人種融和の底流で(6/22)


TIME 6/22の記事からです。3人の白人が1人の黒人を残忍な方法で殺した。果 たしてその裏にKKKの影はあるのか。TIME, Newsweek, Sunday Timesの関連記 事を読んでみましたが、ここではTIMEの感想を中心に、一番詳しいSunday Timesで補うことにします。

*Beneath the Surface (p.28-29) 

49才になる黒人男性がヒッチハイクで3人の白人の若者と一緒になり、そのあ げくトラックで3マイル以上もひきずられ、その途中引きちぎられた体の部分 が道路沿いに75箇所以上にわたって撒き散らされるという陰惨な事件が発生し た。舞台はテキサス。

被害者はJames Byrd Jr. ,49才のAfrican American。逮捕された3人はいずれ も白人でShawn Allen Berry, 23才。John William King,23才。 Lawrence Russell Brewer ,31才。Berryがトラックの持ち主。Kingが事件を主導した人 物。2人は幼なじみで同じburglary chargeで刑務所に入っていたときにBrewer と知り合った。ちなみに被害者のByrdも刑務所に入っていたことがあるようで すが、こちらはSunday Timesの表現では、a harmless ex-convict who liked to play trumpetとあります。

そして舞台になったのが人口7500人(NWでは8000人)の小さな町Jasper。市長は 黒人、郡保安官は白人。人口比率は白人55%、黒人45%。副題にあるように、か つてのDeep Southの町ではなく、New Southの町で白人と黒人の関係はうまく 行っていると思われていた町。そこで過去に例を見ない残虐な事件が起きただ けに、住民のショックは大きい。主犯格Kingの父親さえもが、息子の犯行を信 じられないといいながら、被害者の死を痛んでいる。ただ底流として、黒人と 白人の関係が必ずしもうまく行っているといえない事件も起きている。

例えば数年前人気があった黒人高校生のフットボール選手が自殺した。彼は白 人の女の子とつきあっていた。本当に彼は自殺したのか、もしかしたらリンチ にかけられたのではないかという疑いを一部の人は持っている。そして2週間 前には白人の若者が白人の十代の少年たちから殴られるということが起きてい る。しかし今度の事件はその比ではない。

足首をチェーンでトラックと結び、2マイルから3マイル(Asia版では3kmから 5km)も、多分普通の速度で引きずり回った。体はバラバラになり、あちこちに その遺骸が残された。全部で75箇所(STでは78)のようですから、多分原形はと どめていなかったのでしょう。そのあまりの残忍さの故か、近くの町のVidor にあるImperial Wizard(これが多分KKKのはずです)は、Byrdの死を悼み、Klan とは関係が無いという声明を出した。

TIMEはKKKとの関係は薄いというニュアンスです。そもそもKKKは世間では有名 だが、勢力は落ちている。ただしそれに代わる過激な人種差別団体がいくつか 存在する。その中で有名なのがAryan Brotherhood。ABのいれずみが、King や Berryの体から見つかっている。この団体はかなり過激で、1960年代にカリフ ォルニアの刑務所で結成されている。We recruit criminals.と関係者は豪語 していますが、今度の3人のようなpretty thievesは相手にしないと言ってい ます。これだけでもそのすごさが分かる。さらにアメリカの刑務所は犯罪者を 更正させるのではなく、より重大な犯罪、すなわち人種主義者を養成してい る。主犯のKingも刑務所に入ってから、過激な言動が見られるようになった。 これはSunday Timesが詳しく書いていました。

それに最近Jasper付近で見逃せないのが、Christian Identity Churchという 宗教組織。彼らは、既存の無名の教会を買収しては、その教えを広めている。 Amazing Groveを歌いながら、Sieg Heilと言っている。Amazing Groveは有名 な賛美歌。Sieg Heilはナチスが愛用した「勝利万歳」という言葉。いわば宗 教に名を借りた人種主義組織です。彼ら3人はこの組織と関係がなかったの か、調査中のようです。

ただ人種間の犯罪の95%は、そうした人種差別組織のものではない。Jasper付 近では、白人が黒人やヒスパニックに職を奪われると言う不満も強いらしい。 だから今回の事件がoppotunity crimeであるかもしれない。ゆきずりの犯行と いうか、多くの偶然が重なった結果だというわけですね。たまたま夜遅く黒人 が1人で歩いていた、たまたまトラックにはチェーンがあった、たまたまこち らは3人で向こうは1人、しかも酒を飲んで気が大きくなっていた、などなど。

兄が白人たちによって殺されたことを知った妹は、銃で殺されたと思った。悲 しい運命を受け入れるべく、しかし最後に立派にあの世に送ろうと思って、一 番いい服を着せてやるために、彼女は兄のアパートに行った。真相を知ったと き、服を着せてやる兄の死体はなかった。この記事はやりきれなさだけが残り ます。

Sunday Timesには、最後に各人種差別組織のリストが載っています。



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