もう1つの子守事件(11/23)


The Sunday Times 11/23のWorldの記事からです。Louise Woodwardの事件の各 誌読み比べをやるつもりでしたが、感想を書かないままになっています。  (^^;

*Black Louise' case ignites justice row Woodward's 'sympathetic' treatment rekindles interest in poor black girl jailed for 25 years

これは、Louise Woodwardと、同じような事件で、わずか11才の少女が25年の 刑の判決を受けて、現在服役中だという記事です。それにしても、アメリカは すごい。11才であろうと、たとえ不十分な裁判であろうと、25年の刑を言い渡 して収容するのですね。日本とは大いに違う。

この事件も数週間マスメディアに話題を提供したようですが、少女の支持者か らの抗議もむなしく判決は確定したようです。ここで重要な違いはヒロインが 19才の白人のイギリス人少女ではなく、11才の貧しい黒人の少女だったという こと。舞台はテキサスのオースチン。彼女の名前は、Lacresha Murray。物理 的に危害を加えたという証拠も、証人もいない。それでも判決は執行された。 Louise裁判のあと、弁護側は控訴というか、判決は確定しているようですから 裁判やり直しを求めているようですが、どうなるのでしょうか。

Lacreshaは、祖父母と一緒に住んでいた。祖父母は7人の子供を養子として育 てていたようです。そのうちの3人がLacreshaの実の兄弟siblingです。父親母 親のことは、記事には書かれていません。もしかしたらこの7人は祖父母にと っては、Lacreshaがそうであるように、全くの他人ではないのかもしれませ ん。とにかく祖父母は貧困地区で、保育所みたいなものを開いて同じように貧 しい黒人の子供たちの世話をしていたようです。

1996年5月24日に祖母が外出していた。祖父は重いpolioにかかっているようで すから、多分普段は祖母が子供たちの世話をしていたのだろうと思います。家 には12人の子供が残された。5人くらいよその子供を預かっていたことになり ますね。一番幼いのが5カ月、そして一番年上なのは記事には書いていないの ですが、多分11才のLacreshaだったのではないでしょうか。留守の間は彼女が 子供のめんどうを見ていたようですから。

その朝2才になるJayla Beltonが、継父に連れてこられたとき既に様子がおか しかった。祖父や近所の人たちの証言などによっても、Jaylaは病気のようだ った。汗ばみ、吐いていて、腹を抑えて(? holding her side)いた。午後にな ると、奇妙な息づかいbreathing funnyをしていた。Lacreshaは、Jaylaを祖父 のところに連れていき、すぐに病院に連れて行かれるのですが、死んでしまう のですね。

検視報告は次のようでした。An autopsy found Jayla had been killed "by a massive blunt injury to the abdomen with ruptured liver". She also had four broken ribs and bruising.肝臓破裂するほどの暴力が腹部に加えら れた。ろっ骨も4本折れていた。

5日後にLacreshaの取り調べがあり、警察発表では、取り調べ開始2時間半に後 に、彼女は偶然にJaylaを落とし蹴ったことを認めたということになります。 翌日Lacreshaは殺人罪capital murderで、起訴されます。起訴後すぐに彼女の 名前と写真が地元紙に載ります。これはさすがにアメリカでも珍しいようで す。

地区検事は数多くのインタビューで「現在全国に蔓延している子供による子供 の殺人はオースチンも例外ではない」と、語っています。これにも裏があるよ うで、地区検事は1976年以来初めて対抗相手がでる再選を控えていたようで、 この事件をアピール材料にした感じもします。だから急いで1996年8月に裁判 に持ち込んだ。

しかもこの裁判が何とも奇妙なものです。Lacreshaの弁護人はinexperienced public defenderとあります。多分正式な弁護士ではない。これも日本では考 えられない。しかも資金不足で医学的専門家の証言を得ることが出来なかっ た。証拠はLacreshaの自白だけという裁判だったから、まさか有罪になること はあるまいと思っていたら過失殺人罪negligent homicide(これは過失致死と は違うと思います。刑が重すぎる)で20年の刑。

さすがに判事は裁判のいい加減さにあきれたのか、裁判のやり直しを命じま す。今度はLacresha側も、弁護士数人をつけて、もちろん専門家やその他の証 人尋問もしたようですし、万全の体制で臨みます。今年の2月に判決がでたわ けですが、なんと判決は更に重い25年。このときLacreshaは12才になっていま した。Loise Woodwardが、無垢と、か弱さと繊細さのイメージで同情を引き起 こしたのに対し、Lacreshaは貧困と無知のイメージで見られたのでしょうか。

検事側の反応は冷淡です。「マサチューセッツに住んでいなくて幸せだ。かの 地では赤ん坊殺しが釈放されるんだから」

アメリカという国の矛盾をこの事件は象徴しているのかもしれません。それと 素人陪審の欠点が極端な形で現れることも。長所と短所はお互いに、絡み合っ ているとはいえ、やはりこの事件と日本での事件を比べてみたとき、あまりに も落差が大きすぎる、信じられないという感想です。



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