タイタニックの謎(4/13, Essay)


*The Titanic Riddle(p.112) 
Should a good feminist accept priority seating on a lifeboat?

TIME April 13から、Essayを読んでみました。もっともこれは3月30日のUS版 で読んでその時にも気になっていたのですが、Asia版にも載ったので、もう 1度読んでみたわけです。多分、どなたもUPしていないと思いますが、このと ころあまりまじめに会議室を覗いていなかったので、もしも誰かが既に話題に していたら、申し訳有りません。

映画タイタニックは、依然として観客を集めているようですが、このEssayは 船が沈む時、そして救命ボートが足りなかったら、なぜ女性子どもが優先される のかという点を話題にしています。例によってCharles Krauthammerの文章で すから、なかなか楽しめました。

確かに何故女性子どもを優先するのか。弱者である子どもを優先するのは分か る。でもなぜ女性を子どもと同等に扱うのか。これはフェミニストにとって は、ゆゆしきことではないのか。アメリカと日本のフェニズムの違いがあるよ うにも感じますが、まずはKrauthammerの文章を私流に勝手に解釈して書いて いきます。

映画タイタニックはその時代の背景をうまく描き出していることも魅力の1つ だ。服装やら、その時代の豪華さ、階級差別、そうしたものは現代存在してい たらまた違った感想をもつだろうが、歴史的なものとして楽しむ分には何等差 し支えない。ところが海上において緊急時に女性子供を優先して救助するとい う考えは現代でも生きている。映画の中でも太った男たちが女性よりも先に、 あるいは女性と並んでボートに乗ろうとしたとき観客からはブーイングが起こ った。

しかし女性を子供と同一に扱うことはアナクロニズムの最たるものではないの か。自尊心の強い現代人ならば、フェミニストたらずとも、こうしたことは女 性に対する過保護であり、女性蔑視ではないのかという思いを持たないだろう か。しかし1912年と同じく、現代でも女性子供という表現は普通に使われてい る。

虐殺事件が発生すれば、死者何人、そのほとんどは女性子供とか、そのうち何 人が女性子供であるとかが報道される。ここから推理すれば、成年男子の死者 数は分かるが、成年女子の数は女性子供全体の中に隠れて把握できない。女性 が戦闘機に乗る時代に、女性が子供と同一視されることに、たじろぎはないの か。

子供が特別に扱われるのは理解できる。彼らは、無力で無邪気(innocence, 無 知)だから。彼らには理性も経験も不足している。つまり自分を守れないし、 他人に危害を加えることもないから、彼らを守ってやるのは大人の義務だ。

女性子供という表現は、女性をこうした無力な、そして道徳的には単純な5才 児と同一視するようなものではないのか。これは男性だけが選挙権を持ってい たり、女性だけを区別して求人するような時代だったら、分からないでもな い。それは女性に対する法的社会的束縛を補完し、補償するものだったのだか ら。

しかし現代は教育・雇用・政府・スポーツなどのあらゆる諸権利において男女 平等が実現している。そうしたときに、女性を子供と同じように扱うことがは たして正しいことなのか。

進化論的心理学者にいわせれば、緊急時に女性の命を優先することは、子孫を 残すという種の保存の要請に他ならない。わずかな男性と多くの女性が生き残 った社会の人口は増えるが、逆にわずかの女性と多くの男性が生き残ってもそ の社会はたちゆかなくなる。だから生物学的に言うなら、種の保存という観点からは 女性が男性よりも貴 重なのであり、将来の種たる子供たちと同様にその生命に対して手厚い保護を 与えているのだ。この論法は一種の還元主義で、鶏は卵が別の卵を生む 1つの過程に過ぎないという論法と同じだ。

しかし人間はもちろん単なる子孫製造器ではない。騎士道の伝統とも矛盾す る。おそらく実際は女性子供は「女性と子供」(women and children)というこ とではなく、「子供のための女性」(women for children)なのだろう。子供と 親の絆は、実際は母親の方が父親よりはるかに強い。だから子供のために、女 性も一緒に救命ボートに乗せてやるのではないのだろうか。

しかしこうした子供中心の立場から、この問題を考えるのも行き過ぎの面があ る。ではもしタイタニック3世号に、独身の男女だけが乗っていたらどうなる のか。子供は1人もいなくて、母親も父親も1人もいない。そのとき氷山にぶっ つかった。救命ボートが足りない。私のシナリオでは男たちは、説明はつかな いが勇気を示すために、レディファーストの精神を発揮する。しかしフェミニ ストの女性たちは、自尊心から、それを拒絶する。その結果はどうなる。硬直 状態になる。この映画の最後はどうなるのか。どう終わらせたらよいのか。急 げ。船は沈んでしまうぞ。

最後の文章から見れば、作者は必ずしも女性子供を優先するという原則は否定 していないようです。こうしたことに男女平等をやたらに振り回すというのは あまり感心しないということなのでしょうか。

映画のタイタニックも、もちろん実際のタイタニックも幾多のドラマがあった ようですが、現在でも通用するのでしょうか。船長は船とともに沈むというの はまあ今時考えられないでしょうが、最後に船を離れるという伝統は残ってい るのでしょうか。



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