核戦争の危機(6/8)


TIME US版6/8のインド・パキスタンの核実験をめぐる記事です。事実のそのも のは、日本でも詳しく報道されていますから、気づいたところなどを簡単に書 いておきます。

*Enemies Go Nuclear
Pakistan answers India with its own atomic tests. Now will the two rivals be able to avoid going to the brink?

パキスタンの核実験がかつての冷戦下のように核抑止力が効いて、インド亜大 陸でも緊張しながらも安定した関係が続くだろうという見方はほとんどない か、少数派のようです。今回のパキスタンの核実験も、 It wasn't a question of if, butwhen.(US News)という見方が支配的でしたが、事実そう なった。現在の予測としては、南アジアで将来核戦争の可能性が高い、という のが支配的なようです。

TIMEは両国を2匹のサソリに例えています。two scorpions in a bottle, eyeing each other warily, showing off their stingers, dimly aware though not properly worried that an attack by either would mean death to both. このさそりは同じビンの中で自分たちのstinger(サソリの針である と同時に、携行用肩撃ちの防空ミサイル兵器の意味もあります)を見せびらか し、もしお互いに闘ったら自分たちに破局が訪れることは、どうにか分かって いるのだが、そうかといってそれを回避するための努力をするどころか、ます ます相手を威嚇し続けている状態のようです。

クリントン政権もいろんな状況を想定しているようです。その中でカシミール での紛争が、通常兵器による戦争に、そして核戦争に発展するという見方が強 い。頭を冷やして冷静に考えれば、核を使うことが無謀だと考えるはずです が、現在の所は「核には核を」もしくは先制攻撃として使うかもしれない。両 者のこれまでの歴史的・宗教的な背景を考えれば、どうも危なっかしい。

かつての米ソが持っていた核使用のチェック機能がうまく働くのか。50年間に 3度の戦争を闘った両国は、現在でも国境付近では毎週のように死者がでてい る。米ソのように武器削減交渉や首脳間のホットラインなども多分行われてい ない。緊張関係が続いているときには最高度の理性が要求されるが、指導部が 偏狭な愛国心を押さえ込む可能性は将来もおおきくないかもしれない。クリン トンがパキスタンのシャリフに4度目の電話をして、もし核実験を思いとどま れば、通常兵器や財政援助を提供するといったのに対して、シャリフの返答 は、 I don't think I'll last in office more than two or three days if I don't make a test. 世界もこの地域の人々のどろどろとした感情を理解し ていないが、これこそが暴発の原因となることも確かなようです。

アメリカが現在恐れているのも、数カ月以内に両国が核弾頭ミサイルの配備を 終わった後に、どうなるかということ。相手からの攻撃を恐れて核使用の警告 を出したものの、スパイ衛星などを使った情報が入るわけではないから、疑心 暗鬼から警告だけではすまなくなる。冷戦時代にあっても、見込み違いから、 核戦争になったかもしれないa hair-trigger situationの場面があった。核の 管理者がしっかりしていた大国の場合であっても、思わぬミスが起こり得た し、両国の場合管理態勢がしっかりしているとも思えないからどうも不安でし ようがない。さらに両国の政治的・経済的安定が、国際的制裁の結果ぐらつい たら、どうなるのか。

アメリカの高官の中には、There may be a spiraling arms race here, but we do not think it is inevitable.と言っている者もいるようです。世界は この言葉を信ずるしか無いのでしょうか。今回の両国の核実験の前に、ペンタ ゴンでは、もし両国が核武装したとしてカシミールをめぐる紛争で核使用をさ せないためにアメリカが何を出来るかのsimulationを繰り返したようです。結 論はいつも同じでした。核戦争を止めることは出来ない。当分は世界に一種の 無力感が残るようです。



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