あをもじ2004-IV
 by  夕海
最終訂正日04年8月31日
2004.7.1
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障害の子を持つ母の声聞いて読む気になれど不安もありて
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一年の時が過ぐとも癒えぬ傷ふり返りても痛み覚ゆる
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長坂を日傘さしつつ上りては見上げし空に雲ひとつなし
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残りあと一月になる仕事終わりたくあり寂しくもあり
7.2
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少しだけ余裕のできた紙芝居リアクション見へ笑顔にもなり
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給食中テレビに映りし母を見て我子は少し恥ずかしきかな
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眠たさを堪へて向かふ画面なり友の来たりて同じこと言ふ
7.3
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七人の発表聞きてそれぞれの想ひ伝はり感心しをり
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父の日は仏壇の前手料理と手紙供えしひとり娘や
7.4
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大雨の里山歩き虫探す子等は喜び親はしぶしぶ
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一両の電車に乗り込み9分の小さき旅を車窓に映して
4.5
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初日より少し慣れたり自らの気持ちを語る余裕のできぬ
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朝の本25分で読み終へて職場に急ぐ清掃当番
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暑き日に歌の小道は陰作り日傘持たざる我に優しき
7.6
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読み聞かせ終へて向かひし講演会一日がかりの学社融合
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眠き目を擦りて座る体育館汗かきながらなんとか終はりぬ
7.7
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読み聞かせやっと終りてホッとする間もなく届く「来学期もあり」
7.8
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同僚とふたりで食すおまんじゅう職場の別室こっそり隠れ
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急に晴れ明るくなりし窓の外雨のカーテン開ける如くに
7.9
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会議あり吾子はひとりテレビ見る校長室のソファの上で
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去年にて終はりと思ひし南Pの案内見ては懐かしくなり
7.10
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新たなる依頼のありて地区にても読み聞かせする機会の増えり
7.11
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初めての4人で迎ゆ誕生日息子を祝ふ14回目
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叱られて泣きつつ食べる次男なりしょっぱき味のチョコレートケーキ
7.12
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眠き目をこすりつつ打つキーボード文字追ひながら船も漕ぐらむ
7.13
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仕事終へ急いで帰る今日もまた寄り合ひありて時は足らざり
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郵便を出したる後に持ち帰る求人票は40歳以下
7.14
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エアロビの会場の窓曇るほど熱気はこもり酸素不足や
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忙しさ嵩じて気持ちすれ違ひ気まずくなりし同僚との仲
7.15
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金銭の絡めば醜くき有様を人は見せると目の当たりにし
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土砂降りの雨を潜りて帰り行き山を越ゆれば道は乾けり
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我が歌を知りたる人の現れり思ひがけなく身近に居りぬ
7.16
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これからの予定を聞きて休日の埋まりていけり溜息と共に
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クーラーの入る部屋なり集会は偉人に囲まれ音楽室で
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「年上よね」訊かれて見合はす顔と顔実は下なり笑うしかなし
7.17
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つれづれに携帯サイトのおみくじを引いてみたれば凶の出でり
7.18
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慣れぬ街初めて行きしモールにて幾度も迷ひ子等に笑はる
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差し入れはデパ地下にある洋菓子で我等の分は別に買ひをり
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久しぶり会ひし娘は金髪の溌剌とした女子大生かな
5.19
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木箱開く中はワインと思ひしがオリーブオイルのかしこまりをり
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学校で育てしトマトの鉢植ゑは日に照らされて息も絶え絶え
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久々にふたり載りたる投稿の欄を何度も読み返す今日
7.20
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就業後買い物に行き選びしは何度目かなる母の誕生日
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蝉時雨何処まで行けどついてきし炎天下にも止むこともなく
7.21
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グランドの照明消へて虫たちは窓にびっしりエアロビの部屋
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うなぎ食べエアロビに行き汗かきし二切れ分のカロリー燃やさむ
7.22
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集ひしは教科書選ぶためなれど人との出遭いまた愉しけり
