故郷にて




by 陽奈


最終訂正日 2005年 2月11日




    ときめき

  1. まだ逢わぬ人に話すよ我が過去をビールの苦きがのどに滲みおり 

  2. たわいなきことを語れる君がいてこのひとときの永きを願いつ 

  3. 夏祭り今夜は少し甘えたし浴衣姿の我を見てほし

  4. 逢いに行く小さき手鏡の我の目に心変わりのなきを問いつつ

  5. 携帯の声にはずむよ我がこころまだ見ぬ君が近しと思えば

  6. 地下鉄の窓に映して髪に手を君待つ駅はあと二つ先

  7. 携帯を握りて一晩迷いおり返事待つ君ありと思えば

  8. 逢えばまた次にと思い煩えば更に虚しき日々や過ごしぬ

    5月16日 故郷にて詠める

  9.  ひさかたの故郷にありて我思う いずこがうたかた時は流れて

  10.  亡き父は逞しきままそこに居る故郷の卓袱台母の傍ら

  11.  故郷の家は昔のそのままで父は居ませり母のかたわら

  12.  ひさかたの故郷の家は母一人老いたる姿見るは悲しき

  13.  故郷のかしましく暮らした我が家には思い出を守る母ひとりあり

  14.  テレビの声人の語らい船の声ざわめきつぶやく我にひそかに

  15.  いっちゃんか 昔の呼び名で我を見る 思い出さないその人の名は

  16.  桟橋より手を伸ばせばそこにある 我が生まれし島は遠くて

  17.  したたかに降る雨よ時を押し流せ 母と娘は今老いていませり

  18. バナナ一本少しでいいねと分けて食べ 違う時空を生きこしふたりは

  19.  故郷は温かきがゆえ我ひとりこらえきれない寂しさを噛む





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