あをもじ2004-VI
 夕海
最終訂正日 2004年 12月31日
2004.11.1
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苦言する人の本心見えてきて明かせざることまた増える今日
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文化祭間近になりて慌し仕事にあらずも何故か今年も
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電話越し学生生活語る子はたった三人授業受けおり
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待ちかねし採用試験の結果かな不合格でも速達で来る
11.2
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故郷の歌を歌ひぬ他の人の詠まざる景色脳裏に浮かびて
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撮らざりて心のこりの教会をネットにみつけ思わず感動
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道路よりクラクション鳴る精米所袋下ろして急ぎ手を振る
11.3
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ビーズにも飽きて机を片付けり探しておりしCD見つく
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当日は舞台見ざりし父のためビデオ見ながら説明しおり
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見も知らぬ女の子より来しメール不思議に覚へど息子返事す
11.4
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他の人の感想見つつ学びゆく『走れメロス』は不可思議なりき
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携帯は車に轢かれ壊れぬと公衆電話で娘は語る
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作るより選ぶ時間がより長く迷ふも楽しビーズ教室
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展示物続々運び入れられるかつては我もそこに居りしも
11.5
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レントゲンに写りし我の歯並びは遺体確認し易くありぬ
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「抜きますか」医師は問ひかけ判断を委ねて我は戸惑ひており
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展示する作品見ればどれも皆作りし人の想ひ伝わる
11.6
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新しき福沢諭吉の訪れてホノグラム見す息子ふたりに
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ビーズだけ並べば広きスペースをかつて作りし花々飾る
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並べれば少ししかなき本なれどひとつひとつに愛着もあり
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久しぶり会う人もおり文化祭互いの作品褒めるだけでも
11.7
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展示終へ布を外せば失くしたと思ひし指輪隠れておりぬ
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片付けは同じ顔ぶれ毎年の「人数少ない」愚痴も変はらず
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練習の息子相手に本を読み明日に備えて反応を見る
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依頼さる文章溜まり書くもののまとまらざれば歯の所為にして
11.8
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本抱え行き慣れし部屋訪れて我が子の前で読み聞かせする
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我が問ひに答えし声の大きさに嬉しくなりて声は枯れたり
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講演の聴衆多く会場は手狭になりてまた変更になり
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生き生きと活動しおる人見れば気後れするは自信のなさ故
11.9
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君の住む町になき花泡立ち草嫌われながらも我が目に見慣れし
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病床の友は笑顔で出迎えり失くせし乳房の痛みはあれど
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3週間経ちて店先飾れるはクリスマス色賑やかになり
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手に取りて辞書をめくれば特色のあるやなしやもよくはわからじ
11.10
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国語辞書いくつか並ぶその中にただ一冊の横組みのあり
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秋なれど夏を思わす暖かさ半袖着ても車中は汗ばむ
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鎮痛剤毎日飲めど治まらぬこの痛みの元何処にありや
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ひと月を休みしエアロビ久々に行って汗する仲間とともに
11.11
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ひとりきり幻想世界に浸りきり涙す秋はポルナレフ周期
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同様に受ける授業も顔ぶれの違えば何故か雰囲気変わり
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来週はいよいよ本番見学の人居る前でメロスの仕上げ
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やっと開く口の痛みも軽くなりハンバーガーでも食べたき気分
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先生のお礼に貰ふさつまいも学校農園豊作ならむ
11.13
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台本は届きて迫る行事なり毎年恒例保護者の芝居
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実家でも母のビーズを仕上げれば苦手な細工も上手くなりけり
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一日を車中で過ごす明日のため薬準備す何より先に
11.14
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気の合ひし仲間とともにバスの旅あっという間の3時間過ぐ
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気付かずにビンゴになる我賞品の籠を貰ひしゲーム大会
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去年より500円増す昼食代隣りの席は見ないふりして
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校庭に校舎の中に人溢れ熱気に満ちし校区のおまつり
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車窓より眺めてみれば点在すブルーシートは台風の痕
11.15
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持ち方の一から習う読み聞かせ手遊び覚えど何時するやらん
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学校の行事続きて今週もまた忙しく日曜もなし
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新人も入りて初の顔合わせ親も演じるいつもの寸劇
11.16
