アメリカ軍による最初のサリン事件(6/15, ST)


ベトナム戦争当時、アメリカン軍がサリンを使っていたのではないかという疑 いが強くなっているようです。6/15のTIME、6/14のSunday Timesがどちらもか なりのスペースを割いて報告しています。内容はほぼ一緒、引用文なども重複 が多い。TIMEの記事を軸にして簡単に書いてみます。

*Did the U.S. Drop Nerve Gas? (TIME 6/15 p.29-31)
*Apocalypse Row (Sunday Times 6/14)

1970年9月、公式には戦場でなかったラオスの地で、ベトナム解放戦線とパテ トラオに包囲されたアメリカの秘密部隊を救出すべく、アメリカ軍は空から神 経ガス、おそらくはサリンを投下した。空から投下されたbad of the badsと 呼ばれたものの正体が今明らかになりつつある。

A-1 スカイレイダーからそれが投下されると、爆発音の後、湿った霧が立ちこ め、ベトナム兵は一瞬のうちに地に倒れ、嘔吐し痙攣していた。そのあとそこ ら中に死体が転がっていた。一瞬前までは兵士であったものが、即座に物言わ ぬものとなった不気味さ。

アメリカ軍脱走兵を皆殺しにするために行ったOperation Tailwind(追い風作 戦)。ここで使われたのはGBと呼ばれていた神経ガス。どうやら松本・東京地 下鉄で使われたサリンであった可能性が高い。公式文書は一切残されていな い。

ただ1970年当時の統合参謀本部 の議長だったThomas Moorer海軍大将がもこの 追い風作戦を始め、ベトナム戦争では何回かサリンを使用したことを証言。ど うやらガス使用の命令は政権TOPから出ているようですが、当時のキッシンジ ャー大統領補佐官は、現在一切のコメントを拒否。さらに当時の防衛長官は神 経ガス使用は記憶にないといいながらも、Mooreの証言を否定しない。当時そ の場に居合わせたものは全員が、今日まで後神経ガスにかかったと見られる症 状に苦しんでいる。

サリンは戦闘現場でだけ使用されたのではないらしい。翌日攻撃をする村にか けてあらかじめサリンを散布していたこともあるらしい。当然民間人も多く死 んでいる。

しかもこうした作戦の目的はアメリカ脱走兵を抹殺すること。当然のことです が、救助ではありません。彼等の持っている通信・軍事知識が、敵にわたるの を恐れてのことです。どちらの記事でも、アメリカ人らしい男性2人が穴の中 に逃げ込んだ所を、アメリカ軍の手榴弾で殺されている様子を書いています。 公式発表では脱走兵は全部で2人。しかし実際は300人以上いたという証言もあ る。公式には彼等を殺したという一切ない。

さらにこの追い風作戦を受け持ったのが、SOGという秘密部隊。これは秘密部 隊というより影の部隊です。正式にはStudies and Observation Groupです が、公式には存在せず、そのかわりに非通常兵器を含めあらゆる手段を使って どのようなblack operationでも成し遂げた。彼等のモットーは「殺し尽く せ、あとは神にまかせよ」(Kill them all, and let God sort it out.)とい うことだったらしい。たとえ彼等が殺されても、正規の慣行で本国に送り返さ れることはなかった、とどこかで書いてあったようです。

もちろん今でも神経ガスの後遺症に苦しむかつての兵士の中にも、神経ガスを 使ったことを肯定的に考える人もいるようです。しかしクリントン政権にとっ ては大分苦しい。クルド人に神経ガスを使ったことでフセインを責める口実の 根拠が失われる。

それにしてもすさまじい。現在世界各地で起きている紛争でも似たような出来 事が日々起きているかと思うと、あまり楽しくない記事です。



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