あをもじ2004-II
最終訂正日04年4月30日
2004.3.1
- 
初仕事注文取りぬ弁当のおつり分けつつ外はまだ雨
 - 
外出し暗きデスクに我ひとり座りてかきこむ冷えた弁当
3.2
 - 
二日目で人間関係垣間見ゑちょっと複雑湯のみ洗へり
 - 
見慣れし字見慣れし名前目にすれば孤独の作業ほのかに和む
3.3
 - 
聞き馴れしパン屋の声に買ひに出で「ここに居るや」と我に驚く
 - 
ひな祭人形飾らず菓子もなくあわてて買ひしコンビニデザート
3.4
 - 
仕事場に向かひし朝に小雪舞ふ後ろ髪引くPCの前                      
 - 
示されし数字の意味を納得しやっと作りぬ実績報告
 - 
車では通らぬ路地を歩むればのどかに咲ける枝垂れ紅梅
3.5
 - 
風強し香り撒きつつ花びらは舞い上がりける灰色の空 
 - 
街道に春の訪れ知らせむと繭玉揺るる手招きのごと 
3.6
 - 
弥生にはあれど雪降る曇天に車走らせ山を越したり
 - 
我ひとり休診時間に受診する五分の不安を胸にしまひて
3.7
 - 
硬き顔発表会の舞台上指先見れば母も緊張
3.8
 - 
毎週の載らざることに馴れし我載りたることぞ幻なるや
 - 
チリチリと痛むヘルペス唇の永き付き合ひせねばと教ふ
 - 
横たわり患部に当る赤外線5分の治療効けと祈りつ
3.9
 - 
少しずつ仕事にも慣れ人の名と湯のみ一致す7日目の朝
3.10
 - 
夕食を作りし娘の話聞き「うらやまし」と言ふ男児の母や
 - 
明日なれば先輩の友いなくなり心細くも先輩となる
3.11
 - 
忘れずに葉書出したる我なれど採用さるかは天に任さむ                                      
 - 
郵便を間に合はせむと走る我犬も吠えずに見送りたるや
3.12
 - 
勤め出しやっと1割過ぎし今日新人入り教ふる立場や
 - 
昼食にパンは買はねど明日のため初めて買ひし玄米のパン
 - 
行事ある土曜の朝は病院へ行かねばならぬと全て断る
3.13
 - 
病院を2軒はしごす土曜なり休日にても予定はありて
3.14
 - 
引越しの買物したり一日中未だ終らず次週に続く
3.15
 - 
敗れたる武将の無念忘れじと今も咲くらむ木蓮の花
 - 
満開の寄り道誘ふ白木蓮枝に止まりし幾百の蝶
3.16
 - 
実践のあるのみと思ふ表計算串刺し3D今は謎なり
 - 
チェックのみと気楽に構へし報告書「頼む」と言はれ入門書見る
3.17
 - 
桜咲くニュース聞こへて雨降れどほころび始めし花は散りまじ
 - 
痛み止め内服薬のみ処方され通院止めし許可出て安堵す
           
3.19
 - 
騒がしき家の間の空見れば旅に疲れしつばめ群れ飛ぶ
3.20
 - 
雨降りし朝は過ぎ去り雲も晴れ短き中にも幸せ来たる
3.21
 
 - 
道路から見へしアパート捜さむと迷路の如き街をさまよふ
3.22
 
 - 
PCは過去を消すこと能ふれど消したくはなき記憶もあるらむ 
 
 - 
幼き日寝転び見上ぐ春の陽はれんげの上にも我にも注ぎし
 
 - 
枝の先ほころび始めし花桜入学式まで残れと祈る
 
 - 
削減の余波は及びて我が仕事増えることこそ覚悟するべし
 
 - 
キーボード真新しくなり本体は使ひ込まれし時を語りぬ
 
3.23
 - 
やっと慣れ親しくなりし同僚も異動になりてひとり残さる 
3.25
 
 - 
3年間共に過ごせし同僚の異動の知らせ電話にて聞く
 
 - 
だんだんと我の知らざる人の増へ行き難くなる元の職場や
 
 - 
転勤は定めなること知りたれど師は号泣す子ども無き教室(へや)
 
