アラファト政権の腐敗(98/1/4)


みなさん、おめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

今年初めの感想として1月4日付のThe Sunday TimesのWorldの記事からいくつ かを読んでみました。まずはパレスチナの記事から。

1. Revolt builds against Arafat
Palestinian president accused by his own party of failing to curb rampant corruption and alleviate poverty

アラファトが来月もしかしたら不信任案決議の不名誉を受けるかもしれない。 不透明な中東情勢ですが、これは別にイスラエルとの和平が進展しないからで はない。身内の腐敗堕落が原因です。一般住民の貧困をしり目に、一部高級官 僚の腐敗ぶりが目につくからです。本文ではsenior officialsとなっています が、当然アラファトの側近が含まれます。

一部の高級役人が豪華な邸宅を建て、高級車を買っているのが、未だに難民キ ャンプで苦しい生活をしていたり、ガザ地域では48%の失業にあえぐ国民から 見て不信の念が高まっている。これにはアラファトのファタ党内部からも、怒 りが起きているようです。彼は大幅な改革と汚職根絶の手段を講じると宣言し たようですが、失敗すれば35年にも及ぶパレスチナの最高指導者としての地位 を失うかもしれない。

ある大臣は数十代のMercedesを関税なしで輸入し、それを市場価格で販売して 利ざやを稼いでいる。さらにリベートやら、財源の横領なども含めると、国庫 の40%近くが無くなっているようですから、住民が怒るのも当然といえば当然 でしょうか。

本文では3人ほど例が紹介されています。PLOの執行委員会の事務総長Abu Mazenはガザの繁華街に推定250万ポンドの豪華な邸宅を建造した。この人はア ラファトの後継者とみなされているようですが、その家は3階建てで塔などが ついた豪華なもののようです。同じような家を西岸のRamallahの町にも建てて いる。息子達によれば資金は西側で稼いだものということのようですが、住民 の疑いは晴れず、怒りも収まらない。

近くには1988年にイスラエルによって暗殺されたAbu Jihadの未亡人Um Jihad の家がある。彼女の家はAbu Mazenのほど豪華ではないようですが、彼女は年 収20000ポンドの社会福祉大臣。その仕事は貧しい人たちの面倒を見ることで すから、目立つらしい。彼女は建築資金の出所説明を拒否。

しかし一番豪華なのはガザの治安責任者(? the head of Gaza's security service)Mohamed Dahlanの家。地上5階、地下2階の、80室もあるといわれる豪 華な邸宅です。どうやら外観というか、外枠は完成したらしい。

こうした建物に対する国民の反感を気にしてか、パレスチナ自治政府はそうし た家の写真を取ることを禁じたようです。Dahlanの家の写真を撮うとした Sunday Timesの記者は、カラシコフ銃を持った係官に阻止され、邸宅に近づく ものは誰でも逮捕されると脅かされたようです。Dahlanの年収は2万ポンド足 らずのようですが、突如として建設を中止した。理由は「彼がそうしたかった から」He stopped it just like that, just because he wants to.

アラファト自身は、安全上の理由から6つくらいの家を転々としているようで す。まあこれは彼の家ではないようですが。彼の場合、家にかえることも稀な ようですから、そんなことを考える余裕もないのでしょうか。

まだ汚職の告発はないが、彼らの資金源としては政府企業の取引に疑いがもたれている ようです。食料輸入から土地開発まで、幅広い活動をしているのが政府企業のようです が、どうもその内容は秘密になっているらしい。政府側の主張はなんら法律に違反する 活動はしていないということのようです。

こうした腐敗ぶりと比べたとき、ハマスの活動は目立つ。海外では過激派のイ メージが強い彼らは孤児院・養老院を含めて、幅広い福祉事業を行っている。 学校やら、病院などを経営していることは時々読みますね。

自治制府が堕落すればハマスの人気は上がる。そうすると中東和平はますます 遠ざかる。68才のアラファトは、いろんな事件やらパーキンソン病に似た症状 と闘いながらも、頑張っている。様々な改革も約束している。それに応えるか のように、西側諸国は今年6億ポンドの援助を約束した。

国連やEU、それにそれぞれの援助国は多かれ少なかれパレスチナの腐敗に気づ いているが、このまま自治制府を支えていかなければならない。少しの不始末 には目をつむらなければならない。ある国連の役人は語っている。「アラファ トが指導者であることが、我々の利益にかなう。もし援助がなければ、彼は1 日と持たないことは我々はよく知っている」



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