出エジプトのユダヤ人(11/30)


The Sunday Times 11/30 のBritainの記事からです。

* Moses: at last it all adds up
by Steve Connor Science Correspondent

エジプトのファラオの下で、奴隷であったユダヤ人たちがモーゼに率いられ て、エジプトを出国して砂漠にさまようこと40年。映画「十戎」でも、お馴染 みのこの出来事は本当に歴史的事実だったのか。それに似た事実があったとし て、聖書に書かれていることは事実を何処まで反映しているのか。

紀元前13世紀に起きた「出エジプト記」の記述の中で何よりも信じられなか ったのが、200万人もの人々が、エジプトを脱出して40年間も砂漠を放浪する という非現実性でした。現在の中東諸国の人数から数えても、まず信じられな い。それにこれだけの人数がいなくなったという記述が、エジプト側の資料に ないのもおかしい。

この記事はそうした疑問が、科学的研究の結果ようやく明らかになりつつある ということを紹介しています。それによれば、出エジプトに加わったイスラエ ル人は2万人。何故今までに200万人と伝えられていたかというと、初期の聖書 の民数紀を筆写した人が間違って解釈したのではないか、という事です。たし かにこれくらいならば、可能性としては起こりうる。

この研究をしたケンブリッジ大学のmaterials science教授のColin Humphreys は、聖書記述の正確さを研究しているようですが、長年の疑惑がこれで明らか になったといっています。materials scienceとは、どんな訳語がいいのでし ょうか。道具学? 

もともと200万人という数字は、民数記の中のエジプトを脱出し、イスラエル のために戦った20歳以上の成年男子の数603,550人を元に、推定されたもの。 女性子どもを含めれば、それくらいになるというわけです。しかしHumphreys の推定によれば、砂漠をさまよったイスラエルの民は20歳以上の男性は約5000 人。これに女子・子どもの数を合計すると、2万人くらいになる。これくらい だったら、天から降ってきたマナやうずらなどや水の記述も常識的に許容範囲 に入るというわけです。

誤解のもとになったのは、古代ヘブライ語で"elep"と発音される"lp"という言 葉です。今までは、これを1000人と解釈していた。しかしHumphreysは、この 言葉はもともとtroopとかfamilyという意味だといっています。だからその解 釈によるとある部族の46,650という人数も650人からなる45部隊、の意味になる のだということです。

これで見ると当時のユダヤ人の考え方はいかにも現代的です。20才で大人の扱 いを受けるというのは、当時としては珍しいのではないでしょうか。平均寿命 がそんなに高くない3000年以上前ということを考えれば、現在と成人年齢が同 じというの少し意外です。まあ、聖書、特に創世記に出てくる人物の中には数 百年も生きている人もいるのですが、モーゼの時代の人は比較的等身大に書か れていると思います。それだけに、改めてこの記事で20才という数字を読ん で、少し驚きでした。

はたしてこの解釈が受け入れられるのかどうかは分かりません。この記事は、 Britainの欄に載っているのですが、Britainといってもレーニンの愛人の話が 先週には載っていましたし、けっこうイギリス国内のニュースでないのが多い のです。これはスコットランド版やアイルランド版が出来る前からそんな感じ でした。



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