がじゅまる2004-III




by 究峰


最終訂正日04年6月30日




    2004.5.1

  1. 投稿の歌読む人は我知らず隠れておりてふともらしたり

  2. 選択で歌を選びし子供らは五回載りしとさりげなく言う

    5.2

  3. 春雨に濡れて重き鯉幟泳ぐことなく連休にあり

  4. 連休は縁無きままに過ごせども催しなどの少し気になる

  5. 二(ふた)千の歌を読み来し路なれどたまゆらのごと過ぎしときかな

  6. あまた詠み己の癖に気づきしが拡がる言葉見つけたくあり

  7. 暫しの時残せし跡を振りかえりさらに長きをただ淡々と

    5.3

  8. ひたひたと乾ける所濡らさんとただ雨ぞ降る春の嵐か

  9. たたきつく嵐となれる春雨に眠れぬ夜中眼をば覚ましぬ

  10. 眠りを拒むがごとく目覚むればますます激し春の夜の雨

  11. 夜明け前部屋を替えて眠りたる風音よりも雨のうるさく

  12. うなりおる音はなつかし雨は遠く風のみ別れ吹きおりたれば

  13. 夜ととも舞い戻りたる風と雨蛙も激しう群れてなきおり

    5.4

  14. 雨樋の音に目覚むる朝なりき荒らぶる風は今朝も吹きており

  15. 橙に咲き誇りたる南洋の君子蘭なれど花びら落ちぬ

  16. 一箱のあかまめむけば豆飯を食べ続くるの日々ぞ今暫し

  17. 風雨止み蒼く晴れたる空なれど鯉は舞わずに幟が舞えり

    5.5

  18. 晧々と照りおる満月の近くに見えてやがて小さくなりぬ

  19. 我が歌の良し悪るしをば分からずに投稿の歌二通出しけり

  20. 眠らんと灯りを消せばサッシに映ゆ光ぞ怪し見知らぬ月あり

  21. 晧々と真夜の天空地を蓋うクルスの光放てる月か

  22. 月食を終えし光ぞまばゆけりかくの如きを見しを覚ゑず

  23. 妖しきの光を見つめ春寒の夜窓を開けついつしか眠る

    5.6

  24. 幻想の月をば見しは夢なりか清澄な夜のいたずらなりか

  25. 期待せる無料本はカバーをかけてまだ図書館の片隅にあり

  26. 借りきたる本の醍醐味味わえば歌を詠む暇無きを恐れる

  27. 歌詠みに耽りし間読みたしと思ゑる本の貯まりておりて

  28. 小説も歌本さえも借りて来ずひたすら読めるとつ国の話

    5.7

  29. 嵐にも耐えて咲きける山百合はアザミの群れに混じてあれども

  30. みとせ前埋めし崖は野となりてクローバー繁りて道を広くす

  31. 犬連れて目白のかごを木に吊るす翁に会える山歩きなり

  32. 薄晴れの茜にかすむ山々の頂き越えて飛び行く黄砂

  33. せわしきと思ひし日々に沸きいづる新たな夢想悦びありて

  34. 玉響のことを語りて過ぎ行きし木曜の夜一日(ひとひ)早けど

  35. くるぶしの痛みてあるが気にならずただ淡々と山道歩く

  36. 榊の木アゲハは舞ひてただ舞ひて蜂を引き連れいずこか行きし

  37. 森の道蝶と虫など人知れず春の生命(いのち)うごめいており

  38. 山道の処々に舞ゑる黒き蝶名も知らぬまま魅せられており

  39. 破れたる羽を動かし懸命に花に舞ひける蝶のありしが

  40. 一日(ひとひ)にて幾多の種にぞ逢ひたるや蝶住む森に別れを告げぬ

  41. 仙人の住むと夢想す小屋ありて海を見下ろす峠は無人

  42. 運命のベクトルてうを信じてはおらねど自ら招くことあるや

  43. 友の事故メールで知らせし若者の語るを聞きて暗澹となる

  44. もがけどもせんすべなくてはまりゆく深みのありて抜けるぞ難し

    5.8

  45. 君の文扉を開き玉響はただ淡々と己が道行く

  46. 我にても続けざまにぞ書ける文疲れてあれば君をし思ふ

