あをもじ2005-I
 夕海
最終訂正日 2005年 2月28日
2005.1.1
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元旦の海辺を歩く子等見付く打ち上げられし大イカ一匹
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一年に一度集へる六家族分けたる大イカ手土産となり
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「歌はぬ」と言へど慣れれば次々と父は曲名告げるカラオケ
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今時の歌を歌ひし我が子等に父は驚き感心しきり
1.2
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中古買うつもりで行きし電機店新品買いぬ目移りをして
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初売りの朝は早起き白みたる空に向かひて車走らす
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上見ればキリなきことは知りつつも新製品に目移りする子
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ゲーセンで娘に習ふ遊びかなふたりで対戦夢中になりて
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パソコンを買ひて自宅に持ち帰り使へぬことの初めてわかり
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お年玉使ひて息子おもちゃ屋で迷ひに迷ひラジコンカー買ふ
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正月の人込みの中目立ちたる羽織袴と丁髷姿
1.3
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再びに訪れし店模様替え目指す物買ひやっと安堵す
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初めての焼肉店はファミレスの如く明るくセルフサービス
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DVD見られし娘のパソコンを借りて初めてQUEENを観る
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今は亡き彼の人歌ふ姿観て思わず鼻のツンと痛みし
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子ども等と一年ぶりに行ひし百人一首常に三番
1.4
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出発の遅いと母から電話あり本人よりも楽しみてをり
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来る時の何倍もある荷物積み我が子は戻る狭きアパート
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一度では持って上がれぬ荷物なり途中の店で台車買ひ行く
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書類持ち大学に行く我が子なり高校生かと守衛は案内
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ポケモンの展示場行く息子たち我等は横の振袖を見る
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試着して次々に来る販売員娘戸惑ひマネキンと化す
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行く店も決まりし我等の浜ブラは時計を気にし急ぎ歩みて
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この次は何時来るものやわからねど長崎までの路は近づき
1.5
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少しずつ日常戻れど子等は居り声を聞きつつ午睡する我
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気だるさに動きたくなし買物も慌てて行きし閉店間際に
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友よりのハガキに書かれし母の死を悼みて電話をすれど留守電
1.6
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新年の講座始めはビーズにて白く輝くネックレスのでき
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行く場所のなき末息子講座にてゲームをしをり我等の横で
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覇気のなき友の声聴き辛けれどわざと明るく明日を語りぬ
1.7
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「先生」と呼ばれて違うと言へざらむ一日だけの「先生」なれど
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幼子の「また来てね」の声嬉しくて声の枯れるも忘れる心地す
1.8
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突然に本屋に寄りて求めたり勧めによりて歌壇テキスト
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歌読めば自分の歌の稚拙さに精進する気は紙一重なり
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ビーズ屋で買ひし個数を間違へて出来あがざりし新たな指輪
1.9
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「久しぶり」息子の声は玄関で友を迎へり小学二年
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好きな歌流れ来るなり喜びて息子は探すよく聞ける場所
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正月の日々を記録し文に書く頭の中も整理のつくらむ
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精米所通ひし日々も今日までで終わると思へば寂しくなりぬ
1.10
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お供えの堅さを好む我なれど子等は内側分かれて食むなり
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この冬の一番寒き祝日に雪舞ふ空の下で成人となる
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天然の美味さ詰まる牡蠣の殻開ければ白き蟹も現はる
1.11
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布団かけ子等の寝顔を眺めれば今日の仕事は終わりになりぬ
1.12
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年末に出したる葉書今頃になりて戻りし宛先不明で
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図書館でボランティア人絵本読む少なき聞き手は喜びてをり
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作品も鑑賞眼も初心者の我は初めて入門書読む
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癌取りし友は仕事を再開す明るく語り我も嬉しき
1.13
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著名人続け様なる白血病気にはすまいと思へど気になり
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何年かぶりに匙持ち食べさせる幼き人に暫してこずる
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エプロンの紐を捜して持つ子おり数年前の我が子とだぶる
