黙示録のようにはならないけれど(6-29)


*Apocalypse NOT (p.48-51)

2000年問題の記事です。副題というか最初のリード部分がすべてを表していま す。For most private computers, the notorious Year 2000 glitch won't be the end of the world. For Washington, however, it could be a disaster. 本文記事が民間関係の、囲み記事が政府関係のコンピューター問題 を取り扱っています。実際に読んでみた限りでは、やはり2000年1月1日には少 しの混乱は避けられそうもない、ということです。

最初に出てくるTim Mayの例は少々物騒です。彼は長年コンピューター技師と して働いてきて、引退後の生活をカリフォルニアのCorralitosの風光明媚な丘 の上で暮らしている。しかし彼がこの場所を選んだのは、単に景色がいいから だけではない。ここは農業的・漁業的に豊かだから、来るべき新千年期の飢え をしのぐのには最適の場所らしい。彼はさらに金を集め(非常時の場合はドル 紙幣なんか役にたたないから)、さらに大量の食料もため込み、恐ろしいこと に銃もかなりの数を所蔵している。彼によれば、デッドラインを乗り切れない ことが明白になってくるにつれて、彼のような人は増えてくるということで す。

Timはこの世の終末が近いと信じるカルトの一員なのか。そうではない。彼は 2000年1月1日にコンピューターのバグが引き起こす社会的混乱に備えて、自衛 しているわけです。この問題は前からときどき読んできて、どのような結果に なるのか、私のように想像力がないものには、なかなか分からないのですが、 どうやら残された時間が少なくなってくるにつれて、こうした動きも出てきて いるらしい。専門家はY2Kと呼んでいるようですが、果たして我々の情報化社 会が一瞬にして機能を失ってしまうのかどうか。まあ記事を読む限り、生活す る上では、少しの不便は出るかもしれないが、パニックに陥ることまではな い、ということのようです。

確かに大企業の60%は自分たちのコンピューターのthe first step of assessing whether their systems are ready for the new centuryも、完了 していない。ましてそのバグ対策を完了しているわけがない。自分たちに都合 の悪いことは、あまり公表もしないから、まあ混乱は起きる。There will be some extremely annoying, disruptive failures. But it's not going to be the apocalypse. あまり安心できないような言い方ですが。

とにかくY2Kを考えるとき、電気・食料・金・医療などへの影響を見逃すこと は出来ないのですが、この記事全体を通読した限りでは少しの影響は出る。電 力の場合、ドミノ効果として、local failureがregional blackoutへと広がる 可能性はある。電力が消えたら、コンピューターが使えなくなるわけですか ら、影響も大きいかもしれない。食料に関しては、流通機構の中で、普通は15 日から20日の食料供給がストックとしてあるから、短期間の不足には間に合 う。That [extra supply] is not something we're normally proud of, but it might come in handy. 普段は非能率的だが、いざというときには役にた つ、というわけです。しかしこれは広いアメリカのことですから、日本の場合 はどうでしょうか。日本の情報化が始まったのは、アメリカよりも遅いから、 コンピューターバグの割合は、アメリカよりも低いかもしれない。しかし効率 化はより進んでいると思うから、万が一対策が遅れたら、アメリカよりもひど い結果になるところもあるかもしれないなどと考えたりもします。

個々の事例は省略しますが、エレベーターは止まるかどうか、という問題にま で発展するのには驚きました。エレベーターの場合、ほとんどは大丈夫なよう ですが、しかしプログラムがチップの中に書き込まれているものが、5%足らず は存在するらしい。これはチップそのものを取り替えなくては、プログラムの 書き換えは難しいと思うのですが、単体のマシンの中には2000年になると動か なくなるものもあるかもしれませんね。

未来学者によれば、この経験は子孫への絶好の贈り物だということです。この さい、プログラムの年表示を4桁表示から5桁表示に直せば、人類はY10Kで苦し まなくてもいいから、ということのようですが、なかなか考え方が雄大です。 しかしY10Kが問題になるとき、こうした小さなことで文明が崩れるかもしれな いと考えると何かあっけないですね。

囲み記事は少し物騒です。アメリカ全土のコンピューターの4分の1を政府が所 有し、国防省だけで150万台所有しているが、実体はもっと多いらしい。しか も民間よりも、事態は厳しい。27年間軍事関係のコンピュータープログラマー であったBill Curtisは、現在国防省のY2K問題の責任者のようですが、彼はプ ログラマーとしてほんの数行しか4桁で年表示しなかった。後は全部2桁で書い たし、そのように指導してきていた。1995年に始まった国防省のY2Kチームは 現在まで29%しかその作業を終えていない。関係者によれば、アメリカの核兵器 は安全装置がついているから大丈夫だが、ロシアのがどうなっているか分からな い。2000年1月1日にロシアの核弾頭が一斉に世界各地に向けて発射される、ま さかそんな悪夢のようなことは起こらないと思うのですが。

とにかく2000年1月1日には入院しない方がいいかもしれない。医療装置が十分 働かず、unnecessary deathsが起きるかもしれないから。今回の記事はきわめ て冷静ですが、これから危機意識をあおる記事がさらに出てくるかもしれませ ん。



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