あをもじ2004-I

最終訂正日04年2月29日




    2004.1.1

  1. 玄関を開ければ並ぶ靴多し年に一度の賑ひ運ぶ

  2. 懐かしのフォークソングに声枯らす子等の知らざる青春の歌

    1.2

  3. 初売りは何時に行けども人ばかり歩き回りていと疲れたり

    1.3

  4. 久々に遊びしゲームむきになり指痛くなる三ヶ日かな

  5. 携帯の小さき画面で切り取りし我が日常を君に見せむと

    1.4

  6. 散歩する友人手にす水仙は春を告げぬる清し香りで

    1.5

  7. 若人の晴れ着眩しく集ひおる一年前は大雪なりし

    1.6

  8. 正月の間休みしダイエット体重計に乗る勇気なし

    1.7

  9. 七草はパックに入りて店先に山積みされてかしこまりおる

    1.8

  10. クリスマスお正月来て楽しき日子等は語るや始業式の朝

    1.9

  11. 料理には使わず飲んで酔ひたしと我に思はす白ワインの香

    1.10

  12. はしご降る水平線の彼方には人に見えざる島あるごとし

    1.11

  13. 歩みつつ品定めする母娘して晴れ着の柄と連れをる彼と

    1.12

  14. 朝だけは白く輝く我が車昼は霜消へ尚汚れて見ゆ

    1.13

  15. 車停めドアの開かずに降りられぬあまりに強き海風の朝

    1.14

  16. ひと月も休みし後のエアロビは終へし後する語らひ長し

    1.15

  17. 画面にて息子は語る参観日「そうじをがんばる」我が耳痛し

    1.16

  18. 振袖の写真に時を遡り思ひ出しぬる我が成人の日

    1.17

  19. 様々に工夫凝らせし絵と文字で四十六なるカルタできたり

  20. 真剣に子どもに負けじと走りける体育館でのカルタ大会

    1.18

  21. センターの試験終はれど次もあり写真撮るため化粧する子か

  22. 本職に写真撮らるる子の横で自分写せし携帯カメラ

    1.19

  23. スカートは履けぬと言ひし店員は寒さの中で働く誇りか

    1.20

    即題詠 「祭り」

  24. スカートをはかぬ娘も浴衣など着たしと言へる夏祭りかな 

  25. 山国の子等は喜ぶ海に映ゆ雨の祭の水上花火 

  26. 秋祭り廃れて今は餅撒きとくじ引きをして人を集める

  27. 綱引きと丸太船漕ぐ海の上祭りの余興は濡れし我等や

  28. 夏休み祭りで探す好きな人暗き夜にも輝きて見ゆ

    1.21

  29. いつの間に景色変へたる雪模様暦通りの大寒なりし

    1.22

  30. 休校を信じて遊ぶ子と親と町内放送聞きて慌てる

  31. 雪だるま雪合戦と図画工作今日の授業は雪の日仕様

    1.23

  32. 雪解けの道は埃を巻き上げぬチェーンの音も騒々しきかな

  33. 山道をシャーベットの雪踏みて越ゆハンドル握る手に力込め

    1.24

  34. 町中(まちなか)は溶けたるけれど校庭に倒れておりぬ雪だるまかな

    題詠 「涙」

  35. 古の涙川には及ばねど恋に流すは現代(いま)も同じか

  36. 映画観て感動極まりひとり泣く涙止まらぬ少女なりし日

    1.25

  37. 夜のうち降り積もりたる綿帽子汚れた雪を隠し輝く

    1.26

  38. 家々の前に積まれし雪の列滑り下りたる屋根の長さに

  39. 違う名で呼ばれて何故か照れる我中身は何も変はらぬものを

    1.27

  40. 花飾り色とりどりに美しくひとつ選びて我が胸に挿す

  41. グランドに取り残されし雪だるま泥にまみれてポツリとおりぬ

