Au pair裁判総括 その1(US News)


子守事件は、まだ確定はしていませんが、Louise Woodwardが釈放されたこと で、ほぼひと段落したようです。先週号のNews雑誌はNewsweekを除いて、この 事件が投げかけたものをそれぞれ違った角度から問いかけていました。少し遅 れましたが、US News, TIME, Sunday Timesが、どのようにこの騒ぎを見てい たのか、それらの感想を書いてみます。

*Why did Mattew die?(US News, 97-11-24)

US Newsは、本当にLouiseは無罪なのかを、医学的証拠の面から掘り下げてい ます。

Hiller Zobel判事は、Mattew Eappenの死亡原因を次のように推定したようで す。8カ月のMattewは、以前に血液凝固の症状をおこしたことがあり、それが 直りかけていた。そこにLouiseがMattewを乱暴に取り扱ったため("rough" handling) 再出血し、彼の死の原因となった。これは殺人行為と云うよりも、 故殺行為だというわけで、Zobel判事は彼女を釈放したわけです。当然これ は、被告側の説明と同じですね。

では陪審の判断は間違いか。そうではない。Louiseが釈放された当日、児童虐 待を専門とする49人の小児科医が、この再出血理論を批判した。検察側の主張 するshaken baby syndromeこそがここ20年間の研究の定説であり、裁判であげ られた個々の事実をよく説明できる、ということです。陪審の判断の方が正し い。

頭蓋骨骨折に関しては、弁護側は病院に収容される3〜4週間前のものと推定し た。多分落下か何かがあり、このときに骨折と最初の出血がおきたのだろうと いうわけです。だからLouiseにはMattew死亡の責任はない。もちろんviolent ではないが、roughにMattewを揺さぶったことで、再出血をもたらしたことは 認めるが・・・、という主張ですね。

だが多くの小児科の意見はこれとは違う。まず頭蓋骨骨折はいつ発生したのか を判定することは難しい。しかし大事なことは、2月4日にMattewを昏睡に陥ら せた損傷は大規模で重大だった。これは大量の出血が起こり、その結果脳の膨 張をもたらし、重要器官の停止を招いたということのようです。多くの専門家 によれば、最初に脳膨張を伴う大量出血の結果昏睡に陥り、さらに3週間の正 常期間後、ほんのroughnessな行為で症状を悪化させ死に至らしめることはあ り得ない、ということです。もしかりに再出血があったとしても、8カ月の幼 児を死に至らせるまでにはならない。Mattewを死亡させた脳損傷は、ただの rough handlingといえるものではなく、violentなものであったと考えるのが 自然であり、激しい揺さぶりであり、衝撃であったと考えられる。

Mattewが運び込まれたとき、目の充血があったことの説明はどうか。これこそ shaken baby syndromeに特有の症状であり、75%から90%の割合で見られる。検 察側眼科医はこう証言したようですが、弁護側は何故か眼科医の証人を申請し なかった。

首に傷がなかったことの説明はどうするか。弁護側は、脳の静脈が切れるほど の衝撃が加えられたのならば、当然首や背中にもなんらかの痕跡があるはず だ、と主張。しかしこれも専門家の話では、そうしたことはまれにしか起こら ないということです。

真相は明らかにならないかもしれないが、証拠を見る限りMattewの死亡は shaken baby syndromeの典型的な例だと云うことで一致するようです。そして shaken baby syndromeの原因となるのは、自制心をなくし憤激した父親が引き 起こすのが6割、その次に10代のベビーシッターによっておこされる割合が高 いとのことです。

だからUS Newsのこの記事ははっきりとは書いていませんが、Louise Woodward は有罪、Zobel判事の判断は間違い、と云っていることになります。



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