7.23
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気の乗らずしぶしぶ行きし講座なれど作りし押し花自慢げに見す
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あとわずか一週間に迫りたる期限は切れり五ヶ月過ぎて
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同僚は次々帰る夏休み家庭訪問プール当番
7.24
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練習を終へて帰りし車からオレンジ色の三日月の見ゆ
7.25
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暑過ぎて表に出るもままならず日の暮れて後行きし買ひ物
7.26
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選者より歌集届きて驚きぬ投稿載らざる月曜の日に
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高熱と言って電話の向こう側明日は試験と慌てておりし
7.27
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ひとすじの汗は流るる背中かな湯呑洗ひし三十個分
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夕方の暑さに負けて車乗る郵便局へのわずかな道のり
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誘はれて泳ぎに行ける長男は立派なミナ採る生月の海
7.28
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常日頃怠けておりし掃除をば朝からすなり家庭訪問
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学校で母への要望「帰宅時間もっと早く」と我子書きをり
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掃除して職場に着けば疲れ果て思わず買ひし栄養ドリンク
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あと二日残して別る同僚とひと足先に別れのことば
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上役の相談するは事務分掌我等の後にバイト入らず
7.29
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予定では最後にならむ歌の道ゆっくり歩けず味はいもせず
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夕陽沈む島を眺めつ談笑すあと一日の同僚等になり
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ビール飲み語り合ひたるひとときの楽しさの中寂しくもあり
7.30
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やり遺す仕事なきやと心配になりてなかなか去り難き席
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思はざる餞別貰ひ恐縮す牛蒡餅では足りぬものかも
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最後まで落ち着かざるもこの後は心の余裕少しいでしか
7.31
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二月(ふたつき)も練習しのち配役を失くせし友は肩を落しぬ
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本番の間近に迫り練習に熱は入りて尚遅くなり
2004.8.1
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職失くしゆっくりせむと思ふれど予定は多し葉月の日々も
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朝九時に始めし裁縫ほか弁のおにぎり食べて再び続く
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明日までは希望繋ぎてレッスンに行くとぞ友は切に語りぬ
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材料とミシン持ち寄り協力し作れる衣装本番を待つ
8.2
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嬉しくも面映くもあり我が歌の初めて載りし上段5席
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九時になりメール届きて「寂しいね」バイト仲間としばし語りぬ
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数年の時を隔てて集ひしは名は変はらずも顔ぶれ違ひ
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久々に入りしかつての職場かな畳の匂ひ真新しくなり
                           
8.3
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夏の朝テントの下の影動き我も椅子持ち一緒に動きぬ
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暑き中プールを渡る風吹きて一瞬だけの涼しさ運ぶ
8.4
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午後からの家庭訪問お茶菓子は残りて我子とふたりで平らぐ
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遠雷の遥かに聞こゆ夕方も雨は降らざり蝉の声かな
8.5
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二年ぶり会いし講師は変わらずも姓の変わると我に語れり
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日に数度同じ場所まで往復しタイムカードの要るかと思ふ 
8.6
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七夕の飾りを教ふお年寄り子等も笑顔で和やかに集ふ
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我が出番足の震えの見へぬかと本読むことに集中できず
8.7
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友は来ず土曜の夜の練習に言葉はなくて電話もできず
8.8
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右手には菜箸持ちて片方のビール飲みつつ焼きソバ混ぜり
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おにぎりの大きさ違ふそれぞれに母の気持ちの込められてをり
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炎天下バーベキュー終へ帰り着き午後はひたすら身体冷やしぬ
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電話あり三日泣きしと友は言ひ出演断念我に告げたり
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赤緑黄色の花火を手に持ちてはしゃぐ我等に遠き稲妻
8.9
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君の名を先頭に見る嬉しさに念願叶ひ喜び送る
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夕暮れに入道雲はバラ色に染まりて東の山に沈みぬ
8.10
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真夏日の加工所に降るうろこ雪汗ばむ肌にキラキラ光る