  47. 母の日を楽しみて待つ母なれど贈り物をば思いつかざり

  48. 思わざり週に四度も玉響を出すときの来る日があらんとは

    5.9

  49. 朝十時雨の中をば楽しみつ図書館へと車走らす

  50. 常ならぬ賑わひをみす駐車場駐禁の横僅かな場所あり

    5.10

  51. 建物に人の溢れし図書館は初めてなりて動くに動けず

  52. 箱に詰め袋を下げし人もいて無料本は次々に消えぬ

  53. ジャポニカ帰りてみれば得意げに連れに語れる人が手にしつ

  54. 伝記物二冊のみをば取りたりて残りはいつか無くなりてあり

  55. 雨の中三度車に戻りたり疲れし腕に満足覚ゑて

  56. 母の日に集ひし姉に数冊の獲物本をば分け与ゑたり

  57. 昼過ぎに行きし妹は七冊を持ち帰れど不満げなりし

  58. 公金で購ひし本配布すを義兄(あに)は怒れり本は読まねど

  59. 初日に遅れていけど知らざりしかくの盛況毎年あるを

  60. 数十の本を手にして拾い読み我が借りたるも欲しきもありて

  61. 仏英和と厚き二冊の書評本これらを得しは今でも不思議

  62. 女優本数冊混じり可笑しきか読むことなきを読むらん出会い

  63. 歌の本無理と思ゑども俵万智のエッセイ二冊はしかと手にしぬ

  64. 先週に我が借りて来し本よりも無料本ぞ買ひたき心地

  65. 歌集をば暫し忘れて読み耽る本の手元にあるぞ嬉しき

  66. ドラッカーに中野孝次に経済本真新しきまま蔵書印もなく

  67. 放出の基準は定かならねども心置きなく読み行く楽しみ

  68. 数冊の北朝鮮本借りたるもあれど一気に読み上げたりし

  69. 歌詠まずただ本のみを読みており投稿の歌載らざる朝に

  70. 歌泉涸るにあらねど忘れてし時の過ぎ行く懐かしさかな

  71. 今暫し本の醍醐味味わひて後に歌詠みなさんと思ふ

  72. ウィニィの作者逮捕のニュースあり善悪分くる隔ては低く

  73. ウィニィとサッサーなどをば若者も分かる分からぬ分かれてありて

  74. 急速にネット広がりし西の島2チャンネルなども常なる会話

  75. 手作りのタイ料理をば不味しと嬉しげに語りパスポート申請

  76. 一週間残すのみなるタイ娘その後追ゑる旅はいかにぞ

  77. 見たことの無きような歌並びたる初版を読む一握の砂

  78. 雰囲気の違ひ味わひつ愛しげに一握の砂と赤光を読む

    5.11

  79. ゆくりなき喜びありし朝なればさやか心でひとひ過ごすらん

  80. 美しき蝶の休めるアザミをば携帯に収むデジカメなくて

  81. 湿りたる森に吹く風さわやかに人里離れ猫は逃げいく

  82. 鳥もちに目白かかるを今日も待つ翁は嘆く昔と違ふを

  83. 親しめば遠くも近き森なりてただ歩くこと楽しみており

  84. 森に舞う黒蝶いたり図鑑でもネットでも名前わからぬ珍蝶か

  85. 森の中数多舞えるは黒蝶とあげはの二つ互いに競う

  86. 沢蟹を思はず踏みて音立てる死せるも近くに横たわりしが

  87. 坂道の繁る木の間より蒼き海見え隠れし犬は吠えおる

  88. 流す汗濡らせしままに歩きいく風とせせらぎに鶯が鳴く

  89. 県道の処々に散りし沢蟹の亡き骸見つつ波は穏やか

  90. 絶え間なく鶯の鳴く海辺なる畑で仕事す人のちらほら

    5.12

  91. 荒き髪柔らかになりと行くごとに云われて少し寂しくもあり

  92. 髪によきシャボン石鹸を手渡しぬ女主人のいる理髪店

    5.13

  93. 辺境を歩きし人の古に思ひを重ぬ時を過ごしぬ

  94. 知らざりし人のこと知るは喜びか真澄富蔵儀助武四郎

  95. たくましき身と心もて最果てに来たりし若き学徒もいたり

