ラシュディー、インドの豪邸の所有権を主張(1/4)


*Rushdie claims £1m Indian house of death
Novelist becomes protagonist of saga with elements of acrimony reminiscent of his fiction

「悪魔の詩」を書いたために、イランのホメニィーから一方的に死刑判決を受 けたSalman Ruhdie、その彼がインドのデリーにある100万ポンドの家の所有権 を主張しているという記事です。その内容は辛辣さと陰謀に満ちた彼の作品を ほうふつさせるものであるとか。100万ポンドといえば、現在の円相場で行け ば2億2000万くらいですから、これはインドの感覚ではものすごい豪邸でしょ うね。何故Rushdieがこの家の所有権を主張するのかははっきりしないところ もありますが、とにかく長年もめていたことは事実らしい。

1940年代に、Rushdieの父親で裕福なビジネスマンだったAnis Ahmedがその家 を買った。1963年に一家はインドからイギリスに移る。このとき現在の所有権 を主張している退役軍人のInder Mohan Lalが、家の半分に家族と共に移り住 んだ。このとき弟(多分。兄かもしれませんが)のJag Mohanも移り住んだ。彼 らが移る根拠となった権利関係が記事からは良く分からない。賃貸借だったの か、それとも売買だったのか。残りの半分を占有している前国会議員のBhiku chand Jainは売買だったといっているようですし、Rushdie側は1970年代から 占有者は家賃を払っていないと言っているようですし、偽造文書云々も書かれ ていますから、このへんが争いの焦点になるようです。

ともかく数年来Rushdieと占有者の間には裁判上の争いがあった。そうしたと き10月26日にInder Mohan Lalが、弟のJag Mohanに殺されると言う事件が起き た。タイトルの「死の家」house of deathというのは、このへんを指している わけです。まあ死因に関しては問題もあるようですが、とにかく賃借者が死亡 した。法律上の扶養家族はいなかったらしい。弟のJag Mohanを初め親類のも のたちが、なお住んでいるのですがどうやら彼らには権限はないらしい。だか らRushdie側はInder Mohan Lalが住んでいた居住部分を封鎖するようにと主張 しているわけです。

Rushdieの父親Anis Ahmedは1987年に死んだ。長年裁判を争っていたようです から、彼の死後、事態はますますこじれていたのでしょう。

ただこうした裁判問題を離れても、なかなか問題はあるようです。仮に Rushdieが、裁判に勝訴したとしても、自身で財産を直接調べることは出来そ うにもない。インド政府が彼にビザを発行しそうにないからです。インド は、「悪魔の詩」を最初に発禁処分した国。今でも国内には多分1億人以上の イスラム教徒を抱えているはずですし、パキスタンとの関係は最重要課題でし ょう。もしもRushdieの訪印を許すようなことがあったら、イスラム教徒とヒ ンズー教徒との衝突が発生し、政治問題になるでしょう。だから近い将来 Rushdieがインドに行ける見込みはまずない。

それにも関わらずRushdieのインドに寄せる思いもまた深い。彼の最新作The Moor's Last Sighは、インドとその人々とそして彼らの都市を豊かに描写して いるようです。彼の作品のミューズの源はインド。そのインドに1980年代半ば から帰っていない。新しい創作のインスピレーションを得るためにも、彼はイ ンドに帰りたいようです。

実は彼はデリーの家の他に、先月5年にも及ぶ裁判の結果、ヒマラヤの避暑地 Solanの別荘の所有権を回復した。そこには既に電話とFAXを備え付け、管理人 を置くように手はずも整えた。彼はそこを自分自身や他の作家や芸術家のため の静養先にしたいらしい。もう監視付きの生活には飽き飽きしているでしょう から、落ちついた生活を望んでいるようです。

しかし彼のいらいらはまだまだ続く。BBCが彼の小説Midnight's Childrenの映 画化(テレビ化?)しようとしたとき、インド政府は自国でのロケを許さなかっ た。スリランカで許可されて、現在進行中のようですが、そのスリランカでも 反対意見は強い。彼のように、常に死の脅迫と向き合って生きていることは、 つらいでしょうね。



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