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いりこ積む台車押しつつ見上げれば風に吹かれていりこ雪舞ふ
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チケットを譲って欲しきと訪ね来し気恥ずかしさと嬉しさ覚ゆ
8.11
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メルマガは海を渡ると教えられアフリカの地よりメール届きぬ
8.12
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思はざる講演会で歌習ひ眠気も飛びぬ晶子白秋
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真四角のビルの隙間の向こう側切り取られたり教会の塔
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夏の夜レジャーシートを敷き見上ぐ流るる星の訪れを待つ
8.13
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レジを待つ頭上に響く雷は電車の音や駅ビルの中
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県外のナンバー多く往き交ひし上方ことばも店を賑はす
8.14
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三箇所の墓地を巡りて花供へ今年の盆も半日で済み
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前回は何時会ひしやも忘るほど互ひに変はる姿に驚く
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今日もまた実家へ行けば様々な野菜に化けしお中元かな
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起きるまで数回かかる息子なり真夜中に起き開会式見る
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炎天下焼けた墓石水流し喉も潤う戻り来し人
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ほおずきの紅き袋の点々と何処にもありお盆の墓所は
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突然に独り暮らしの伯母は来て痩せたる姿寂しき日々の
8.15
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不揃ひの形さまざま手作りの餃子は美味し子等と包みて
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雨降りは乾きし土も柔らかに固きトマトも赤く熟すや
8.16
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待ち合はせ出番の来るまで3時間残暑の陽射し海を照らして
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ミュージカル衣裳を着けてスタンバイほうきを貸そうとからかわれつつ
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5チーム中3位の成績賞金は五千円也打ち上げ費用
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エプロンをしたまま漕ぎてブイ回りオール握りし掌痛む
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補導には回る必要なくなれど夏祭りの夜チケット売りぬ
8.17
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慣れぬ街写真の建物捜さむと車走らせ時を無駄にす
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やっと着き喜ぶものと思へども怖がる我が子中へ入らず
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ポケモンのプラネタリウムに写りしを一番喜び甲斐もなきかな
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自分へのお土産買ふと選びしは水晶輝くキーホルダー
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土砂降りの駐車場から出むとして機械の壊れ遮断機上がらず
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右手のみずぶ濡れになる車中にてクーラーかけてクシャミひとつす
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黒髪に戻さず娘は金髪のままで現れ我は苦笑し
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お土産はパーキングエリア立ち寄りて小さきからすみ見つけ求めし
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きもだめしお化け屋敷へ行かずとも金髪のまま帰省すること
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チューハイを飲みし娘と三人でからすみ肴に親子初めて
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菓子持ちて訪ねし孫の元気さが祖父母にとりては何より孝行
8.18
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台風の来るとの予報に片付けて初めて行きしクリーンセンター
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思ふより設備綺麗に整ひて数人の人作業してをり
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小説は借りずにわずか一冊のビーズ手芸の解説書のみ
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図書館は学習室も満室で終はりに近づく夏休みかな
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工作の本を借りむと図書館を捜せど残り数冊しかなし
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頭下げし娘に驚き声上げる一目だけではわからざりけむ
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エアロビで未だに汗は流れしもひと月前とは違ひのありて
8.19
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明け方の騒々しさに目を覚まし台風来しを耳で聴ひたり
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バラバラになりしよしずに台風の威力の大きさ見せつけられし
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PCでチャットする子を横に見て黙々と編むビーズの指輪
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ログインのできぬ娘にPCを盗られて我は順番待ちす
8.20
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どこにでも居ると信じて疑はぬクマゼミの声我には馴染みの
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イワシ選る指に刺さりしトゲありて安全ピンは必需品なり
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嫁姑神の話もたまにあり製造場にて世間勉強
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台風の去りし後には海の中変はるものかは期待して待つ