  96. 白百合の枯れしが残る部屋の中今年の梅雨は早く来るとぞ

  97. 何もせで文読むことに飽きてきて歌を詠まんとPCにむかえり

    2.14

  98. お茶の葉を天日に干して香り待つ

  99. 幾年も捨てて置かれし作業船赤錆のまま湾にさらしつ

  100. 今日もまた湾を巡るかと問ひし女(ひと)よくよく見れば若く見えたり

  101. 別々にボトルを持ちて歩きおる寂しげなりし女が二人

  102. 和算をば芸道と見る人もあり歌をば芸と思いはせねど

  103. 見上げれば段々畑杉もなく切り取られたる空間なり

  104. デジカメを携え歩む蝶紀行追いて遊んで時のみたちし

  105. 人住まぬ家の屋根には草が生え木も生えており川の畔kで

  106. 森の中蝶と戯れ蝶を追ひ歩くを忘る島の初夏かな

  107. 森の中鶯の声も重なりて時には切れる携帯電話

    5.17

  108. 声のなき民の声とぞ云ひたるはネット時代には昔のことか

  109. 皐月空七時を過ぎてよふやくに茜となりし病院の上

    5.18

  110. 爽やかな風を浴びたしと思ひつつ気づきてみればはや昼時か

  111. 図書館へ行きたくなけどさはいかじ返却本の残りてあれば

  112. 昼過ぎて歌詠むことのあるならば想ひを風に乗せて飛ばさん

    5.19

  113. 時あればあれもこれもとしたかれど今は日々をばあるがままにぞ

  114. 玉響の積み重なりし日々は過ぎ新たに知りぬ時の速さを

  115. 街中で外国人(とつくにびと)の目立ちたる島で鉄人競う日近し

  116. 妖しげにあかねの空の広がりし西を見据えて青き空かな

    5.20

  117. ふたとせも使わずありしスキャナーを文書整理に利用せんとす

  118. マニュアルもCDもいずこに行きしやとよふやく探し初めて使う

  119. 仕事場のPCでよふやく投稿の歌を印刷終わりし朝か

  120. 真夜中に救急車のサイレンと赤燈停まる我が家の前か

  121. せわしなく時が過ぎ行き今日もまた歌を詠むをば忘れておりし

    5.21

  122. ワード見つめプリントすれば気づかざる細かなミスで用紙を無駄にす

  123. 紫陽花は狭庭にありて数輪の色づきたるを緑が囲む

  124. 我が家では緑のままの紫陽花のまだきに咲けるマリアの園か

  125. 玉響を祝う週末間近にて何かよきことあるよな心地

  126. 記念日の続きし頃の思い出ぞ今はなつかし新たに迎ゆ

  127. 画面にて次々仕上げ満足す疲労はあれど形となりて

    5.22

  128. 見上げればキノコの生えし場所ありて嵐が家に残す置き土産

  129. 時代てふ激流の中に自らの本意ではなくて祖国を変える

  130. 割り切れぬ思ひも残る決着は個人と違ふ論理のためや

  131. 信念を自己と国とにささげたるチャスラフスカを持たざる平和

    5.23

    「玉響50号」に寄せて

  132. 玉響は百の半ばにたどり着く淡々なりし思いのままに

  133. 我が思い歌に詠みしを更に編み積み重ね来し五十の重み

  134. 唐突に決めたる時の無謀さも今し思えばただ懐かしく

  135. 我知らぬ玉響という言の葉を君が教えて名づけし時よ

  136. 歌詠みを初めし者の作りたる蟷螂が斧と思ひもすれど

  137. 詠むままにともに編みたる玉響は思ひのほかに形となりて

  138. 五十号を前に止めたる思い出の幾年前のメルマガありて

  139. メルマガの世界の隅でひっそりと思いを刻む我が玉響よ

  140. あるがまま編みし玉響良し悪しは未だ分からず楽しみてあり

  141. 詠む歌は深く思はずたまゆらに出来るがままに書き留めて来し

