中間管理職入門 (7-6, ESSAY)


TIME 7/6 のUS版のESSAYです。

*Middle Management 101
On becoming a manager in middle age
By MICHAEL KINSLEY

101は確か大分前、Niftyの会議室で教えていただいたと思います。うろ覚え では、小学の最初のクラスのようなことだったと思います。ABCとか入門という 意味ですね。作者はどうやら作家かフリーランサーのような職業に長く就いて いたらしい。その彼が突然ソフトウェアーの大会社の中間管理職の地位につい た。会社の名前は、直接は書いていません。しかしシアトルの郊外にあるとい うこと、Janet Renoのフアンクラブが解散されたとありますから、読む人には すぐに分かります。 (^^;

中年にして大会社の中間管理職になるというのはどういうことなのか、その 感想というわけです。この会社は他の会社とは違うということを標榜してい る。確か私は大学のキャンパスのような雰囲気だとTVか何かで見たことがあり ます。しかし作者はあまりここの会長のいうことを信じないのか、そんなに他の 大会社と変わらないと書いています。ただ違うらしいのはAre there bare feet in the cafeteria at Procter & Gamble? 私には裸足で会社のカフェテ リアを歩き回っても、大したことじゃないよ、というふうに読めましたが、も ちろんこれは私の読み過ぎでしょう。どうもこの会社の記事を読むときは私に は偏見がついて回る。  (^^; この会社Think Differentを掲げるAppleでは ありません。

しかしアメリカでは最近は経営論が盛んなようです。managerialpornography と書いています。感じとしては分かったような分からないような。adulatory profiles of the big-shot CEOというのは、影響力の大きい人物の機嫌を損ね るのは、自分の首を絞めることになるというわけで、パソコン雑誌などの業界 にも当てはまることかもしれない。とにかく成功した経営者になること、中堅 管理職ならさらにそれより上の管理職になること、これは誰しも心の中では願 っていることですから、成功したCEOについての本や、そういった人が書いた 本がよく売れるのも分かります。

しかし作者によればそうしたものはあまり役にたたない。陳腐なことと同じよ うなことばかりを書いている。いわく、従業員を機械ではなく人として扱え。 いわくコスト削減が利益を生み出す。さらに自己矛盾した記述があたかも禅問 答のように載っている。かんしゃくをおこしてはいけないが、怒ることをおそ れてはいけない。もしもある人の書いたものには矛盾がなかったとしても、 CEOどうしの話はお互いに矛盾する。

あるCEOは自分が成功したのは、異常なほど細かいことにこだわったからだと 言う。別のCEOは大きな目標を持ってそれに向かって前進したからだと言って いる。この場合当然細部よりも、長期的視野が必要になる。さらにworkaholic であることを自慢するCEOがあるかと思えば、measured paceを守り、仕事以外 の多くの時間を長期的な展望を考えることに使うCEOもいる。趣味として分厚 い歴史の本を読むのも経営者の役にたつと言う人もいれば、仕事以外には関 心が無く、家でも仕事の書類を広げているだけというのを成功の秘訣にあげる 人もいる。要するに経営者が100人いれば、100通りの経営論があると言うわけ で、絶対的なものはない、ということを作者は言いたいのでしょうか。

経営者であることの緊張は、特に中年になって初めて中間管理職になったよ うな作者のようなものにとっては、常に他の人のことを考えていなければいけ ないということにある。別に他の人を好意的に見るというのではなく、他人の 目を常に意識して、いつもgood moodな状態を保っていなくてはならないとい うわけです。少なくともそのように振る舞わなければならない。喜怒哀楽をも ろに出してはいけない。上役にも部下にも、自分が管理職にふさわしいことを 常に印象づけなければならない。だから作者によればBeing a middle manageris performance art.だそうです。しかもこの演技には管理職であるか らには、終わりがない。

この辺が作者がこの仕事に就く前の仕事とは違うようです。作家の仕事は本 質的に孤独な作業だし、ジャーナリストがときどき消化不良になったり、人間 嫌いになってもなんら不思議はない。フリーランサーは考え込んだり(brood y)、ひげをそらなくてもよいが、作者のつとめる会社では創造性を重視される プログラマーにbroodinessが認められるくらいです。とにかく管理者は元気で (chipper) なくてはいけない。

管理職は、ワシントンにいるTVの解説者とも違う。彼らは華やかな高給取り で、魅力があって、スタッフからちやほやされているし、子どものように甘や かされているが、なんら実権を持っているわけではない。裏でこつこつがんば って番組を制作しているプロデューサーのほうが管理職と似ているということ でしょう。だからタレントにとっては励みになるような訓練も中間管理職の参 考にはならない。

中間管理職は、ワシントンの専門家がTVで言っていることを見て、昔ながら の 実利主義者philistineのように考える。彼らに何が分かるのだ。従業員の 賃金をどうやって払うかも知らないくせに。彼らは意見を言うだけでなんら生 産的なことをしていないではないか。責任も持てないようなことについて、不 毛な議論をしているだけではないか。

作者が責任者となった部局はまだ利益を出していないようです。しかし少な くとも努力はしている。いまはワシントンの専門家よりも非生産的かもしれな いが、しかしこの小さな王国で生み出すことがやがては何か大きなことにつな がるのだ。作者が経営術をマスターしたときこそ、おそらくそうしたことがよ り多く起こるのだ。この作者の結論は私には非常にけなげに見えますし、そん な風に信じて頑張っている人も多いだろうと思います。

それにしてもESSAYの結論としては少し物足りないような気もしてきまし た。私も生き方としてはこうした人にはなかなか好感がもてますが、あまりに も当然すぎる結論を出されると・・・どうやらJobsの信奉者ならば、こうした 結論は言わないかな、という偏見とESSAYにはこんなことは書かないはずだと いう思いこみがじゃまをしているのかもしれません。



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