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講演のあるのは知っておりたれど学校ごとに態度違へり
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土壇場になりて仰天合併案先は見ざり我が町の顔
1.14
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廊下まで響くが如き笑ひ声会議中とは思へぬ我等
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ひとことの人物紹介難しく我はいつしか肝っ玉母ちゃん
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会議終え急ぎ駆け付くフレンチの料理教室生徒少なし
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集団で一点見下ろす男達視線の先に将棋板あり
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男等がベンチに集ひ将棋する平日午後の冬の公園
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五百人入るホールにロープ張る空席目立つを防ぐつもりか
1.15
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しんとした夜に突然動き出すラジコンカーのモーターの音
1.16
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小雪舞ふ寒き朝の天気予報南の海に台風1号
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猪も灯り恋しや闇の中ヘッドライトに照らされてをり
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最近の子どもの学力低下を考へり作文読みつつ自分と比較し
1.17
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二年越しの宿題終へて肩の荷の下りた気のする送信も済み
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数字のみ打ち込み終へてこの先の文字入力は各自分担
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例会で三月までを計画す福岡までの日帰りツアー
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読み聞かせ実演見ては拍手する眠気を払ふその時ばかりは
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児童より原稿依頼丁寧に我が名を記す封筒に入り
1.18
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泣き喚く顔も忘るる心地する我に向けらる笑顔の時は
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我が子なら叱って済ます我侭も預かりておればなだめすかして
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ままごとの料理並べて誕生会代わる代わるのハッピーバースディ
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寝かしつく我の瞼も重くなり支へし腕の崩れて驚く
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「食べ物を好き嫌いなく食べようね」おやつのバナナ残さず食べぬ
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信仰の篤さの成せる技なるやこれほどまでに教会を建て
1.19
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寝ぐずりの嬰児笑ふ声上げて抱き疲れする高い高いに
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忘れたと思っておりし抱き方も身体は知りて自然に手の出る
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受診する兄に付き添ふ弟はおまけを貰ひ甲斐もありけり
1.20
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パソコンのいとも容易く壊れると心配になる君の体験
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雪舞ふと息子から聞く大寒の今日はぬくぬくしていたき午後
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報道のいかがわしさに辟易す芝居の如き対立の構図
1.22
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縦になり横になっても治まらぬ頭痛酷くてパソコンもせず
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回覧板持って行きける隣家にて主亡きこと初めて聞きぬ
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縁側で酒酌み交わすことできず隣家の主は永久に還らず
1.23
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雨の朝中止になればと心では思ふ我が子も会場へ向かふ
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走り込む選手に向けし応援も力を込めて全員にする
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日の射して前日よりは暖かく気候に恵まる駅伝大会
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友の来て土産の牡蠣を食べ尽くし自宅の分まで追加で貰ふ
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注文の商品届きわくわくと白き発泡スチロールの多さ
1.24
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鍋の蓋持ち上げられりぐふぐふと牡蠣蒸す泡の溢れんばかりに
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宿題は『テレビを消して本を読む』息子は絵本我は指南書
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レコードに針落とすその一瞬に息を止めたるかつての如く
1.25
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最新のニュース流るる同じ日に我は彼等のデビュー曲聴く
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ピリピリとノイズの音もいとをかしデジタルに慣れし現代(いま)の耳には
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初稿見る日取も決まりこれからは売り子にならん編集委員
1.26
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高齢の手術にあれば君も尚気がかりなるや我想うのみ
1.27
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買物に連れて行ってと電話あり我が手に持ちたるバッグ見えしや
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アッシーになりたる我は昼食を驕られ今日の仕事終わりぬ
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ネットにて本の注文初めてのコンビニ受け取りワクワクと待つ
1.28
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歌探し記憶を辿り遡る季節も違う花々の歌
1.29
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奥深き短歌の世界教えられ作者の顔見る全国大会
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時間あり百均に寄り買物を済ませてみてもまだ余裕あり
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厄祝い「スーツがいいか」と電話あり「着なくていいさ」と弟に言ふ
