失われた10部族(TIME 9/6/99)


今日届いたTIMEに、私にとっては興味ある記事が載っていたので紹介しておきます。

*Lost Tribe of Israel? (p.24-25)

私個人にとっては長年関心を持っている話題だけに、面白く読めました。

イスラエルの失われた10部族はどこに消えたのか。古代日本史の邪馬台国論争を世界的に拡大したかのようなこの話題は気を付けていると、結構目につきます。イギリスにもアメリカにもそして南アジアにも自称「イスラエル人の末裔」は結構います。もちろん日本にも、「十部族は最終的に日本にたどり着いた」と主張する熱烈な人々が、かなりいます。

さて、今回はインド、ビルマそれにバングラデシュにまたがる地域にすむMizos族の一部に自分たちを10部族の子孫だと考える人々が増えているという記事です。この記事はインドのMiszos族が居住する人口70万人のMizoram州からのレポートですが、Mizos族は国境を越えて3カ国に住んでいるわけで、彼らの民族意識が高まれば、クルド族のように独立を、求める声も出てくるかもしれない。

彼らはもともとは長老教会派に属するキリスト教徒のようですが、イスラエルに移住したりユダヤ教に改宗する人が増えている。イスラエル政府も、彼らをユダヤ人とは公式に認めないものの、毎年100人に観光客として入国を許し、もし彼らがユダヤ教に改宗すれば、市民権を与えるということのようですから彼らがイスラエルの血をひいているのを黙認しているとしか思えない。

元々この失われた十部族の伝説は、アッシリアに連れ去られた北イスラエルの消息が突然旧約の聖書から消えることに始まります。本文では3000年前ということいなっていますが、多分2700年くらい前までの消息は分かっていたと思います。それと外典では、北に向かったという記述も伝わっている。しかしその後、消息は途絶え、現在のユダヤ人は残った2部族、つまりユダ族とベニヤミン族に10部族の一部が加わって形成されていると考えられています。また本文にユダヤ教のsynagogueが2つあることが述べられています。すなわち、セファラディとアシュケナジー系の2つですね。本文にMizos族の多数派に属する人が、自分たちがユダヤ人の子孫でない証拠として、自分たちはモンゴロイドだと述べていますが、旧約のユダヤ人がもともとはシェム族に属することを考えれば、あまり説得力が無いかもしれない。

しかしこの地域は歴史的・地理的にも他の地域からも隔絶されているようで、1986年に終結した内乱が人々に与えた精神的混乱が、100年間にわたって政治的・社会的・経済的な生活のあらゆる面の中心であったキリスト教からの人心の乖離をまねいたのかもしれない。

しかしMizos族にはもともとそうした伝説もあるようです。1000年以上前に中国の僻地の洞窟Chhinlungに「10部族」のMenascheの遺物が集められた。Menascheは辞書には載っていませんが、多分「マナセ族」の事だと思います。彼等はそこから時をかけて南下し、やがて現在のビルマ、インド、バングラデシュの国境地帯にたどり着いたと言うわけです。

1952年地方の首長の一人が「Mizosは失われた部族の末裔だ」という神の啓示を受ける。それを信じた者たちが、「約束の地」を探しに出かけるわけですが、どうやら彼等の地方はよほど隔離されているらしい。その時彼等の1人が初めて汽車を見たようです。しかしこれをきっかけとして、彼等の風習と旧約のユダヤ人の風習が似ていることに気付く。この辺から、自分たちが「失われた十部族」だという信仰が、彼等の間にも一部のユダヤ人の間にもうまれていったらしい。

なかなかおもしろい話です。しかし私も初めて旧約を読んだとき、祭りとか葬儀の記述が日本の田舎の風習に似ていることにおどろいたことがあります。結構、昔においても世界は狭かったのかもしれません。

邪馬台国と同じく、こうした伝説も解決されないからこそ、いつまでもロマンを呼び起こすのかもしれませんね。

1999-9-4



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