  142. 気まぐれの我が心をぞとらえしは何か知らねど歌は湧き出て

  143. 玉響の記念の号の文書きて心のつかえとれし如きぞ

  144. 歌詠みの始めの終わり刻みける文をば一気に書き綴りたり

  145. 淡々と徒然事に目を向けて日々のみ過ぎしと思ひておれど

  146. 風吹けど流さることも無きままにともに編みたる玉響なりき

  147. 限りなく続け行かむと思ひたる最初の関を静かに過ぎる

  148. 玉響の持てる意味をば乗り越えて長く続かん心地のしおり

  149. 半年で詠み来し歌の多さにぞ驚くこともあるがおかしき

  150. 鉄人の技を競える五月晴れ我も密かに己に挑む

  151. 年を経て拙き歌を懐かしみ過ぎし日々をば思い出とせん

    5.24

  152. 明と暗一日に起きてめまぐるし一世の縮図見るが如くに

  153. 病には縁なきと思ゆ肉体も気力衰ふを見るは悲しき

  154. 鋭敏な反射神経羨みしこともありたれ病に勝てず

  155. ときめきで始まりたりし記念日の暗転するごと時を奪えり

    5.25

  156. 窓開けて昼寝の風の涼しさに歌は詠まずにまどろみてあり

  157. 信号と朝の混雑叩き込み道をば選ぶ送り迎えか

  158. 雲ひとつ無き青空の拡がりて我は電話のくるを待ちおる

    5.26

  159. 投稿の選者の選ぶ歌を見つ人間模様見える気がする

    5.27

  160. 竹薮で見つけし雉の卵をば孵化器に入れてその日を待てり

  161. 炬燵にて暖めし時は孵化はせずやつの卵に命宿るや

    5.28

  162. グミの枝丸ごと切りて紫陽花と活けし玄関ひっそりとあり

    5.29

  163. グミの実を食みて思ふは幼き日野山で取りし野梅のことも

  164. 潮風に枯れし葡萄のすぐそばでたわわに実る枇杷の木ありて

  165. 他所にては今年は不作と云ひけるに何故か実りし枇杷の木々かな

  166. 黄色なる袋をかぶり幾十の房は熟して芳香放つ

  167. 蟻と虫百足も寄りて汁を吸うぶどう園なる枇杷の木十本

    5.30

  168. 雨降りに足場を組みて瓦替えなすと告げたる隣人なりし

    5.31

  169. 化かされて化かして帰るタイ旅行違ふ女のことを語りぬ

    2004.6.1

  170. 外国(とつくに)の体験談を生き生きと語りておれば聞きおるのみで

  171. さわやかな風の窓より入りおり布団をかぶり昼寝をしおり

  172. 一年(ひととせ)の時を隔てて佐世保にて女児が殺める世の殺伐さ

  173. つひたちは真新しかる歌集の始まりなれば初心に戻り

    6.2

  174. 玄関に朝顔這わすネット張る管理人のいるマンションの朝

  175. 女児によるネットバトルが殺人を引き起こせりと知る朝なりし

  176. 携帯を取り上げしてふ国もありHPを持つ子等も多き世に

    6.3

  177. 石垣のドクダミの花露草と混じりて白き十字に柱かな

  178. 映画を見ずになりせば三台のビデオデッキを処分し終えぬ

  179. 身軽にぞなるべきなりや数百の雑誌も今は未練が無くて

  180. 空き部屋を長きに占めし想い出の物を不用と認むまでの日々

  181. いくつかの資格証の額縁に文や絵などを入れて飾りぬ

  182. 収集の癖ありしかど物を捨つ日々を過ごせる心となりて

  183. 組しまま打ち捨てられし足場なり瓦の山をシートに包みて

  184. 大人でもよくなりたるはネットバトル文字の幻想食ひ違いありて

  185. 少女の愛読書と書き込みをわが見し記事は毎日新聞

    6.4

  186. 寝転びて眺めておりし青空に音はすれども姿はなくて

