あをもじ2004-III


夕海


最終訂正日04年6月30日






    2004.5.1

  1. 面接に行くてふ娘の所持金は106円にて二日もてるや

    5.2

  2. 連休は家でのんびり身を休め元気になりてまた頑張らむ

  3. ファミレスに行けば馴染みの顔多し注文内容気持ち見栄張る

  4. せっかくの外食なれど体調の不安消えねば雑炊のみ食べ

    5.3

  5. 高台の風の強さにこいのぼり千切れんばかりに泳ぎておれり

  6. 雨の中母娘三人連れ立ちてわざわざ行きし百円ショップ

  7. 勉強はしたくあれども上限の決まりてできず部活に精出す

  8. 様変わりしたる車窓の景色見て父母は語れるかつての思ひ出

  9. 雨雲の低く下がりて隠されし稲佐の山は霧に沈むや

    5.4

  10. 雨続きイベント会場変更で遊び易けり山の公園

  11. 花も枯れ売店なけれど晴れ間出て遊具に響く子どもの歓声

    5.5

  12. 連休の最後にやっと五月晴れ気分も清し庭の草抜く

  13. お手製のサンバイザーは厚紙でぐるりと回るホッチキスの芯

  14. 体調も元通りかと唐揚げを食べて湯船で蕁麻疹かな

    5.6

  15. 連休も明けて一日仕事する明日終るまでカウントダウン

  16. 宛先に吾子の名前書き記す文は書かずに忘れ物のみ

    5.7

  17. 少年のひとりもたるる石垣の前を通れず回り道かな

  18. 紫のサボテンの花一斉に咲きて飾りし閉じたる店先

    5.8

  19. 玉響に短き文を書き始む君との日々を辿るも楽し

  20. 引継ぎし黄色のたすきと帽子あり書類も届き会計係り

  21. 買い物に行かずのんびり横になり午睡してをり小雨降る午後

    5.9

  22. 忘れずに投稿の歌書かむとし古年賀状少し気になり

  23. 母の日にプレゼント持ち訪へばうらやましげな父に笑ひぬ

  24. 吾子より何も送らずごめんねと電話でもらう「ありがとう」の声

  25. 言う程に雨は降らずも曇空気分優れず家にて過ごす

    5.10

  26. ふたりして身体の不調を述べ合ひて更年期かと互ひに慰む

  27. 投稿の歌の載らざる事に慣れ悔しくもなき自分にも慣れ

    5.11

  28. 我が名なき新聞斜めに眺むれば初めて見つく我が子の名前

  29. 草の実の弾けし感触楽しみて小さきひと粒指先に付く

  30. 歩みつつ君からの歌読み返し汗ばむ日差し我にも注ぎぬ

  31. 坂上がる老女は三歩進みてはひと休みして彼方を見をり

    5.12

  32. 鵜のみにす天気予報に半袖を着れば常より寒くある午後

    5.13

  33. 本読まぬ日々は長けりかつてには考へられぬ事にはあれど

  34. うっすらと雲残りたる西の空顔出してすぐ日は落ちむとす

  35. 哀しげに声を震はし犬はなく飼い主ひとり出掛けし姿に

    5.14

  36. またひとつ予定消へるを喜べど次の予定の新たに加はる

  37. 会計の初仕事なり新しき予算案読み食費を支払ふ

    5.15

  38. 山ひとつ超ゑんと走る目の前に滲みしライト霧の中より

    5.16

  39. 珍しき菓子を手にして父来たりわざわざ取り寄せ食べさせたきと

  40. 雲と霧境目のなき曇天の木々を覆いて緑隠せり

  41. 春の日に花のトンネル作りたる桜今では緑のドームや

    5.17

  42. 新聞に講演会の知らせあり吾子に指令のメール出したり

    5.18

  43. 外見れば少し霞のかかれども歩みて汗す昼休みのとき

  44. 路地裏の二階から降る大音量破れし障子のせいにはあらじ

  45. レタスの葉栄ゑて茎も高く伸び花屋の自宅売れ残りしか

  46. 帰り道見上げし空に薄雲は白く輝くさざなみのごと

    5.19

  47. 崩れたる石垣の中さかさまに雨を待ちおりかたつむりかな

    5.20

  48. 峠越ゑ家路に着けば雲間より顔を覗かすお日様しばし

  49. 指令だし吾子行かせし講演会「よかった」と聞き我も嬉しき

  50. 友人に貰ひし無添加ヨーグルト明日の今頃楽しみに待つ

