墜ちた偶像(6/29)


TIME US版、6/29の記事からです。あまり楽しくない記事ばかり読むのも困っ たものだと思いながら、つい読んでしまいました。

* A Precarious Genius
Michael Laudor was a role model for those stricken with schizophrenia--then he fell from grace

精神分裂症を克服し、有名人になった男性が、同棲している婚約者を殺し てしまった。彼にとっての救いとは何だったのか。世間的な名声や、金銭では なかったのでしょう。

難しい表現がいくつかあるのですが、それらを無視して大体の内容を書い ておきます。

Michael Laudorはユダヤ系の青年で、どうも長い間精神分裂症に苦しんでいた らしい。父のCharlesが生きていたときは、よかった。死の影におびえている 息子を現実の世界に立ち向かわせるべくいろいろ努力してくれたから。しかし その父は1995年に 前立腺ガンで死んだ。

父のおかげで少なくとも彼は病気を悪化させないで、克服できた。例えば記事 にははっきりと書いてありませんが、Yale大学を卒業してメーシー百貨店で忙 しい仕事に就こうとしていたとき、Yale Law Schoolに進学することを勧めた のも父だった。これは正解だったようです。なにしろMichaelは、Law School に入学を許可された日でも、The monkeys are eating my brainと叫んでいた くらいですから、かなり被害妄想的症状は重かったのでしょう。そのまま就職 していたら、多分回復は難しかったかもしれません。

マイケルにとってはLaw schoolは、アメリカのどの精神病院よりも治療として 役にたったようです。在学中の勉強を通して、彼は精神的に病んだ人々に向け られる偏見と戦う弁護士になることに生き甲斐を見つけだしたからです。そし て彼の分裂症克服の物語に対してScribner社は、出版の前払いとして60万ドル 支払った。さらに映画化の話も持ち上がり、一時は主役としてBrad Pittがマ イケルの役を演じる話も出たらしい。とにかくこうして彼はアメリカ人好み の、困難を克服した英雄になったわけです。

こうした中で悲劇は起きた。マイケルにはCaroline Costelloという婚約者で 同棲している女性がいた。彼らはともにYale大学の学部生時代から深く愛し合 い、キャロラインは病気の間も彼のよき理解者だった。彼女はユダヤ教に改宗 するためラビに相談していた。理想のカップルにみえた2人だった。ところが 先週の水曜日、キャロラインが料理ナイフ(chef's knife)で10箇所以上殺され て死んだ。マイケルが逮捕され、犯行を自白した。

前兆はあった。有名になったが、マイケルは法律を教える仕事に就くことが出 来なかった。work teaching lawというのは、弁護士のことではないような気 がしますが、はっきりとはわかりません。薬物投与を間違えたのかもしれない し、中止していたのかもしれない。特に8月には彼の本が出版される予定だっ たようですから、完全主義者のマイケルにはそのプレッシャーも大きかったの かもしれません。彼の文章はan almost mathematical use of languageで書か れていたようです。そして少なくとも母親は危険な兆候を感じていたようで、 警察に息子と将来の嫁のアパートに立ち寄って様子を見てくれるように頼んで いる。しかし警察が見つけたのは、キャロラインの死体だった。

最後はマイケルが1995年にマイケルが語った言葉で終わっています。"There is a notion in Judaism of tikkun olam, to heal the world."彼は自分の使 命を精神的に病んだ人々を救うことに置いた。しかし狂気の持つ複雑なサイケ デリックな世界の中で、彼は自分自身を破滅させたのかもしれない。

この文章は、一番最初に同じような精神分裂症に悩みながらも、1994年にはノ ーベル経済学賞を受賞したSylvia Nasarの話から入っています。精神分裂症か ら回復することと、救われることは同一ではない。普通の生活をすることが回 復であるならば、絵をかけなくなった画家はたとえ病気から回復しても、救わ れたことにはならないのではないか。マイケルもまた、自分の使命感を見失っ たか、あるいはまたその重みに圧倒されたとき、自分を救うことが出来なくな ったのではないのか。



感想はこちらに・・・YHJ00031@niftyserve.or.jp
Internetの場合は・・・ohto@pluto.dti.ne.jp


ホームページに戻る 

TIMEのホームページに戻る