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南風(はえ)当りシャッター壊れし作業場の巨人の指で折りたる如し
8.21
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箱の中満杯になるいりこかな8キロ100個量り重ねる
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腰さすり6段積めば壁のでき静に待てり出荷の朝(あした)
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衣裳着け舞台に立てばさながらに本番近き緊張感あり
8.22
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自転車の外れしチェーンを直さむと父娘ふたりで早起きす朝
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祖母からの食料品と自転車を積み込み発ちぬアパートへの道
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眠たさに立ち寄るコンビニ子ども等と眠気覚ましにドリンク剤買ふ
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手分けして荷物を持ちて坂道を十歩あるけば休みつつ行く
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乗り慣れぬバスを待てども行く先の決まらず数台見送る我等
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募金請ふ声聞き流し足早に立ち去りて見る黄色のTシャツ
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陸橋を初めて渡るとはしゃぎをる田舎育ちの我が息子なり
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帰り道買い物に寄るスーパーで急な停電驚かされぬ
8.23
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雨の降りありや無しやの気になりて空を見上げて気をもみており
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祭りの日歌の小道は賑やかに夜店と人で違ふ顔なり
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燈篭の灯りと花火の競演に花を添へたり獅子舞太鼓
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突然の雨に降られて逃げ込みし灯篭タワーを内より見上ぐ
8.24
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友達の家で遊ぶと言ひて出る息子は戻りまた児童館
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朝夕は少し涼しき風あれど日中の暑さ未だ夏なり
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娘より模様替えすとメール来て「面白き」と書く部屋は如何にや
8.25
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ふと見ると我が歌の載る新聞はじゃがいもの箱に被せてありぬ
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ひとりでは行きにくくあり中学校友を誘ひてチケット販売
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児童館宿題する子の傍らで我が子はしゃいで卓球しをり
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担任のベトナム土産に鼻つまみ強烈なりしドリアンの匂い
8.26
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何日もかかりて編みし指輪かなやっとできても糸の切れたり
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教科書で習ひし歴史覆す証拠となるやかのオーパーツ
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大きめの瓜かと紛ふすいかかな割って食べれば甘き味なり
8.27
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南より徐々に黒雲流れ来て湿気を帯びた髪貼りつかせ
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何軒も玩具屋巡り宿題を探し回れど全て売り切れ
8.28
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限られた時間の中で買ひ物に行きて見つけし工作キット
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1時から10時までする練習で初めてわかる芝居の全様
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9時間も練習した後写真撮る始める前にぞ撮って欲しかり
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台風の接近するも中学の奉仕作業は行われるや
8.29
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連絡のなくて草刈りあるものと中学校はチェーンで閉ざされ
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親子して喧嘩しながら完成すペットボトルの貯金箱かな
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台風で何することもできまじとビーズのパーツ選ぶ我なり
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雲二層風の速さの異なりて夕焼けの下墨の如くに
8.30
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「黒髪に戻したり」てふメールきて襟足写る証拠写真
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行儀よく並びし漁船ゆらゆらと波に揺られし台風の前
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雨風のだんだんひどく叩きつけ慌てて閉めり雨戸の暗さ
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リモコンを持ちてあれこれ見るテレビコースの変はるわけはなけれど
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直撃は免るるとも被害あり君の住む街停電とあり
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文書きてやっと納めし我が歌集残すは新たに編むもののみに
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電話ありストップ求むチケットの売れ過ぎと聞き嬉しき誤算
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友人は台風の中働きて飛び行くシャッター拾ひに行けリ
8.31
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算数の宿題みてはムキになりつい大声で子ども泣かせり
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中学の教科書読みて感想を親も書かさる「走れメロス」を
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熱低にならず北行く台風は北海道の暑さを教ふ
 
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