ちまたにあふれるチキンスープ(6/8)


* A River Of Chicken Soup

チキンスープが世のなかにあふれているという話しです。といっても、本の話 しですが。Chicken Soup for the Soulを手始めに、今では大ベストセラーシ リーズになったチキンスープシリーズ。これは大分前にもこの会議室でも話題 になっていたのですが、私は読んだことがないから良く知りません。しかし先 週はPublishers wWeekly paperback best-seller listのTop10の中の5冊がこ のチキンシリーズだというのですからすごい。現在まで総計で2800万部以上売 れているようです。これからも続々でてくるようで、将来は合計70タイトルに もなるとか。

この本は1989年に2人の著者がtheir favorite inspirational tales and poemsを101の話しをタイトルごとに分類して発行しようとした。人生論の一種 だと思うのですが、いろいろな心を楽しくさせたりする話しが101載っている ようです。しかし持ち込んだ出版社はどこもこの出版計画に心を動かされなか った。33社で断られて、ようやく1993年に小さなフロリダの出版社から発行。 販売予定20000部。しかしChicken Soup for the Soulは700万部を記録した。 そのあと著者のJack CanfieldとMark Victor Hansenは、立て続けにChicken Soup for----の名前を冠したシリーズを発行し続けているというわけです。

すべての本に共通なのは、101のほとんどが3ページたらずの、心や魂に訴えか ける物語から成り立っていること。101というのは、Hansenのいうところで は、霊的な数字だそうです。 earnest, unadorned and ruthlessly uplifting な物語が、"On Love," "A Matter of Attitude," "Live Your Dream," " Learning to Love Yourself"という分類の下に収録されているらしい。そのテ ーマは母の愛情、困難を克服する方法、誤解を解決する法、かわいい子犬、子 供の果てしなき智恵、などなどらしい。その影響力はImagine a bath in strawberry shortcake. Imagine a meal of chocolate eclairs. With a Napoleon for dessert. And a milk-shake chaser. とあります。良く分かり ませんが、甘ったらしく感傷的な考えになるということなのでしょうか。

どうしてこんな本がこれほども人気があるのか。どこでも読めて、短くて、読 んでいて元気づけられるからということのようです。調査によれば、読者は85 %から90%が女性。しかし著者はもともと女性用に書いたわけではない。彼等は もともとはビジネスマン向けの講演などでその話術に磨きをかけてきたようで すから、その中でそうした物語もたくさん集めてきたのでしょう。ここでいう ビジネスマンはhardened businessmen, who nowadays are taught to share feelings, break down emotional barriers and awaken their Inner Capitalistsのことです。アメリカも、標語とか、スピーチ実例集などが良く 売れるのでしょうか。Chicken Soup is less the product of the feminization of American culture than of the infantilization of corporate America. というのは、アメリカ社会が女性化しているというより も、社会全体が足についた思想を失いつつある、ということでしょうか。細切 れの物語で、部下の勤労意欲を駆り立てても、あまり効果はないかもしれませ ん。

しかし読者からは、自分たちが知っている多くの話しが殺到しているようで、 それを101という枠内に収めて、また新たなチキンシリーズが出来上がる。道 徳心のない昂揚心、宗教のない霊感、これこそポストモダンの90年代にふさわ しい信仰だというわけです。

ところでチキンスープの名前から人は何を連想するのでしょうか。私には辞書 に書いている意味ではどうもぴんと来ない。



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