名声と脅迫と(5/25)


TIME 5/25のUS版からです。American Sceneからです。

* Of Mercy, Fame--And Hate Mail Dubious rewards for the guard who uncovered the Holocaust bank accounts

ナチスホロコーストの犠牲者のスイス銀行口座の資料が闇に葬られようとして いたのを発見した警備員は英雄か、それとも裏切り者か。

チューリッヒのスイスユニオン銀行の夜景をしていたChristoph Meiliは、 1997年1月、シュレッダールームで帳簿が入った2つの箱が寸断機の側において あるのを見つける。ナチの迫害から生き残った人々が、スイスの銀行に預けた 金の返還訴訟を起こしていた最中の出来事です。Meiliは、無口なプロテスタ ントですが、この事実を暴露した結果、国際的に有名になるが、スイスでは迫 害された。チューリッヒの検察は彼が銀行の守秘義務を規定する法律に違反し たとして起訴します。(後に起訴は取り下げ) そしてMeiliは仕事は失い、殺 害の脅迫や反ユダヤのhate-mailが彼の元には殺到します。1年くらい前に、こ の事件は結構話題になったのではないかと思いますが、私はこのことはあまり 記憶がない。

しかしどうやら、彼はスイスを去ってアメリカに行き、銀行のdoormanの仕事 をしている。その一方で彼には講演というか、どうして彼がそうした口座の元 帳を発見しその事実を公表したのかを話したりするのに忙しい日々を送ってい るようです。「私は歴史上政治亡命を求めた最初のスイス人です」と言って笑 わせているようですから、無口なスイス人も人前で話すことに慣れてきたらし い。

もちろん彼に職を与えたり、住居を提供したり、英語のレッスンやら、はては 2台の中古車(10年ものとなっていますが)を与えたり、年収31000ドルのドアマ ンの仕事を与えたのも、すべてユダヤ人のネットワークです。本文の最初に は、「正義の異邦人には、主の恵みがありますように」(And for therighteous gentiles, may your mercies be heaped upon them, O Lord.) というヘブライの祈りで始まっていますが、ユダヤ人の価値観ははっきりして いますね。

スピルバーグに会ったり、イスラエルにはhumanitarian award を受けるため に旅行したり、ドイツのテレビからはインタビューを受けたり、彼は一躍有名 になったわけです。しかし一躍有名になった彼も再び元の世界に戻ってきた。 So, despite the taste of glamour, Meili has come full circle--from security guard to player in a vast historical drama and back to security guard.

しかしドイツの新聞が彼のe-mailのアドレスを載せたことから、今でも彼には 脅迫状が届いている。さらにスイスの新聞は彼の少年時代の非行歴を載せたよ うです。祖国での彼の評判は惨憺たるものらしい。一方彼もスイスユニオン銀 行に損害賠償訴訟を求めているようです。彼はあまり金には執着していないよ うで、そうした賠償金やら映画化が行われた場合の契約金はホロコースト犠牲 者の団体に寄付するらしい。

一連の出来事がどうした結末になるかはまだ分かりません。ユダヤ人団体は70 億ドルの資産が、まだスイスの口座に眠ったままだと主張しているようです が、スイス側はこうした前例があるだけに説得力が弱いかもしれません。

正義の異邦人には恵みがある。しかし国を捨てなければならなかった者として は、今までの所ほとんど恵みは無い。「正義の異邦人」を見て「良きサマリア 人」を思い出しましたが、これは新約の話でしたから、当然そうした表現はユ ダヤ人は使わないだろうと思います。



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