    5.21

  51. 我もまた資料作りにコピー機と悪戦苦闘す昼までのとき

  52. てのひらを開くが如ききのこ生ゆたまたま見上ぐ木の幹の裏

  53. ずっしりと重くなりたるヨーグルトやっと冷やされ食べ頃を待つ

  54. 初めてのバイトは夜の居酒屋と少し驚く娘のメールに

  55. 週末は常に会議のある故に忙しきかな昼間も夜も

    5.22

  56. 玉響の記念の文を書き終えて君に送りて少し安堵す

  57. スーパーで見切り品のセールあり我が子の好物急いで買ひぬ

  58. 喧嘩して帰る途中の我が子かなそれでもまた行くおやつを持ちて

    2.23

  59. ほの暗きテントの中にひとときの別世界ありサーカス公演

  60. 常人の想像超ゆる芸続き日々の努力の厳しさ思ふ

  61. サーカスは幾度か見しも華やかな孔雀の曲芸初めて見たり

  62. 関節の無きが如くに折る身をば自在に操るテーブルの上

  63. 長きこと好みし姉の嘆くらむ弟初めて刈り上げし髪

    「玉響50号」に寄せて

  64. ただ詠い積み重ねきて50号振り返りてはよくぞできたり

  65. メルマガを発行すとは思わざる日々も今とありては昔に感ず

  66. ひとりでは思ひもよらぬことなりて君の教えのありたればこそ

  67. 日々の歌日記代りに詠むことの日課となりてメルマガに編む

  68. 我の歌読む人のおる不思議さに未だ恥ずかし拙くあれば

  69. 五十できこののち幾つできるかは知り得ぬものの歩み止めざり

  70. 玉響の編集会議も恒例になりてサイクル決まる七日間

    2.24

  71. 玉響は五十の節目迎へたり新たに踏み出す一歩ずつでも

  72. 白々と切られし痕もまざまざとキノコ宿りし木は既に無く

  73. 遺りたる根よりしみ出ず湧き水は切られし古木の苦しみよりか

  74. 車停め乗らむとすればガラス越し勝手に座りて猫の振り向く

    5.25

  75. 昼になり弁当なきと気付きたる慌てて買ひぬざるそば弁当

  76. 欄干で蛍捜せば声のして「あっちで見たよ」我に教へり

  77. 早々と田植えの終へしその中に荒れたるままの草地寂しき

    5.26

  78. 店の隅迷ひしつばめははばたきぬガラスの窓に翼叩きて

    5.27

  79. 常よりも早き時間に歩く道切られし幹を携帯に撮る

  80. 夕刻の会議に行けばクーラーの点きて後には寒さ覚へて

    5.28

  81. 半月を避けて飛び去る飛行機は五月の空を滑る如くに

  82. サッシ戸の両端少し開けし店紛れ込みたるつばめの出口に

    5.29

  83. ミュージカル軽く思へど成り行きで参加するには声出ず焦る

  84. 9月まで毎週土曜はレッスンに追はるる日々の今日は始まり

    5.30

  85. 雨の日に本を読みてもすぐ終り長き一日漫然と過ぐ

  86. じめじめと湿気上りて霧となり山の麓も白く沈みぬ

    5.31

  87. 雨降りて川の音のみ高き夜は蛙の声もかき消されてをり

  88. 梅雨入りは常より早く始まりて今年は蛍の飛ぶも見ずまま

    2004.6.1

  89. 初めての試合見に行く体育館中に入りて熱気に汗ばむ

  90. 昼休みちょうど我が子の試合あり負けはすれども別人のごと

  91. 雨降りて乾く間もなきユニフォーム停めし車の中で干す友

  92. 問題は母親にありと言ひ切られ他人事とは思へずうなだる

  93. 被害者も加害者もまだ幼くて苦き思ひのこみ上げるのみ

    6.2

  94. 夕焼けのまだらに残る明るさに車走らすエアロビ会場

  95. 汗かきし身体に風の心地よくにじみし月も我を照らさむ

    6.3

  96. 夏の陽に遂にさしたる日傘かなくるくる回る影も濃くあり

  97. 土手に咲く紫苑の花もうっすらと暑さやわらぐ風のそよぎに

    6.4

  98. 夕方の布巾洗ひのお湯出せば暑さに負けて水で濯ぎぬ

  99. 体調の悪く病院行きたしと言ひし我が子の少し気になる

    6.5

  100. いきなりの舞台稽古に3時間声は枯れたりこの後不安