    1.28

  42. 買い物に行きて手に取るアイスかな4割引につられおる我

    1.29

  43. 子ども等が泳ぎおるそと親たちは井戸端会議す温泉センター

    1.30

  44. 履歴書を持ちて訪なふ新職場緊張しつつ少し安堵す

  45. 空席の目立つホールは寂しかる聴けば実のある話なりせば

    1.31

  46. 坂の街少し見慣れて近くなる我が子住めれば幾度通ふや

    2.1

  47. 上ありて下を作れる合わせ歌互いの歌を並べてをかし 

  48. 上を作る時には何も思わずに続く下の句難しくあり 

  49. 潮引きて岩場に残る牡蠣の殻打ちたる人の上手さを語る

  50. 大雪の降りし今年の冬なれば雪国に住む苦労しのばる

  51. 風を切り我も走ってみたくなるマラソン中継見ておりし午後

    2.2

  52. 一番に新聞開き文芸欄我が名見つけて面映ゆし

  53. 新聞に載りたる歌をよく見れば添削されり選者好みに

    2.3

  54. 時刻表乗り場の表示も調べられネットの威力頼もしくあり

  55. 豆撒きを3人の子等ワイワイと騒ぐ節分今年で終わりか

  56. 結果より辿りつくことのみ案ずひとり旅立つ県外受験

    即題詠「島」

  57. 海原に白き波路を残しつつ島々を縫ひ船は行くなり

  58. 島影を海に落して日は沈み色づきたる雲名残り惜しみつ

  59. 名も知らぬ島にかつては人の棲み日々の暮しぞありける

  60. 島のある入り江のみ知る我なれば影なき海はあまりに遠し

  61. 筆執りて夕陽に映ゆる海と島描いてみたし絵心あらば

    2.4

  62. 小雪舞ふ朝(あした)にひとりバスに乗る我が子案じて今日は立春

    2.5

  63. 遊びにも行かで我が子はゲームする兄の居ぬとき思う存分

    2.6

  64. 雪の日に高速走るバスの中声もかしまし研修旅行

  65. ビールよりつまみの合鴨美味なりて買ひたくなりぬ試飲会場

  66. 頭痛にて景色も見ずにただ眠り起きた時には見慣れし町並

    2.7

  67. 風邪の熱出でて点滴頼み受く明日はひとりで上京する子や

    2.8

  68. 上京の娘送りて朝の道受験の季節明日で終われり

    題詠「投稿」

  69. 横書きの画面と違ふ新聞に載りたる歌は直立不動

    2.9

    題詠「母」

  70. 気付かざるうちになりたる人の母ふと振り返り後悔多し

  71. 家庭もち母親同士の会話する我が子と孫の立場違えど

  72. 親雉は傷つくふりして跳び回り雛を逃がしぬ母の本能

  73. 鐘の音に切なさ募る叫び声彼の求めし「Mother」は何処

  74. いつの日か母にぞならむ娘かな孫を抱く身は想像できず

    2.10

  75. 置く霜の白さ眩しき朝陽にて溶けゆく前のひとときのみや

    2.11

  76. 春来ぬと若葉芽立ちてあをもじは寒風の中しなやかに告ぐ

    2.12

  77. 佐々川の河口に並ぶ仕掛け網春を教へる風物詩なり

    2.13

  78. 昼なれば汗ばむ日和のどかなり霜にて凍むる朝陽なりしも

  79. 作るよりおしゃべり楽しひと月に一度集へる料理教室

  80. 次々と書類届きて入学のとき近づくを実感せらる

  81. 画面より流るるJupiter聴きながら見へざる絆あると信じて

    2.14

  82. 裏山の木々の音さす西風は春一番の嵐とぞきく

  83. 練習し上手く書きたし毛筆で拙き歌もそれなりに見ゆ

    2.15

  84. 春霞たなびきたるとまがひける野焼きの煙木々を覆ひて

  85. 逢へぬ日に君は一日メルマガを編みて過ごすや空碧し

