殺人遺伝子はあるのか(10/26)


今週のSunday TimesのWORLD欄は17もの記事があって、しかも興味をひかれる 記事が多かったです。おかげで、読むのに大分時間を取られました。しかし内 容が少し暗いのが多い。読んでいてあまり楽しくならない。世界の株式市場も 暴落しているようですし、あまり読みたくないかもしれませんが。まあ、とに かくいくつかを紹介してみます。

*Murder is a family affair on death row by Christopher Goodwin

Arizonaの刑務所のDarrel Hillと、1000マイル離れたArkansasのJeff Landriganは、ともにいつ処刑されるかもしれない死刑囚です。この2人はお互 いに郵便チェスというのを交換している。郵便囲碁というのは、聞いたことあ りますが、アメリカにもこうした浮き世離れしたことをする人が、たとえ死刑 囚とはいえいるのですね。 (^^;

Hillは57才で、Landriganは37才。Landriganはチェスを愛することと、暴力的 性質がよく似ている。それどころかHillの遺伝子までも持っている。2人は親 子なのです。Billy Hillとして生まれた、Landriganは35年前に養子に行っ た。それ以来2人は会ったことはない。1・2才の時に養子に行ったようです が、名前が完全に変わっていますね。

BillyことJeff Landriganの養父母は、犯罪とは無縁の愛情に満ちた中産階級 upper-middle-classだった。しかし彼が犯罪に走ることを防ぐことは出来なか った。この生物学的な父と息子の経歴が驚くほど似ているというわけで、昔か らの論争に新たな議論がでているわけです。すなわち人の性格は、遺伝によっ て決まるのか、それとも社会的要因の方が大きいのか、というわけですね。

まず簡単に2人の略歴を述べておくと、父親のHillは、3世代にわたる犯罪者と あります。祖父母の代からということでしょうか。7才でギャングの一員にな り、11才で強盗をしているときに撃たれ、16才でオクラホマ州刑務所の最年少 の受刑者となった。刑務所に入っているとき、最初の殺人を犯した。酒と麻薬 に溺れ、武装強盗などの罪で、何回も刑務所に入り、1980年に脱走したとき犯 した強盗殺人をおかし、死刑判決を受けている。

息子のLandriganは10才になるまでに、やはり酒と麻薬に溺れ、賭玉突き場に 出入りするようになった。22才の時、子供時代からの友達を殺し、5年後さら にテキサスでバーテンを殺した。

2人の驚くべき類似性が、過去の論争を現代的にして、問いかけているわけで す。すなわち「殺人遺伝子killing geneが存在するのか」、というわけです。 これは生まれつきの殺人者は存在するのかと言うわけですね。Landriganの弁 護士(複数)は、その存在を信じているようで、Landriganは死刑囚になるべく 運命づけられていたと主張しています。2人ともまだ上訴の手続きをしている ようなので、一種の法廷戦術かもしれませんが、これは専門家でも支持者がい る。

しかしこれは確かに危険な側面も持っている。この理論が一般に受け入れられ れば、犯罪率の高い黒人などへの人種差別が広がりますから。こうした理論の 1つとしては、あるオランダ人の研究があるようです。幼いときに養子に行っ た人たち14000人の生物学的親子の間の犯罪率を調べて、ある程度関連がある という結論を出しているようです。この理論を支持する心理学の教授によれ ば、「少年が犯罪を起こすかどうかは、父親を見れば分かる」ということにな るようです。

これは今の所アメリカの主流にはなっていない。ほとんどの有力な犯罪学者 は、生物学的要因と環境要因のどちらも、犯罪に関連があるとしていますが、 例えば赤毛を遺伝するというような意味での殺人遺伝子はない、と言っていま す。今までの犯罪者は幸福な安定した家庭で育ったものが少ない、ということ が主な原因かもしれません。しかしもしかしたらまた新たな議論の引き金とな るのかもしれません。

昔遺伝のところで習った、天才音楽家とか犯罪者の家系のことを少し思い出し ました。



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