マルコポーロより前に旅したユダヤ人 (12/8)


TIME Asia版12/8からです。実はこれと同じ記事は、1月以上前にNewsweekで読 んでいます。感想も書きました。どうしようかなとも思いましたが、TIMEの方 が詳しそうですから、私にとって面白かったところを中心に書いてみます。

*The Traveler's Tale (p.48-49)

1271年、マルコ・ポーロに先立つこと1年、中国に旅をしたイタリア在住のユ ダヤ人がいた。彼はその旅行の記録を残していた。それがついに英訳されて、 イギリスのLittle Brownから、392ページの本となって出版された。この歴史 的ともいえる偉業に対して学会・出版界の反応は冷たい。問題は、ただ1つこ のThe City of Lightを書いたとされるJacob d'Anconaが実在の人物であった かどうかということ。しかしもちろんこのことが否定されれば、この本の存在 価値がないわけですから、これは当然のことです。はたして、真書なのか、偽 書なのか。

全体の感じでは、やはり?という感じです。本文では翻訳者とされるDavid Solbourneの主張を中心に書かれていますが、やはり記事を書いている人もあ まり信用していないような書き方かなと思いました。

大体この原稿を匿名のイタリア人が所有しており、翻訳者のSolbourne以外に は誰も見せようとしないということ、これは小説だったら常套手段でしょう。 これが歴史的旅行記録、しかもマルコポーロ以前のヨーロッパ人が見た中国観 察記録ということで、資料的価値があるということから問題になった。しかも 他のどの学者も閲覧を許されず、写真複写も許されない。アメリカのLittle, Brownはついにその出版の無期延期を決めてしまった。

だからまあ私もこれは偽書の歴史に新たなリストを追加しただけだと思うので すが、こんな騒動は個人的には別にかまわないと思います。 (^o^) 面白い し、推理する楽しさがある。最近話題になったケネディの偽造文書の金銭がら みのどろどろしたのと比べたらまだ罪が軽いと思うのですが、これには他の人 からは異論があるかもしれない。

面白いから、Solbourneの言い分を聞いてみます。彼は以前は政治学の講師だ ったようで、多くの著作があるようです。歯切れがよく、ブレア政権の犯罪に 関する法案作成に当たっても参考にされたようですし、かなり有名な人なので しょう。彼にいわせれば、この騒ぎは学会の彼に対する嫉妬がすべてだという ことです。ヘブライ学者でもなく、イタリア専門家でもなく、中国専門家でも ない彼がこうした文書に専門家を差し置いて接近を許されたということで、学 会関係者の面子がつぶれたから、騒いでいるのだということでしょうか。  (^o^)

専門家の知識がいかに浅薄なものであるかを示しているともいっていますが、 これはたしかにこの本が今までの専門家が知っていなかったことを詳しく書い ているようですから、まあ真書であるならば確かにそうかもしれません。 (^^; それとも専門家のたこつぼ化を皮肉っているのだろうか。

しかしその専門家の批判はもっともなものがあります。12世紀の商人と20世紀 の翻訳家の政治的宗教的見解がほぼ同じなのはどうしてか。Solbourneは、こ れに対してJacobを自分が思想的影響を受けたものmentorであり、自分の考え の代弁者だというようなことを言っていますが、いかにも苦しい。その他資本 主義とか、教育とか、さらにはユダヤ人問題についても2人の立場はほぼ同じ だとか。ここで資本主義という言葉がでているのには少し驚きました。記事で は当然のこととして何も書いていないのですが、12世紀の商人が資本主義につ いて何を語っているのだろうか。当時のイタリアは貿易等は盛んだったはずで すが、まさかそんなことではないでしょう。

さらにSolbourneは、現在の議論は文書の真贋論争や歴史的事実の細部の間違 いばかりを問題にしていて、この書物のもつ政治的哲学的な広い視野を評価す ることを忘れていると苦情を言っています。これがおそらくは彼の本音でしょ う。彼自身が戸惑っているのかもしれない。こうした目新しい形で自分の思想 を披露したら、とんだ不名誉を受けるかもしれないことになった。彼はいつか この文書の正しさを証明して貰うために、科学者や学者に見せることが出来る かもしれないと言っています。しかし今はこの空騒ぎを冷静に見守るそうで す。文書の所有者は最後まで、出てきませんね。 (^o^)



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