 - 
子ども等に書かせし色紙読みながら声を詰まらす教養部長
 
3.26
 
 - 
車停め暫し眺むる公園は盛りを過ぎし菜の花畑
 
 - 
毎日の文書整理も飽きぬれば眠気覚ましに本棚拭きし
 
 - 
忙しき1週間もやっと過ぎ残り二日で落ち着くを待つ
 
                               
3.27
 
 - 
買い物は幾度行けども完全に終るを知らぬ巣立ちの日かな
 
 - 
夜逃げかと間違はれむかと心配す娘心のおかしくもあり
 
3.28
 
 - 
今日からは独りで暮らす吾子なれど隣りのイケメン見ては喜ぶ
 
 - 
ひとりには広く見えたる部屋なれど狭くなりける荷物溢れて
 
 - 
寄り合ひのありて急ぎぬ帰路の時暫しの別れ惜しむ間もなく
 
3.29
 
 - 
まどろみぬ君を起こすか朝早く喜ぶあまりの携帯メール                                      
 
 - 
期待せず開けし新聞投稿欄ペルシャの詩人上段に立つ
 
 - 
年度末異動重なるその上に模様替えまで尚慌し
 
3.30
 
 - 
続けてのキーボード禍の起こりては明日で終りぬ弥生永けり 
 
 - 
誰ひとり知る人のなき街に住む吾子にはあれどそれも楽しや
3.31
 
 - 
4週間空きて行きたるエアロビで会話弾めど足は痛みぬ 
 
 - 
ひと月の短き間の同僚は拍手で送られ残務に戻る
2004.4.1
 - 
卯月にはなりても変はらず忙しさ配達できぬ弁当取り行く
 - 
我が庭のコンクリートの隙間より初めて生ゆるつわ柔らかく
 - 
雨音も優しく響く卯月なり春の若葉を痛めぬためか
4.2
 - 
雨上がり青空の下鮮やかな桜横目に車急がす
 - 
店頭に飾るる春の花々は名も知らざれど我を和ます
 - 
手入れさる花壇に咲ける花よりも道の端に見ゆシャガぞ愛しき
4.4
 - 
菜の花と桜吹雪の舞ふ道を潮風浴びて車進めり
 - 
初めての路面電車に喜びて握り締めたる50円玉
 - 
1週間独り暮しを楽しみて逞しくなる吾子18歳(じゅうはち)
4.5
 - 
夕焼けの空に残りし切り込みは何処にか去る飛行機雲の
4.6
 - 
担任のわかると友から電話あり子ども以上に気になる母か
4.7
 - 
近づけば停めし車に桜降り貼りつけたるや花散しの雨
4.8
 - 
野を焼けばやがて新芽の萌へ出せり若葉繁れる夏をば待たむ
 - 
急ぎおる出勤どきに受信する「入学式に行ってくる」の文字
 - 
エクセルを眺めて入力飽きる頃郵便局への散歩楽しむ
 - 
晴れ渡る空より舞ひし花びらを飾りて歩むや新一年生
 - 
梅雨明けて真夏の陽射し照る頃に汗をかきつつ語るを夢想す
 - 
初めての給料示す通帳も明細なくて仔細わからず
4.9
 - 
君歩く春の野山の歌読みて傍におりたる心地ぞしたる
 - 
玉響の編集会議気になりて時計睨んでダンス間違ふ
4.10
 - 
花を手に踊るダンスも今日までと安堵す我に「本番も」と言ふ
4.11
 - 
今までは色づくだけのおしゃれ染め今日から遂に白髪染めかな
 - 
滅多には行かぬデパートさまよひてやっと選びしお祝返し
4.12
 - 
ダンスしてお礼にもらいし野菜なり畑の土と露のつくまま
4.13
 - 
締切は今日の報告できずして明日送らむと急ぎチェックす
4.14
 - 
エアロビの人数増えていつのまに練習会場狭くなりける 
4.15
 - 
忙しく仕事する目を和ませし空き瓶に咲くフリージアの花
4.16
 - 
早退しPTA総会出席す真っ赤なセーター決意表明
 - 
旅行から帰りし父のお土産はミニチュア焼酎8本入りたる
4.17
 - 
本番の前に集ひて練習す明日に迫りて熱気も高まる
4.18
 - 
女装する友人ふたり従へて踊り終へたるペーゼントかな
4.19
 - 
風も止み霧濃くなりし坂道はスリップするや事故の続きて
 - 
小嵐の翌朝歩む階段は花びら敷かれこわごわ下りぬ
 - 
意味違ふ歌の載りても喜べぬ君の気持ちの我にもわかりぬ
 - 
昼からは止むと思へし雨はまだ降りて急ぎぬ郵便局まで
4.20
 - 
不調なる車如何になりたるや歌は届かず気にしをりける
 - 
遠足の子等の声聞く昼休み吾子も他所で走り回るらむ
 - 
一年にこの時期だけの賑はひに水をさす雨つつじ枯らすや
 - 
ほろ酔ひのお客に苦情を言はるるも言ひ返せずに愛想笑ひす
 - 
見上ぐれば綾なす色も様々に長串の山は頬を染めたり
4.21
 - 
路地裏に幼子ふたり楽しげにままごと遊び春の日のどか
 - 
行き慣れし往復なるも歌詠みつ歩めば距離の足らざるごとあり
 - 
小料理屋と思いて潜る暖簾なり畳にテーブル見へて驚く
 - 
歓迎会終りて家に帰り着き耳に飛び込む蛙のコーラス
4.22
 - 
電話受け5分で作りし弁当を届けて我が子安堵の顔見す
 - 
弁当を届けて我は教室を後にし拍手聞き逃したり
 - 
真夜中のこむらがえりの痛みにて声にならざる声をあげたり
4.23
 - 
電柱に貼られし写真笑顔にてピースサインのたずね人かな
 - 
艶やかな緑の素肌乾くらむ日光浴す蛙一匹
 - 
仕事中いつもの路地を往復す我を見送る犬伸びしつつ
4.24
 - 
故障かと思ひて我は尋ねしが最新技術とにこやかに答ふ
4.25
 - 
雲ひとつなき青空に溌剌と体育祭の掛け声響く
 - 
練習で成功するも本番は崩れて悔しピラミッドかな
4.26
                                       
 - 
雨風の強き夜にはわが娘無事に戻るや少し気になる
4.27
 - 
常よりも長き一日終へて後やっと受診す気力も尽きて 
4.28
 - 
青空の下に泳げる鯉のぼり元気貰ひし出勤の時
 - 
気力なく椅子にも座ることできぬ昨日の辛さ久しぶりなり
 - 
娘より「申し訳ない」と前置きしメールとどきて「預金0円」
4.29
 - 
姿なく心配募り警察に届けて調べ入院と知る
4.30
 - 
立ち寄りし実家で貰ふ一切れのカステラ美味しおかしくもあり
 - 
様々な出来事多きこの月も今日で終りて皐月を迎ふ
 
Return to the うたのページ 
Return to the TOP