シャングリラを騒がすディスコ(TIME/Nov.4)


TIME/NEWSWEEK愛読者のみなさん、こんにちは。

チベット問題を取り扱ったTIME(ASIA,p.34-36)の記事です。

Shangri-laは理想郷です。Hiltonの小説で触れられて以来、多分チベットあた りにあるだろうといわれている楽園です。超古代文明を論ずる者の中には、ポ タラ寺院(?)だかの、地下には理想の世界に通じる入り口があるとかないと か、いろいろ言われます。

仏陀を讃えるマントラが、チベットではあらゆる所で聞かれる。首都のラサでは 最近少し変わってきた。ディスコ・売春宿・カラオケが増えている。しかしビ デオカメラが町の広場を監視し私服が巡回している。共産党政府は学校でチベ ット語に代わって中国語を教えようとしていると言われている。

1950年のチベット支配以来中国政府は支配を強め、37年間インド亡命中のダラ イ・ラマの影響力を弱めようといろんなことをやってきた。ラサには6万人の 中国軍人・警察官が配されている。中国はチベット人を宗教にではなく、経済 支配を緩めディスコや売春宿を認めることで、現代社会に目を向けさせようとし ている。ダライラマの言葉によれば、文化的抹殺が行われている。

チベットからは断片的な情報しか伝わってこない。ジャーナリストは入ること を禁じられ、ノートにメモをとることさえ危険なことがある。先週チベット系 アメリカ人がスパイ容疑で逮捕された。

1994年クリントンが最恵国待遇を改定して以来、ますますチベット固有の文化 への締め付けは強まっている。ダライラマ側がチベットのidentityをなくそう としていると主張するのに対し、中国側は国内で最も遅れた地域を開発し融合 しようとしていると反論している。中国政府によればダライラマは長い間国外 で祖国を分割する活動をしていることになる。チベットは中国の不可分の領土 であり、チベット問題は国内問題というわけだ。

中国は僧侶への支配を強め、特にダライラマへの忠誠を禁じている。寺院・僧 侶との間でいろいろな軋轢が生じ、死者もでている。

長年寺院内には中国政府に情報を漏らす者がいたが、その数は増えている。ダ ライラマの後継者を選ぶ責任のあるパンチェンラマの指名に関しては両派で別 れている。

過去3年間中国政府は他の地域からのチベットへの移住を奨励してきた。その 数は政府側によれば、240万人のうち10万人ということだが、地元ではもっと 多いとみている。これらの移住者と一緒に寄せ集めの資本主義も入ってきた。 チベットの大きな町ではダライラマも認めるように日本製の商品であふれた店 が現れ、繁栄の兆しを見せている。

同時に悪い面も出てきた。買収がはびこって来た。売春は急速に増えた。ディ スコやカラオケと並んで売春はチベット文化を衰退させる策略だと考えている 人もいる。

はっきりした証拠はないが、高校と大学からチベット語、特に文字のチベット 語をなくそうという気配がある。

中国人とチベット人の乱闘も発生しているが、多くのチベット人はダライラマ の非暴力的抵抗を守っている。弱いときに非暴力は易しいが、強くなったとき 非暴力を貫くことは難しい。長年チベットの人々は自分たちの強さを、その土 地と伝統とダライラマだと信じてきたが、これからの移住民・経済発展・外側 の文化侵入の時にこそそれらの強さを必要とするだろう。

民族問題は難しいです。民族と国民と市民、国家と社会、そしてチベットの場 合は近代と伝統、これらすべてがねじりあって複雑です。冷戦時代、民族問題 が封印され情報が伝わってこなかった時、国民と市民の概念の違いを理解する のに苦労しました。平田清明の著作を読んだりしても、感覚的にはなかなかわ かりませんでした。今、各民族が己の主権を叫び始めています。もうこの問題 で悩むことはなくなりましたが、事態はさらに複雑化しています。

YUKI



感想はこちらに・・・YHJ00031@niftyserve.or.jp
Internetの場合は・・・ohto@pluto.dti.ne.jp

ホームページに戻る 

TIMEのホームページに戻る