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ふたりきり囲碁するはずが招かざる客は訪れ答えも返さず
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100均で見つけしケースにビーズ入れ増える色見て幸せになる
11.17
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一日中研究授業に付き合ひし我等に欲しき教員免許
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大勢の先生並ぶ教室に七人の母緊張し入る
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風邪ひくと娘のメールは語りおり元担任と噂したる後
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帰らむと思へど時期を逸すればドアは閉められ出るに出られず
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帰宅して二時間後行く小学校次のイベント控えておれば
11.18
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常にては気丈なる人声震へ挨拶すれば我も涙す
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遠くより歩む姿の鮮やかに瞼に残り信じ難くて
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通夜の席人の少なさ寂しくてお茶をよばれてしばし語りぬ
11.19
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郡内の母親委員の集まりて情報交換活発に出る
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各校の特色ありて参考にメモ取りながら我が校誇る
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人権のアニメ映画にうるうると涙は出でて暗き中拭く
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発表会間もなくあれば練習に熱も入りてアドリブ飛び交ふ
11.20
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一昨日に続きて喪服に袖通し気は重く行く同じ会場
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明日だけは小学生の格好するやっと見つけし赤きランドセル
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友達のプレゼントにとペンダント探して走る息子のために
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冴え冴えと我を照らせる半月のもう片方は何処にありや
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生放送短歌作りてメールする画面に流れし文字みて照れぬ
11.21
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子ども等の出し物見ても我が出番後に控えて気持ちそぞろに
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舞台出て台詞も飛びしそれぞれにアドリブ重ねやっと終わりぬ
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コーヒーの味見もせずに売りながら濃ひか薄ひか運に任せて
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打ち上げの誘ひもあれど気の乗らず「微妙」と言ひて家に戻しぬ
11.22
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星型のイルミネーション庭に付くひと月以上のクリスマス気分
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月曜に休みし我が子友達を呼んで「遅い」とふくれて待ちぬ
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耳鼻科でも喘息薬は処方すももしもの時は対処できぬと
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小雪と暦の上は書かれしもインディアンサマー陽は暖く
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山の端にオレンジソースを流すごとおいしそうなり今日の夕陽は
11.23
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要るならば取りにおいでと誘われて我も芋掘り少し手伝う
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ひととせの前に詠みたる歌思ひ作りてみるや魔女の弁当
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家を出る前に気付きしメール見てやっと返事すいつもの時間
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休日の夜に集ひし会議室役員選考SOSあり
11.24
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君なくて日がな一日ビーズ編み我が指の皮膚ぼろぼろになり
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不具合の多さを気にし週末は墓参りに行く友は決めたり
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貰ひたる芋で作りしデザートはケンピにならず食べ残されぬ
11.25
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点検と思ひて行きし歯科医院削らるる音に身を縮む我
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昼食は友とふたりでスパゲッティ満腹の上にイカまで貰ふ
11.26
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さつまいもこんがり焼かれ洋風に紅茶の似合うスイートポテト
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出席者少なくてもある会議なり我とは違ひ慣れたる人か
11.27
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目が覚めて鼻水止まらず灯油入れ朝の4時からビーズ編む我
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泳ぎおるものと思ひし我が息子2kmの道をひとり歩き来る
11.28
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乗り込みし顔ぶれ増えて満員のマイクロバスは隣町まで
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酒蔵は三百年の昔より今も変わらず息づいており
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堂々と二階まで立つ一本の大黒柱は屋台を守る
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殿様が潜りし門を通り抜け本陣屋敷ひっそりとあり
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思うより小ぢんまりしたお屋敷は歴史を納め我等に語る
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丸々と太りし池の鯉を見て我が名を付けんと友は言いたり
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三角の墓石初めて目にすれどその子の名前も奇抜で驚く
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寒き中滝見に行きて階段を上れば紅葉の見事さ疲れも忘る
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白岳に子どもと来しは何時やらん思ひ出さねど今日は大勢
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今朝作る大学芋を振る舞いて女性に好評食後のデザート
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預かりし子どもの様子を聞く電話「元気だった」とのみ伝えたり
11.29
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探訪で歩き回りて足痛し参加者数人同じこと言ふ
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中学の試験になりて作業中息子寄り来て連れて帰りぬ