  187. 借家に出入りする人の声聞きつ新しき歌工面しつあり

  188. 半年を経し後に我が詠む歌の巧くなりしとつゆ思はざる

  189. 節つけて物干し竿を売る声の真似はせで我が歌を朗じぬ

  190. 同じ名でいたずらメールの届けるを不思議に思ふ姪の誕生日

    パパさんとタイ娘

  191. 切れしとぞ思ひし縁の戻りける若き娘の甘えに弱くて

  192. 絶交すと我に云ひしが忘れえず毎日かける国際電話

  193. 六つ切りに延ばしし写真我に見せ友は女とラブラブモード

  194. パパさんをだまして泊まるホテルにて友と戯る手管は見事

  195. 寺を見て合掌しおる娘たち男騙せど篤信なりて

  196. 宝石の産地と云へるチャンタブリ レナは戻りてワラホーンとなる

  197. 山岳の故郷へ送る金のため異国の客にけなげに尽くし

  198. 腹の出(で)し写真を見せて北の地の娘なりとぞ我に示しぬ

    6.5

  199. 雨どいに積もりし土に草根付き水を通さず滝に落ちける

  200. 己をば歌のねたにぞされしかば笑ひ転げてさらに話しぬ

    6.6

  201. 肋骨に鎖骨を折りて東京で治療も受けず生きうるものか

  202. 憎しみのページをテレビはさらけ出し闇はますます深くなり行く

  203. 戯れや本音なりしやその昔殺人を欲す声に唖然とす

  204. 得意げにリストカットを友に見す少女ありしを思ひだしたり

  205. 単純と思へし闇は時を経て鎮まりくれど深くなりゆく

    6.7

  206. 仕事場に従姉の来たり三時間帰るを忘れただ話しおり

  207. 少女の云ひし言葉の流れきて闇の更なる深さを知れる

  208. 少女の書きし文をば探し読みあまりに激し憎しみを知る

    6.8

  209. 市と町の合併するは先なれど新市名つくラベルで売りし

    6.10

  210. 昔なら気づかざりしもネット見て中立という幻想を知る

  211. 責任を企業に問ふは激しけど輸入食材には自主的規制

    6.11

  212. 病院に母を連れ行く金曜は駐車場は車で満ちて

  213. 懲りもせず新メルマガを立ち上げし我がエネルギーを更に燃やさんと

  214. 紫のグリンピースはひととせで故郷の人に広がり

  215. 見下ろせるグミの木屋根と競うほど高くありしが不思議なりかな

    6.13

  216. 我が歌は投稿欄に無けれども君が名と歌すぐにわかりて

  217. 老禅師百四歳で矍鑠と生きるは難しと語るを見しが

  218. 数十の袋に詰めし雑誌をば階下におろし汗はしたたる

    6.15

  219. 英詩をば歌の形に訳しつつもどかしさの中楽しみもあり

  220. 人の世の無常を詠ず歌のみが目立ちておれど他も挑まん

  221. 軽やかな脳梗塞と云われしが義兄(あに)は船乗り釣りに行きたり

    6.16

  222. 走馬灯形とならず姿変え脳裏に浮ぶ諸々のこと

  223. 読まざると思ひておりし古の文を再び手にとりており

    6.17

  224. 生と死を考えおりて時は過ぐ好きな言葉に文を書きおり

  225. 台風の影響無きと思ひたり窓をあけて外出したり

  226. 気になりて台風進路調べおり915hPaの数字を見れば

    6.18

  227. 大粒の雨音にめざむ早朝に雀なるや激しき囀り

  228. 様々な雨音混じる台風の来るかも知れぬ数日前か

  229. 青空も見えて今はただ明日の日の雨が降らぬを祈りておりし

  230. 運良くに早めに歌を詠みており友が来たらば詠まざらんほどに

  231. タイからの国際電話ありたると告ぐ友の電話代月4万円

  232. ふさふさの黒髪なりて三十に間違えられしと嬉しげなりし