    6.6

  101. 枝も降り虫も一緒に落ちて来む年に一度の枝払ひの日

  102. 珍しと喜ぶ子どもに驚きぬ初めて見しかかまきりの卵

    6.7

  103. 高校の宣伝ポスター貼られたり笑顔の吾子元彼の横

  104. 若き頃共に働く人と会ひ年をとりしはお互いならむ

  105. 携帯で撮りしポスター送りたる過去の遺物と娘怒れり

    6.8

  106. 小雨降る午後の校庭泥にまみれて芋挿しをする

  107. おかしさに笑ふわけではなけれども心浮かれて笑ひの出をり

    6.9

  108. 夕方になれば下向くエンゼルのトランンペットは音もなく散る

    6.10

  109. 師も親も共に悩めるこの頃は子どもの心掴めずあれば

    6.11

  110. ふうわりと舞ひ下りて来したんぽぽの綿毛は風の動きを教へ

  111. 知らぬ間に刈り取られたる土手の花他人(ひと)にはただの雑草なりせば

    6.13

  112. 朝借りし本も読み終へ夕方に3冊目となる同じ作家を

  113. 班長の配りものして「ご苦労さん」言はれてみても虚ろに響く

  114. 中休み梅雨とは思へぬ空見上げ紫陽花乾き露を待ちをる

    6.14

  115. 初めての独り暮らしの誕生日明日は仲間と共に祝ふと

    6.15

  116. 犬小屋の少なき影に身を縮め日を避け座る姿けなげに

    6.16

  117. 久しぶり芋きんとんを作りしも我が為なればレーズン入れぬ

  118. 日に二度も百足退治て水葬にすべくこわごわ川まで行けり

    6.17

  119. 突然の雨は降り出し外出ればアスファルトから伝はる暑さ

    6.18

  120. 雨降ると心配するも青空に黒きくつ履く足の暑けり

    6.19

  121. 生温き風は吹きけり南から台風来たる週末の日

    6.20

  122. 腹の立つほどの暑さをかきわけて足早に行く待ち合はせ場所

  123. 中華食べ笑ひ語りぬ三人で密会なりと娘は言へど

  124. 案外と普通に見へし彼ならむ娘の表現当てにはならず

  125. 久々に繁華街行きシャツ買ひぬ父の日だけは娘に戻り

    6.21

  126. 日のあれば一番長き今日ならむ厚き雲にて夏至には至らず

  127. 要請のはがき9枚割り当ての同じ文章書きて肩凝る

    6.22

  128. 平穏と思ふひととき過ごしのち一度に起こる様々な事

  129. ねむの木はピンクの綿毛を載せて立ち緑の襟元風にそよがせ

    6.23

  130. どなたから頼まれしかはわからねど黒塗りのバス日課に叫ぶ

  131. 窓の外細長き蛇砂利の上視線感じて固まりおりぬ

    6.24

  132. 裏側の小さき溝のだんだんと表に見へて働き難し

  133. 街宣車雨の降る日は現れず水しぶきのみ町に響きて

  134. 読み聞かせ初めて参加す我なれば30分は持て余さむか

    6.25

  135. 道の端にひとかたまりのカンナ花夏の陽射しに紅さを競ふ

  136. 同僚に笑顔戻りて我もまた冗談も言へ和やかになり

  137. ばったりと会ひし友と立話スーパーの中おばちゃんになる

    6.26

  138. 雷は遠くで鳴ると思へどもまさかに備へ電源を切る

    6.27

  139. 大雨に奉仕作業も中止され無為の時間を過ごす日曜

  140. 声に出し時間計りて本読めば切なき内容涙で滲む

    6.28

  141. 愚痴聞きて恵まれるとぞ覚ゆれど満足すとも言へぬ我なり

  142. 10分の制約あれば読む本もなかなか決まらず心迷ひて

    6.29

  143. 明朝の練習のため声に出し子どもの前で少し照れをり

  144. 早退の友よりかかる携帯にやっと気付きて慌ててかける

    6.30

  145. 紙芝居小さき舞台の向こう側物音もなく見入ってくれたり

  146. 本を読む後半になり落ち着きて我に返りて声の上ずる



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