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数日はかかると思ひし棚整理一日で済む人海戦術
11.30
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別れたりくっついたりと忙しく相手変われり町村合併
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買わないと決めて行っても手が出てる100円コーナー引き寄せられて
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今日過ぎて暦めくれば一枚になりていよいよ師走が現る
2004.12.1
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ブリッジのことば通りに橋かかる抜かれし歯の跡そのままにして
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見慣れたる小高き丘の木々切られ切り株のみが墓標のごとく
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立ち寄りし実家の前に横たわる木は乾燥し木彫になる
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月隠す薄雲途切れ覗き見ゆ星に紛れて飛行機は消ゆ
12.2
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本棚の整理しときに校長に会ひて選考進むを知れり
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暖かき部屋でそれぞれビーズ編む初めて作るブローチ楽し
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温泉のプールより出て真っ先にアイスの自販機駆け寄る息子
12.3
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山寺に集ひて読み合ふ絵本なり『やさしいあくま』は優しく切なし
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持ち寄りて豪華な昼食作りたり旅館の如き寺の厨で
12.4
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それからの天気気にしてハンドルを持とうとする頃雫は落ちて
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ひとりずつ荷物手にして坂道を上がれば見慣れし緑の家に近づく
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雑然と散らかる部屋に忙しき娘の現在(いま)を見た気になりぬ
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ドア開けて中に入れば観客のふたりしかなく不安を覚ゆ
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時間きてやっと埋まりし席を見て舞台に目をやる余裕もできて
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若者の熱気溢れる芝居見て充実する日々確認のでき
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作者名娘の名を見て芝居見てやっぱりなと思う親ばかひとり
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いつ頃か大雨になる天候を恨めど止める術なく帰る
12.5
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ゴールする選手の息の弾みしを間近に感じ拍手送りぬ
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大風に負けじと走る子ども等の頬の赤さを誉めてあげたし
12.6
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週明けに投稿載りて安堵する歌の善し悪し目を閉じて見る
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図書整理終えて寿司屋の昼食は一足早い忘年会かな
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遠路より来たりて見せる読み聞かせ工夫の出し物感心するのみ
12.7
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「肩揉んで」中学生の息子言ひ呆れながらも力込めたり
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「扇風機箱に入れて」と頼まれて四方山話の聞き手にもなり
12.8
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公演の花代の処理困ったと娘は語る代表として
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子ども等の真剣なる眼を感じつつ役になりきる読み聞かせかな
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人権を学ぶ児童と体育館に集ひて共に講話を聴きをり
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集会は終はりてやっと気も楽にコーヒーいただく職員室で
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新聞の番組欄を眺むれば徐々に増えをり年末特集
12.9
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子ども等と二列に並び歩みつつ冬を探して町内散策
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朝露に濡れし芝生を踏みしめて先生囲み外野を回る
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客席の階段割れたる裂け目から紫の花ひっそりと咲く
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小春日に誘はれし子の数人は波打ち際の砂に埋まりて
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町中を歩みし人と子ども等は元気な声で挨拶交はす
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冬枯れの木々を背にしてひっそりとダムは待ちをり我等の到着
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細き川流るる水のダムになる今更ながらにとても思へず
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子ども等は遠足気分でウキウキと列の乱れもかまわずはしゃぐ
12.10
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フレンチと非行防止としゃべり場と人ばかりに会ふ寝ていたき日に
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膝交へお茶飲みながらの座談会進路についてメインになりし
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少女等のコミック手にし中見れば驚く内容描かれてあり
12.11
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月曜の「さわやか作戦」準備する今日も通ひし文化会館
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我が葉書買ってもおらぬその前に息子は作りし年賀状かな
12.12
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幼子に折り紙教えるお年寄りツリーも飾りて気持ち華やぐ
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役員の間にありしゴタゴタもひととき忘れ楽しく集う
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来年はよろしく頼むと言われても我ひとりにて行事はできず
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裏山の枯葉は落ちて腐葉土の一歩手前で我は捨ており
12.13
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走行中いきなり止めらる運転者お守り渡されやっと笑顔に
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参観日学校へ急ぐ母たちを止めて渡しぬふくろう人形
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真っ黄色帽子とジャンパー目立ちおり交通安全母の会かな
『佐世保を詠もう』