    6.19

  233. もたもたと南の海で遊びおる台風六号不気味な動き

    6.20

  234. 大型の台風来ると数日を騒ぎておれど青空のどか

  235. 口ずさみ馴染みし文を時を経て読み返し時をば忘る

  236. 淡々と日々の記録を携帯で三年余り送る娘がいて

  237. 飽き性の我にはあれど継続の持てる強さも又知りおりて

  238. 爽やかな風を入れんと思へど工事音ありて窓をば閉めぬ

  239. 突然の仕事が入り青空を窓辺に見つつ冷房を入れる

  240. 詠わずて過ごす慣ひの日曜に歌の湧き出るときもあるらん

    6.21

  241. 台風は避けて逝けどもその余波は灘の波をば荒れて通わせじ

  242. 何もせでぼんやり過ごす朝のとき遅れて降れる雨をば眺む

    6.22

  243. デジカメを見て写真屋は懐かしと云ひしが時の速さを知らせぬ

  244. ドックより海に出て行く真紀丸のスクリューは壁に曲げられたりき

  245. 心萎えし義兄は寂しき病にて未だ戻らぬ気力にあれば

  246. まぐまぐの新刊案内載りたれば我が読者は一気に増えたり

    6.23

  247. 十あまり英語の聖書ありたりてどれで読むかを悩みておりし

  248. 聖書の思想遠きと思わずも日本語版はネットで読めず

  249. 若き日に戻るが如き錯覚にて親しみたりし本をひもとく

  250. 昼のとき文を書くをば課したれど剰つと思ひし時は足りずに

    6.24

  251. 降りしきる雨に揺られる電線にスズメが二羽ブランコしおり

  252. テロリスト送り付けたる映像の残虐さに動画を切りぬ

  253. 梅雨らしき景色を眺む疲れ目の休まらずあればソファに臥せぬ

    6.25

  254. 年寄りの姿の目立つ島なれど入居者なきホーム乱立して

  255. 宅配は昔はFAX注文で今はネットで便利となりし

  256. 歌詠みを忘れしわけにあらざれど文書くことに頭悩まし

    6.26

  257. 三ヶ月隔てし後にエッセイを書きて安堵の気分味わひ

    6.27

  258. 押しつぶすかの如き音に目覚めしはいまだ聞かざる雨音なりし

  259. たたきつくかくすさまじき雨足を長く聞かざる今午前四時

  260. 空き部屋を見回り見れば隅の部屋暗闇の中雨漏りしおり

  261. 下に降り様子を見るに目覚めおる母は雨でなく蟻と遊べり

  262. 真夜中のテレビ情報少なくて衛星画像パソコンで見る

  263. 厚き雲蓋ひし下にかすかにて見ゆる島にぞ我は住みたり

  264. 大きなる二つの雲の画面にてはっきり見えしが今降る雨ぞ

  265. 明け方にパソコンつけて遊びしは何時なりしかを思ひ出せずに

  266. 二度寝にて目覚めし時は気だるくて雨足のみが変わらずありし

  267. 眠りをば妨ぐベルに目が覚めて参院選の依頼を聞く

  268. 一時間五十ミリも降りし雨止みてし後の日曜の空

  269. 妹に締め出されしを泣き叫ぶ声の聞こゆる雨上がりかな

  270. 文を書き後に覚ゆる疲労感楽しくあるに時に起こりぬ

    6.28

  271. 痴呆なる母を抱えし人のこと知人であれば他人事ならず

  272. 古里は皆老いたりて伝え聞く知らせの中に憂ひ多かる

    6.29

  273. 恋愛の歌を読みつつ時は過ぐ文書く歩み遅々としたれど

  274. あれこれと辞書を紐解き言の葉を探しておれば歌詠む時ぞ

    6.30

  275. 設定で悪戦苦闘IP電話マニュアルもなくHPでもわからず





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