての小中学校にあるわけではないので、近所のお友達や、兄弟と同し学校へ通いたいと思っても校区外の特学に通うことを余儀なくされている生徒児童がいます。また、通級指導には、市が尾小、綱島東小へ通うことが多いようです。中学校は、共進中にしかありません。

※特殊学級設置校 

 小学校 16校の内14校  総在籍者数 53人

 中学校 6校の内5校    総在籍者数 17人

 

 つづきの丘小学校が来年4月開校です。各階に車椅子用のトイレがあるぴっかぴかの学校です。特学も開設されるでしよう。中川西中の例のように準備段階から家庭一学校の連携かできることが望まれます。


中川西中の場合

 今年4月、中川西中学校に新しく特殊学級が開設されました。大規模増改築に伴う設置で、在校生やPTAにとっては「突然」なことであり、同じ状況で開設されたある中学校では、親や地域の入が1年間ほど特学の存在を知らなかったということがありました。中川西中の場合は関係者の努力、熱意でとても良い形でスタートできたようです。今後の特殊学級開設へ明るい材料となると思いますのでご紹介します。

 98年4月に中川西中学校に持殊学統が開設されるとのお知らせを受けたのは、97年9月中旬のことでした。11月には、中川西中学校において「開設説明会」があり、参加者は養獲教育総合センター相談室長、指導主事、中学校関係者、地域の保護者、計11名が参加しました。

 横浜市では、親切校及び大規模な校舎の増改築に際しては、特殊学統を設置するが方向である旨の説明がありました。また校長先生からは4月の開設に向けて「特殊学級開設準備委員会」を校内に設けており、構成は校長、副校長、教務主任、各学年主任、養護教諭、PTA役員、保護者であるとのお話がありました。

 その後、春までに委員会は2回開かれ、そこでは保護者の希望、子どもたらをとりまく環境、当校生徒たちの様子等々貴重な意見交換ができたことは本当に良かったと思っています。

(吉澤 朋子)

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 中川西中の特殊学級は「学習室」と呼ばれています。新しく増築された明るくて広いスペースに現在2名在籍しています。地域に開かれた学習室で、学習室主催の勉強会には校外からもたくさんの参加があります。(次回2月開催予定)学習室担当の粟屋先生のメッセージをご紹介します。

中川西中学校 「PTA運営委員会だより」[98.10.16付け]から,

バリアフリーをめざして(学習室担当粟屋千代先生)

 特殊学級は、特別な教育的ニーズのある子どもが利用する“学習の場”です。本校に設置するに当たり、保護者の願いや現在の子どもたちの教育的状況を考えて、柔軟に対応できるような学習空間を作りたいと思いました。特殊教育と通常教育は別々のものととられかちですが、教育は一本です。その中に専門的な教育として特殊学級が存在するものとして考えています。子どもたちは通常の学級で学びながら、必要に応じてここで学習します。そこで本校では”学習室”と呼ぶことにしたのです。

 ここでは、教科学習の他に、生活単元学習や養護訓練的な学習・作業を伴う学習が多く行われます。私たちは誰でもが、生きる力を身につけたいと願います。ここでの学習もそれを踏まえて行われます。自力でできることをふやしながら、生活空間を広げていきます。毎日、ご飯をたいてお弁当に詰めていきます。昼食づくりは、計画、買い物、調理を週一回の割で行っていきます。日常生活かできるような設備が、3教室分の中にあるのです。農作業では畑作りから始まって、じやがいもを植えるところまでいきました。作業的な学習として、編み物、手織、紙工芸等をやります。どれも手先を使った学習としては必要なものばかりです。また、パソコンを使った学習もあります。中学校の3年間は短いです。今でも、そしてこれから先もこの地域の中で共に生活し、共に育っていく子どもたちのために、この学習の場自体がバリアー(障壁)にならないように、子どもたちの教育活動を援助していたいと思います。7月4日に都筑区のケースワーカーをお呼びして勉強会を開きます。子どもたちの教育のこと、地域のこと一緒に考えませんか。


さて、いよいよ編集後記  今回だけはチョット派手に!

 構想1年……おしやべりばかりはかどってなかなか作業が進まなかったかな?でもとりあえず、情報誌「ぐろーいんぐ」は次のメンバーで旗揚げしました。i

T.YOSIZAWA(中川在住)

 今までい―つばいいろんなことヶあったけど、まだまだこれからですよねえ。「今までのいっばい」が誰かの役に立つのならならと「ぐろ―いんぐ」に参加ました。

T.SATO(荏田東在住)

 なんだかんだと言うけれど、いわゆる普通の子にとっては障害のある子どもたちと育つのがいいに決まってるわけで、、、、

M.YAMAMOTO(荏田東在住)

 夢を持コてP.T.の道を選んだ娘がいろいろな壁にぶち当たっています。娘と一緒に徹底的に悩もうかと恩っています。

Y.TANAKA(荏田南在住)

中学進学にあったって、「悩める母」をやってます。

C.YOSHIDA(加賀原在住)

 好きなことぱは、「有言実行」。気が弱いので自分にプレッシャーをかけていろいろなことに挑戦しています。現在中学校(共進申)に通級推導教室がありますが、これは平成6年に横浜の5校(現在は6校)にある情緒通級教室の親の会が連絡会をつくって市に要望したのがきっかけでした。当時のことを思うと、多くの仲間と諸機関に働きかけに通ったのも楽しい思い出です。みんなの利益になることなら、頭で考えているだけでなく時には勇気を持って前進することも大切だと思っています。


 次回は、就学前の障害児の情報を、と考えています。みなさんから、こんなことを取り上げてほしいとか、こんな噂を聞いたけどどうなってるのかな?とか、また耳寄りな情報をお寄せいただき、一緒に紙面づくりをしていきたいと思っています。また、子どもたちの絵で紙面を飾っていきたいと思っていますので、みなさんからの「売り込み」もお待ちしております。

(今回は、雄祐君の絵をカットに使わせていただきました)

 

今回、中川西中学校のPTA運営委員会だよりからの転載を快く承諾いただきました。ご協力に感謝いたします