  86. メルマガの購読者数ひとり増え感想聞きたし我等が歌の

    2.16

  87. 紅白の梅の咲きたる如月に桜ほころび気の早し

    題詠「山」

  88. 山の端に月は上りて冴え冴えと空を照らせり薄き雲間に

  89. 西に棲む我にはあれど島の見へ夕陽は常に山を染むなり

  90. 山ひとつ越ゆれば僅かに時戻り明るくなりぬ夕暮れの道

  91. 山肌を黒く焦がして枯草は焼かれ新芽の季節を待てり

  92. 山深く住まひておりし猪は里近くなり人を悩ます

  93. 山道といへども慣れた道の横猪は現れ茂みに消えゐる

    2月17日

  94. 7歳の誕生祝ひ歌うたふろうそくなくともケーキは嬉し

  95. 目の痒み来たりて知らす花粉症季語にあらずも春本番や

    即題詠「図書館}

  96. 町外の図書館通ひこののちに合併すれば大手を振りて 

  97. 漠然と通ふ図書館暇つぶし絵本眺めて癒されしとき

  98. 貸す側に居りたる三歳(みとせ)様々に紹介すれど読まざりし本

  99. PCで本の読めると知らざりし我に楽しみ教えしも君

  100. 上下刊揃わず借りる時逃がし忘れられたる本も多々あり

    2.18

  101. 急なりし同窓会の案内に時計戻して記憶を手繰る

    2.19

  102. 卒業の前に髪染む母なればピンクブラウン春色めひて

    2.20

  103. 卒業の式につけたきコサージュを選び難くて君に尋ねむ

  104. 三年間お世話になりし担任は餞として詩をば読みたる

  105. 孫娘卒業祝ひて父母は来ぬ共に喜び分かち合ふ夜

    2.21

  106. 君の住む街の写りしテレビ見て椿油の天ぷらを知る

  107. 子ども等の作りし凧は上がらねど響く歓声春の校庭

    2.22

  108. 伝はりし謂れの如く荒天になりて愛宕の祭りの日かな

  109. 教科書は古紙回収に出されをり古書店に売るコミック数十

    2.23

    即題詠「窓」

  110. 窓枠を額縁として切り取りて部屋に掲げぬ冬の夜空を

  111. 露つきて曇りしガラス何枚も絵を描く子あり窓は画用紙

  112. 窓越しに帰る人追う放課後にいつか一緒に帰る夢みて

  113. 音のなき朝になりて窓を開け寒さ忘るる雪景色かな

    2.24

  114. 給食のひじきを食べぬ「おいしい」と言ひし子どもと家庭科室で

  115. 泊まり込みビデオ作りし先生の瞼は腫れて疲れを語る

    2.25

  116. 春の日にひとり作業す窓辺から紅白の梅静かに咲けり

    2.26

  117. 送る歌体育館より漏れ聞こゑ弥生間近と改めて知る

  118. リベンジの大凧明日は大空に舞ふや子どもの歓声乗せて

  119. 長引ける仕事恨めし人々の声の多さは予想を越へぬ

  120. 歌詠むと聞きて預けし新聞は反戦の歌声高に載る

  121. 30年昔の給食忘れざるなまぬるき味脱脂粉乳

    2.27

  122. くつ箱に忘れし弁当そっと置きチェックの包み向こうにも見ゆ

  123. ひと月の想ひ連なる歌集への跋書きながら振り返る日々

    2.28

  124. 集合の時刻に着けど開会の式は始まり入って行けず

  125. 寒き中スティック持ちて回れどもゴールは遠しグランドゴルフ

  126. 優勝の人より多き賞品をもらひし我はブービー賞

  127. 隣家から署名頼まれ断われず唯々諾々の我は無党派

    2.29

  128. 明日よりは新たな日々を目前に常と変はらぬ閏年の日





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