地底の洞窟の壁は生きている(2/9)


* The walls are alive
Deep in a cave, scientists glimpse a strange new biology

地球上にもまだまだ知られていない生物がいるという話しです。

南メキシコのタバスコという小さな町の近くにCueva de Villa Luz、英語名で はCave of the Lighted Houseという硫黄が充満している洞窟があって、地元 の人は長い間そこには強力な悪魔(powerful spirits)が住むと信じてきた。こ こに住むのはマヤ族が多数を占めているようですが、今でも、豊穣の儀式を執 り行っている。そのときには洞窟の中を流れていて、その入り口で消えている 乳白色の川でとれる小魚を捧げることになっている。

この酸性の蒸気が満ちている洞窟を調べた結果、驚くべきことが分かった。22 人からなるアメリカの調査隊が、ガスマスクをつけて1マイルの深さまで調査 したようですが、その環境からいって常識では生物がいるとは思われない。し かし石灰岩の壁には生物が存在し、所によっては0.5インチにもなる微生物の 粘液で覆われていた。さらに洞窟内には地表の生物に似ている多くの生き物も たくさん見受けられた。これも地表では見られない多くの微生物が存在するか らと思われる。

どうやらいままで知られていなかったのはもちろんのこと、生物学の常識を超 えた生物が存在しているらしい。地底数マイルの堅い岩の近くには、単細胞の 生物が多く存在する。そして今までどの生物も存在するとは考えられなかった その環境と、そこで生きている奇怪な生き物はもしかしたら、他の惑星に生物 が存在するかどうかを解明する鍵となるかもしれない。

今までも洞窟内で微生物が発見されたことはあるが、こんなにも豊富ではなか った。多くの地質学の教科書は、石灰岩の洞窟には生物はいないと考えてい る。それによれば空気中や鉱物の中に含まれる二酸化炭素と水が反応して出来 た弱い炭酸が少しずつ土地を浸食して自然の洞窟が出来たということになって いる。しかし最近地球科学者の中には別の仮説を唱えるものが出てきた。生き ている彫刻家、つまり微生物が酸を少しずつ放出することで巨大な空間を作り だしたのではないかというわけだ。

この仮説はまだ確立されていない。なによりもそうした仕事をなしたとされる バクテリアがほとんどの洞窟では死に絶えているからだ。例外としてはアメリ カでもっとも深い洞窟、Lechuguillaがある。ここでは微生物の痕跡が見られ る。しかし今度調査された洞窟では微生物は今も活動を続けている。しかも洞 窟内の硫酸を磁石みたいに引き寄せているらしい。つまり硫酸を糧として生き ているということでしょうか。あたかも地球の歴史を何百万年も遡ったような 光景なわけです。

洞窟内の微生物は粘着性が強く、調査隊はそれらをsnot-titesと名付けたよう です。snotは鼻水をたらしたという意味があるようですが、titesはどういっ た意味かよく分かりません。しかし天井や壁やあらゆる所から垂れているとい う感じはよく出ていますね。他にこの環境に順応したクモやら無脊椎動物も見 られるようです。そして入り口近くで空気が比較的きれいなところでは、 vampireを含む4種類のコウモリもいるとか。しかも中に入って行くにつれて、 川の深さはだんだん深くなり腰にまで届くようになる。そこには1フィートの 黒いイオウの泥が堆積し、その上をかろうじて生きているslimeがはい回って いる。最初に書いた小魚は至る所で見られ、しかもその数の多さといったらま ず他の洞窟では見られない。ある微生物学者は次のように言っています。「私 はずっと宇宙探検に憧れていたが、ここでの経験が今までの人生で一番それに 近い」どうやらかなり不気味な世界のようです。

洞窟内の食物連鎖の最初に位置する微生物は今まで未知のもの。当然日光は届 かないから、光合成は出来ない。バクテリアの活動源は硫化水素や無機性物質 のようです。どうやらここでは酸素や有機物には縁のない世界が、広がってい るようです。

ここで発見されたことは大きな意味を持っている。1992年にコーネル大学の天 文学者Thomas Goldは"The Deep Hot Biosphere"という本を書いたのですが、 その中で地底3マイルまでのの生物は厚さ5フィートの層になるかもしれないと 推定した。しかも重さから言ったら地表の生物の重さよりも重くなる、という ことですから信じられないです。こうした地底生物の研究はほとんど未開拓の 分野でしょうが、他惑星の生物研究の参考になるかもしれない。極端な環境で 生きているこれらの微生物の構造(microorganism)は様々で今までの常識が通 じないようです。外見は顕微鏡で見てもそんなに変わらないが、分子レベルで は動物と植物・キノコほども違うようです。

こうした極限下の生物研究も徐々に進んでいるようですから、そのうち意外な ことが分かるかもしれません。しかし今の所は洞窟学の調査をした人が、外界 に出てきたらその表情が晴れやかになっていたということが分かっているだけ です。どうも中の空気が美容院のacid peelと同じような効果を持っているよ うです。

地底の世界に別の世界があるという話しは、むかし私は好きでした。ジュー ル・ヴェルヌとかいくつかの作品を思い出しますが、閉所恐怖症の人には恐い でしょうね。 (^^; 



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