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倒れ込む後部座席に父乗せて送り届けり月滲む夜
1.30
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新聞を断わりきれず契約し無駄に払いし3ヶ月分
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大寒波雪になるとの予報見て息子喜び楽しみにする
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メールにて入荷予定を知らされり1週間で手に入るとは
1.31
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共に載る歌は下段に位置すれどいつまで続くや記録更新
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居眠りを心配しつつ参加する名前は知りたる絵本作家の
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一枚に込めし想いを改めて知れば尊い作家の苦労
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君の住む島を描し絵本なり絶版なれば復刻願う
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充実の時の終わりに挙手ありてその場の空気凍れる如し
2.1
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足使うマラソンなればできぬ我題詠ならば完走目指す
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誘われて初めて参加す大会は君の背を見て付いて行くらむ
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風走り路面の雪を蛇行さすハンドル握る我に向かいて
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峠道ひとつ越ゆれば吹く風も雪の白さも異なり強し
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全国の短歌大会見し時に知りたる名前はやはり本人
2.2
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雪の朝通学の子等ポケットに手を入れ歩く風に向かひて
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昼寝する布団の数は減ってゆき床の絨毯徐々に現る
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凍結の山道怖く越えられず注文の本今日は手にせず
2.10
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歌詠めぬ日々の続けばあやふやな記憶も遠き一週間なり
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メルマガも君に任せてままならぬこの身と状況ただ歯がゆくて
2.11
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「これ」と言ひ園児は見せる指先についた粘液テッシュに取りぬ
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親指も人差し指も中指もそれぞれ違う園児の吸いタコ
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午前中いっぱいかかり作業してやっと落ち着く我がパソコンライフ
2.12
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真夜中のファミレスふたり貸切りでケーキセットをペロリ平ぐ
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夜遅く睡眠不足を気になりて午睡したくも眠りはできず
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メルマガの編集作業を久々に行ひやっと日常戻る
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ルーブルの名画の並ぶ各部屋に立ちて眺めん画面を通して
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子ども等と園庭走り凧上げすされど昼寝は共にできずに
2.13
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コンビニもレンタルショップも明々と未だ眠らず真夜中なれど
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二晩の夜更かし続き寝坊して慌てて作る簡単弁当
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呼び出され実家を訪ねおもむろにチョコを渡さる一日早く
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並びたる機械に惑い店員に説明されて理解したふり
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諦めし少し高目のコンポ買いご機嫌になり「早く帰ろう」
2.15
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校正の原稿全部見終へざる時間は切れて次へ廻さん
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本もできいよいよ迫る年度末別れと出会いの季節は巡る
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遊戯室並んで眠る6人の子等の寝息を聴きつつ語る
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霧雨と靄の縁取る山々は一足早く春を思はす
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川岸に新たに造る仕掛け網シロウオを待つ男がふたり
2.16
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並びたる布団の数は倍になりお遊戯室も賑やかになる
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湿気して洗濯物は乾かざり梅雨の日のごと乾燥機回す
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スーパーへ買い物に行き知り合いは第九の練習不参加指摘す
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ネットにて注文の品今日届き卒業式まで急ぎ作らん
2.17
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8歳の誕生日きて気になるはゲーム機貰うか否か
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バイトして電話もできぬ姉のためケーキを前の笑顔を送信
2.18
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入れ過ぎし塩を知れども「煮過ぎた」と庇ってもらう料理教室
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子どもらの日頃の様子とこれからと雑談もする音楽教室
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マニュアルも見ずに試してやっと観る数年前の若きタレント
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亡き人の華麗な姿と演奏に涙と手拍子ひとりコンサート
2.19
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知り人の三人逝きてすれ違う霊柩車あり誰を運ばん
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お小遣い使う用途はソフト買い兄弟ふたり一緒に遊ぶ
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投稿の葉書が戻り驚きて我が名の横に消印のあり
