ヒロポンの復活(6/22)


TIME 6/22のUS版の記事です。先週号の記事ですし、読み終わってからも大分 時間がたっていますが、一応記事を見ながら思い出しつつ書いてみます。な お、具体的なケースが多く紹介されていますが、長い記事ですから、ほとんど 省略すると思います。

*Crank

昔はspeedと呼ばれたcrankがまたアメリカで広がりつつあるという記事です。 このcrankは昔日本で初めて製造されたという記述がありました。辞書で調べ ると、speedという名前でよく知られているこの薬物は中枢神経系興奮剤 methamphetamineで、methともいわれ、日本ではヒロポンというどこかで聞い た名前と同じものらしい。これが女性のダイエット薬として人気がでてきたの か、よく売れているらしい。確かに100時間も睡眠・食料をとらなくても、楽 しく夢の世界で遊べるようですし (^^;、体重は確かに減るでしょうが、い ざやめようと思っても薬物の作用としてそんなに簡単に切り替えれるわけがな いから、これでいいわけがない。

この薬物が蔓延しているのがアメリカ全土かどうかはよく分かりません。記事 では、on America's heartlandでとなっています。具体的には、グレートプレ ーンズの北西部の中心都市Billings(人口91000人)です。多分ここは石油精製 産業と地域医療の中心地。しかしバーが立ち並び、モンタナ州でありながら、 ワイオミング州やサウスダコタ州からもカウボーイたちが現代風R. and R. 求 めてやってくる。R. and R. は、R. and D. (研究開発)みたいなものかなと思 っていたら、警察俗語で強姦と強盗 (rape and robbery)でした。ビリングス はいわば現代の西部劇的荒野の都市なのかもしれません。

このビリングスで、人々はクランクのためにすべてを失いつつある。家庭も、 仕事も、家も、銀行預金もそしておそらくは自分たちの心までも、というわけ です。このクランクは80年前に人工的に日本で発明された。第2次大戦で兵隊 が使用し、50年代では主婦の間に、60年代にはヒッピーの間でspeedとして流 行った。そして現在では時には小学3年生までもが使用しているというわけで す。

そしてその製造・使用に関しても問題がある。製薬者が錠剤という形で提供し ているわけではない。製造法も粗雑で、吸ったりかいだり注射をつかって利用 する。(smoked, snorted, or injected)  人々をコヨーテのようにしてしま い、ビリングスの町はもうめちゃくちゃになってしまった。中毒者の家は窓を 銀紙で覆い(中毒者は日光を嫌うそうです)、街中に注射針があふれ、銃乱射が 起きる。

約4年前までは違法薬物といえばマリファナとコカインが主流だったのが、あ っという間にクランクがそれらにとって代わった。取り締まりはマリファナな どよりはるかに難しくなった。それは屋内でTupperware partyの方式で販売さ れ、製造も合法的に手に入れた材料を使って、Internetから手に入れた知識を 使って簡単に出来る。Tupperware partyというのは、辞書によれば「セールス マンが主婦たちを集めてホームパーティーを開き, 製品の宣伝と販売を行な う」こととあります。だからコカインと違って簡単に家庭の中に入っていけ る。警察はその製造元をBeavis and Butt-head labsと読んでいる。Beavis and Buttはよく分かりませんが、多分手軽に素人が製造できることを、意味し ているのだろうと思います。

しかしなぜクランクで、しかも今なのか。主として白人層、しかも田舎にまで 広がっているのはなぜか。はっきりとした理由は分からない。ただ現代の文化 がKeep going, keep moving and do it all. だということ、そして特に女性 にとってはwannable-supermodel factorが入っているのかもしれない。せわし い時代の中で、supermodelのような体型が理想とされる。こうした時代風潮の 中でコカインが手に入りにくいオレゴンからアイオワまで、貧しい人々にクラ ンクがいきわたり、West and Midwest crank beltが出来上がった。組織暴力 が大量生産しているカリフォルニアやメキシコから、直接に、あらゆる方法で 手にはいるようになってきている。

クランクは安すぎて、簡単に手に入りすぎて、そして中毒になりやすい。子どもたちへ の浸透も高い。10才か11才で薬をやっていたり、そうした薬物使用者から虐待されたり している少年・少女もかなりいる。6才で繰り返し強姦を受けたり、11才で売春を強要さ れたりした少女もいる。いずれもクランク中毒の母親が絡んでいるし、中にはそうした 生活を当たり前のことと受けとめる少女たちもいるらしい。

E.R.(Emergency Room?)に運び込まれるクランク中毒者はおおまかに3つに分類される。

1番目は、'I've hit bottom'というべき中毒者。もう行き着くところまで行った、とい う絶望にとらわれている患者たちのことかもしれない。10日間文字どおり不眠不食で、 最後には薬もそこをつき、絶望感に陥り動くことさえ出来ないもの。

2番目は人騒がせなタイプ。被害妄想が大きいのか、通りにでては喧嘩したり、叫ぶ。人 のいうことを聞かないタイプです。

3番目は薬のやり過ぎで腕が麻痺し、呼吸するのも困難なもの。

しかもこのどのタイプをとっても急増している。汚染は確実に、広がり、程度 も悪化している。この薬は手軽に手にはいるから罪悪感も薄いのかもしれませ ん。しかしもともと効き目は強いようで、ドラッグの中で一番たちがよくない と考える専門家もいるようです。

クランクは止めようと懸命に努力している人も何人か紹介されています。しか しやはりいったん中毒に陥ったら、なかなかそこから抜けきらないようです。 しかもビリングスでは、クランクはいわば社交のためには必要不可欠なものの ようです。パーティを開けばそこに必ずクランクあり、という状態のようです から。親たちが子どもにクランクを渡すのも普通なようで、使用年齢は毎年確 実に下がっている。

しかしクランクを使用し続けると、3カ月もほとんど眠ることも無い人もいる らしい。時間感覚も薄れてくるのでしょうが、現実と空想、そして妄想が入り 乱れてくる。木を見ると、必ず怪獣が後ろに隠れているらしいし、いろいろな imaginationが頭の中に沸いてくるのでしょうから、私から見れば、これはな かなか刺激的な人生にも見えますが、もちろんそんなことはないでしょう。一 度この深みにはまったら、なかなか脱出は出来ないと思います。大体すぐ眠た くなるような私のようなものにとっては、全然眠くならないというのが異常だ し、食べなければ体重が減るのは当たり前なのに、それをダイエット薬と勘違 いするのもおかしい。

ヒロポンというのは戦後の日本でも流行った、というのはどこかで読んだ記憶 がある。現在では多分死語だと思うのですが、それとも今でもまだ使われてい るのだろうか。名前だけかっこよくすれば、知らないままに中毒症状に陥る人 は今でもいるのかもしれません。

この記事長いものですから、特に後半部は本文はほぼ省略した形になっていま す。具体的なケースも最初に書いたように大体省略しています。しかし最初読 んだとき、小学校で薬物検査をしたら十何人かの子どもたちが逃げ去った、つ まり小学生にも常用者ないしは経験者がかなり多いというのがどこかに書いて あったと思うのですが、今回ざっと読んだときには見あたらなかった。あれは どこに行ったのだろうか。私もこの記事を読んでいたら、空想と現実の境目が だんだんとぼやけてきました。 (^^;



感想はこちらに・・・YHJ00031@niftyserve.or.jp
Internetの場合は・・・ohto@pluto.dti.ne.jp


ホームページに戻る 

TIMEのホームページに戻る