ジェファーソンの黒人の子孫(12/22)


US Newsの12/22から興味深い記事です。昨日12月16日の朝日にも、この記事の 簡単な紹介が載っていました。このごろは、新聞などの元になっている記事 を、TIME/Newsweekも含めて、比較的簡単に読めるようになりましたね。

*Clearing the heirs
we may soon know if Jefferson had black children

アメリカ独立宣言の起草者であり、第3代大統領であるThomas Jefferson。彼 に、黒人の子供がいたのかがまもなく判明する。そういえば、彼の奴隷所有者 としての私生活が暴露された本が話題になったのは、去年だったですか。この 話も含め、知る人ぞ知る、という感じだと思いますが、やはりアメリカ人には ショックなのでしょうか。

生前から彼が黒人の女奴隷、Sally Hemingsとの間に、数人の子供を設けてい たという噂はあったようです。彼は、そのことについて否定も肯定もせず、歴 史家はその真偽をずっと議論してきた。 Sally Hemingsの子孫は、Jefferson の子孫だと言うことを、口外することは出来ず、家庭内で連綿と伝承してき た。このことだけで黒人達にとっては、これの正しさは当然だということのよ うです。

白人だけからなる彼の子孫達はMonticello Association of the Descendants of Thomas Jeffersonを作り、一族が埋葬される墓地を管理し、誇り高く生き てきたのでしょう。だから高潔なJeffersonが黒人女奴隷を妊娠させたこと、 まして長い間愛人関係にあったことなどは信じられない。

一方自分たちがJeffersonの子孫だと信じる黒人達は、JeffersonとHemingsの 間に出来た最初の息子の名前を取ってThe Thomas Woodson Family Associationを結成します。これは1978年のことのようですから、それまでは 表だって自分たちがJeffersonの子孫だと言うことを主張できなかったのでし ょう。あちこちの子孫達が、自分たちの家庭の中で、ひっそりとその言い伝え を守り続けてきた。

しかし今ようやく科学的にどちらが正しいのかが、証明されようとしている。 DNA鑑定が出てきましたから。もっともこのDNA鑑定は最近まで、Jeffersonの 遺骨を発掘して、子孫だと主張する人々のDNAと比較することが考えられてい た。ところが最近のDNAの研究は、Jeffersonの子孫だと主張する白人グループ と黒人グループのDNAを比較することで、彼らの間に親戚関係があるかどうか が、解明できるところまで発達してきた。最近オックスフォードの科学者がそ の調査をするための、DNAサンプルを受け取った。数カ月以内にかなりの精度 で、JeffersonとHemingsの間に子供がいたのかどうかが分かる。

この噂は1802年のRichmond Recorderに早くも載っている。彼の大統領在職の 中のことですね。(1801‐9) 奴隷所有者が、奴隷の女性を妊娠させることは 珍しくなかったが、彼の場合は愛人関係にあったという疑いが濃いわけで、当 時としてはこれは考えられないことだった。彼が1826年に死んだとき、彼らの 間に出来たと思われていた5人の子供のうち2人が解放された。Thomas Woodson は奴隷として登録されたことはなく、Jeffersonの子の数年前にある白人家族 と一緒に住むために、農場を離れていた。残り2人はrunaway slavesであっ た。この辺の扱いも気になるところです。

さらにJefferson自身の書いたものがある。直接は言っていないのですが、 1800年8月23日の家族構成として、45才の白人男性と10才から16才の白人男性 をあげている。ここであげられている少年がWoodsonだというわけです。彼は 1790年生まれ。その血に8分の1黒人の血が入っているだけの人は、白人として 認められていたということです。そうするとHemingsは黒人の血は4分の1以下 であったということになりますね。この段階で妻のMarthも一人息子もなくな っているようですし、一人息子は幼児の段階で死んでいるから、たしかにこの 記述は意味を持ってくるかもしれません。

170年間、こうした伝説が正しいのかどうか、学者を悩まし続けてきたが、大 勢は噂に否定的だったようです。ところが最近そうした噂を信じるものが増え てきているようで、今度のような調査が行われることになったのでしょう。

今回の調査はJeffersonの子孫だと主張する2つのグループの中の18人のDNA鑑 定として行われる。しかも公正を期すために、それぞれのDNAには名前は書か れておらず番号だけ。しかも3つの研究所で、目的をあかさずに調査される。 調査結果は科学雑誌に発表されるまであかさない。なかなか厳正にやるようで す。

Jeffersonはなかなか複雑な人のようです。彼のことを書いた本の書評の感想 を書いたことがありましたが、そう感じました。彼の思想や歴史観も残された ものだけからは判断できないところがありました。しかし白人の中には、近い 祖先の中に黒人の血が混じっていない人はいるかもしれないが、どの黒人にも 多かれ少なかれ白人の血が混じっているということは聞いたことがあります。



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