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書き直し2通の葉書持って行きなんとか間に合う今日の日付に
2.20
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小雪舞ふ坂道上りふり向けば遥かに見えし十五の風車
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平戸路を急ぎ走りて会場に入れば既に熱気はあつく
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ゆっくりと飛び込み台に立つ子見て長く思へる25m
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競技中かかりし電話娘より体調悪く困り果てし声
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晩ご飯、酒の肴も用意して風呂も混ぜろと我を切れさす
2.21
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懐かしき歌と映像堪能し初めて一致す名前と曲あり
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旧き歌リクエストする十代の如何な琴線刺激さるるや
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色見本使ひて作るメルマガのイメージ難しやっと決まりぬ
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ゲームしてプラモデル作りテレビ観て我が子と友は満足気なり
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アンケート実施した後半年も経ちて見せられ今とは言へざる
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意見なく帰り支度をする心押しとどめしは医者の説教
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病院へ行けど原因わからぬと告げらる娘の怒りのメール
2.22
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長崎の出張土産は胡麻団子思ひがけなく美味さに驚く
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昼寝せず「マニュキア塗って」と四歳児タオルの刷毛で寝化粧もする
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理容店椅子の高さは最高でその上台置き我が子座わらせ
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散髪の終はりて料金支払えり主人は息子に硬貨握らす
玉響150記念号
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玉響と言ひし我等のメルマガは回を重ねてさにはあらずに
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玉響の心書き留め歌にして残すは少し恥ずかしくもあり
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朝におく霜の深さも日は昇り玉響に輝きし後はかなく消えり
2.23
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作品展会場となる遊戯室今日は舞台で子等は昼寝す
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温まり足が痒いと訴へて泣く子のシモヤケ揉み続けたり
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高校の倍率の出て気になるも何もできざる親てふものは
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役員の決まれば決まる名を聞きて大丈夫かと陰で囁く
2.24
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水疱瘡一巡すれば風邪流行り登園すれどまた休む子等
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一年の成長記録一堂に展示されたる作品展に
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展示物我が子の頃を思ひ出しつい先ごろの事にも感じ
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春の雨濡れてみるにはまだ寒く傘持たざれば小走りに行く
玉響150号記念
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玉響に心に浮かびし歌集め測ってみたし時の長さを
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玉響の儚き想ひ掬へずに作れぬ歌は名作ならん
2.25
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初めてのドイツ語戸惑ひカタカナで書かれし紙を見ながら歌ふ
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不慣れなるドイツ語の歌詞声合わせ第九を歌ふ我等と子ども
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卒業の記念に作るミニチュアのビーズの家具に感謝を込めて
2.26
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久々に朝から行きし職場にて子等は笑顔で我を迎えり
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叱られて涙いっぱい溜めた目で我にひとこと「せんせいのばか」
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ままごともブロック遊びも誘はれてひとつの身なれば不義理にもなり
2.27
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パン買ふと店に行けども棚は空お菓子に変はる今日の昼食
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別室で校正をする開演の10分前まで赤ペン握り
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三年前手探りで始む事業終へ目には見えざる成果残して
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ビデオ観て、第九歌ひて我慢せし涙もこぼれり校長挨拶
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卒業す先輩たちも思ひ出の「とべ紙飛行機」共に歌ひぬ
2.28
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寄贈さる県立図書の児童書に捜しておりし作家の本あり
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生真面目に催促せむと意見する生真面目なほどの図書ボランティア
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ひとりずつ一年間の感想を発表し合う授業参観
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縄跳びで後ろ跳びでき嬉しいと息子の声は明るく響く
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懇談会途中で抜けて会議室編集会議でノルマを課され
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子ども等の作りし本も最終に綴じられるを待つ作業台の上
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逃げ月と言われし如月今日終はり迎へる弥生の予定は如何に
2005.3.1
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幼子の喧嘩の仲裁難しく泣かれてしまふお昼寝のとき
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我が指をずっと絡めて離さずにしゃぶる代りの玩具とする子
 
   
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