がじゅまる2005-VI



究峰


最終訂正日 2005年 12月31日





    2005.11.13

  1. 故里の親戚の死を語る間に突如身罷る大阪の叔父

  2. 立ち上る煙もなくて亡骸は語らひおれば灰となりにし

  3. 死の知らせ続けて聞けば大阪の葬儀に行けぬ霜月なりし

  4. トンネルを抜けて車はがたがたと異音を発す秋の夕暮れ

  5. 予期せるにただ放ち置く不用心の我が性格をひたすら悔やむ

  6. 憂きこととトラブル続く秋なればすることなくて時を過ごしつ

  7. 街中を歩き廻るは久しくて車なくとも面白きかも

  8. 読むときのあると思わぬ物語瀬戸内訳で楽しみつあり

    11.28

  9. ざくざくとどんぐり踏みつ歩めども緑茂りて秋を疑ふ

  10. つわぶきの黄のみ連なる山道に泡立ち草の姿は無かり

  11. 秋ぐみがたわわに実る傍らにむべと柿の実一つと二つ

  12. あちこちで女の子らは叱られる花をむしりて表札外せば

  13. 切なさを秘めて女は生きたりき遠き日々の源氏物語

  14. 詠まずても違ひは無きを寂しかり詠へぬ日々の長くにあれば

  15. 玉響はつかの間消えて来し方を思へば遥か遠くに来たり

  16. 我が泉枯れても流る君の歌我に倣はず湧きてあれかし

  17. わが心枯るるや否や知らざれど時に逢ひては泉湧きたり

    12.5

  18. 古里の秋の紅葉見渡せど定かならずに濃淡なりし

  19. よふやくに操作を慣れしオートマ車運転しつつ楽しみてあり

  20. 自家製の道具を見せつ創作の工夫を語る翁は若し

  21. 丸き竹平らにせんと努めては帆船造りの路を踏み出す

  22. ためらひを内に隠してよつきぶり笑ひの世界文字に直せり

  23. 継続の途切れし後のぬるま湯に浸りある間の寂しさありて

  24. 遠き日に流れ来たりし親と子が村を開きて開山様となる

  25. 遠き日に阿波の国より流れきて山を開きし親子三人

    12.12

  26. 深々と更けゆく夜に眠られず腕を伸ばして明かりをつける

  27. 初雪が遠くの山に積もりたり暖冬ならぬ厳しき冬か

  28. 楽しきを思ひて歌詠む窓辺には濡れ雪隠す景が霞みており

  29. ふたとせの時を経てなおすらすらと歌詠む言葉浮かばぬ悩み

  30. 二年後によふやく届く最終巻十七年の時の長さよ

  31. 庭に生ゆ秋グミを見て花活けに求める女が今年もありし

  32. 常よりも汽笛の遅く聞ゆ夜は木枯らし吹きて霙も降りぬ

    12.20

  33. 寒気団列島覆ふ週末は君住む越後に雪うずたかし

  34. 週末に寒波は来たり夜冷えは殊に厳しく雪積もるらむ

  35. 進み行く科学の果てにままならぬ人の心は業を曝せり

  36. 寒き夜は甘きココアを啜りたり黒き濁りの触を楽しむ

  37. 極月の夜に霙がたたきつく寂しき街のクリスマスツリー

    12.25

  38. 歳を経て昔と変わる健康に戸惑ひつつも受け入れており

    12.31

  39. 真南に下弦の月がただひとつ寒波が去りて清し冬の朝

  40. 寄付求む女が来たり爽やかに虚言を言ひつたじろがざりき

  41. 女(め)の子らは自転車乗りつ駆け回る広場を避けて小さき車庫で

  42. せわしなく乱れる心そのままに詠うを忘る歳末なるか

  43. 年賀状数の足らぬに気がつきて詮無きことと出さざるままに

  44. 流れゆく時をひととき止め置きて来る年こそは良かれと祝ふ

  45. 忘れたる誓ひがあるを思ひ出し再び誓ふ年の暮れかな

  46. ままならぬことの続きし歳末を忘れて迎ふ年でありたし



うたのページ  TOP