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天神の山の後者に佇みて沖行く船を目で追ひし日々
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我が頭上電車一輌走り過ぐ雑踏の中独り見上げぬ
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幼き日スケッチに描くバラ園を我が子の手をとり今は歩まん
12.14
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駐車場車の中に居る我に「何しているの?」友は声かけ
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連れて行きし買物済みて「これ食べて」アッシーおばちゃん我に気遣ふ
12.15
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師走とは思へぬほどの暖かさ半袖になりエアロビしをり
12.16
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閉ざされしカーテン暗き病院のドアだけ開きて靴は見へざり
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クリスマス帰れぬと言ふ娘なりただひたすらに眠りたいとか
12.17
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生徒等を共に学びし人権の感想言わされ喉は乾きて
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何気なく歌いし歌もこれからは歌いずらかり人権侵害
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レクレーションするときさえもセクハラに気をつけねばと講師も嘆く
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人々の前に座りて議長する見知りし人の多くて助かり
12.19
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友達のプレゼントにとストラップ息子と共にビーズで作る
生月紀行
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赤と青ふたつの橋を渡り継ぎ車走らす生月の島
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回りおる風車を見ては我が町の未だ止まりし姿をだぶらす
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曇天の空と同じの海の上ミズイカ漁は昼間に行う
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正面に親子の鯨出迎えし島の館は海を見ており
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再現す座敷の奥の納戸神オラショは聞こへ祈りは続く
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勇魚取り今は見られずジオラマに昔の活気はストップモーション
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観音の横に廻れば線香の匂い漂ひ中で手合わす
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路地の中うっかり入れば道細く昔の漁村をそのまま残す
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ポツポツとフロントガラスに雨落ちて急ぎ帰れどひどくはならず
12.20
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精米所車を停めて待つ時間もみがら一粒空から舞い落ち
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電話する息子の相手の母と我様子語りて互いに笑ふ
12.21
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できないと思う朝にも時間取り寄せ合う肌の温もり感じ
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繁華街連れ立ち歩く人々の顔も華やぐクリスマス前
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ビーズ屋に寄れど様々目移りし時間かかりて他には行けず
12.23
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ミスをして席へ戻る子幾人か納得できずやピアノ発表
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持ち寄りしプレゼント手に円になり曲に合はせる交換の時
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2週間ぶりに揃ひて読み聞かせ次は何処へと友は言ひけり
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子ども等と公民館へ集ひけるお年寄りにもプレゼントのあり
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本作りスタッフ間のズレを聞く全ての意見取り上げられず
12.24
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こっそりとサンタになりて買物をしては隠せり明朝までは
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クリームを泡立ててもすぐ疲れおる息子とふたりケーキ飾りて
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サンタさんに目印になるツリーかな電球点ける念の為にと
12.25
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サンタさんゲームソフトをくれたけど同時に喧嘩の種にもなったよ
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雨寒き日がな一日ゲームする子どもを横目に文を書く我
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ひととせの残り少なくなるものの年越す準備何も進まず
12.26
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娘よりトイレットペーパー箱ティシュ頼む電話に寄り道しおり
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部屋までの階段上る気力なく路地に停車し離合も危うし
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久しぶり揃ひし子等と食事していつもに増して賑やかになり
12.28
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新しき仕事の日程決まれども余りに少なく拍子抜けする
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忘れたる税金納むために行く役場の玄関友の拭きをり
12.29
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年末になると毎年来年は早く書こうと思う年賀状
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大掃除担当の箇所一番に綺麗になると言ふ我が子
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冬らしく寒くなりける今日こそが掃除のできる貴重な一日
12.30
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降る雨の冷たさ感じ草を取る手も速くなる墓参りかな
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コンビニで買ひ物するもお互ひに相手が持つと思ひて忘れ
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久々に海岸走る平戸島埋めたてられて砂浜寂し
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空と海の境目もなく灰色の世界を繋ぐ雨のカーテン
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お歳暮の味見をせんと初めてのふぐ鍋食べる贅沢な夜
12.31
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子ども等と枯葉集めて裏庭の掃除すれども風の邪魔する
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美容院行く暇のなく結局は家で髪染め娘手伝ふ
 
   
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