栗本薫の世界


栗本薫の本を続けざまに3冊読んだ。もともと好きな作家であるだけに、読んでいない本を図書館で見つければ、手にとって見ることにしている。私は多分グィンサガシリーズを60冊くらい、そのほかの作品も10冊以上は持っている。すべて文庫本である。しかしここ数年は彼女の作品もあまり読んでいなかった。今年は図書館に通い始めたおかげで、かなりの作品を読むことが出来た。もしかしたら彼女の作品は、既に100冊くらいは読んでいるのかもしれない。

今回読んだのは、私が一番お気に入りのファンタジーは含まれていない。しかしいずれも楽しめた。最近また読書の楽しみに目覚めたのか、他のことを少しおろそかにしている気がする。しかしやはりどの本でも良いというわけにはいかない。前から知っていたし、世評が高い本でも、20ページから30ページくらい読んでもその世界に入っていけないものは最後までは読まない。この辺は少しわがままになっている。だから一気に3冊も読めたと言うのはやはり栗本薫と言う作家のstory tellerとしてのすぐれた才能をあらわしているのだろう。前に読んだ「神の柩」と併せて、ここ数日は読む本に恵まれた。

*新天狼星 ヴァンパイア 恐怖の章 講談社 1997年2月発行
*家 角川ホラー文庫 1993年12月発行
* ネフェルティティの微笑 角川文庫 1986年3月発行

天狼星のヴァンパイアは前に読んだ真・天狼星シリーズと同じ事件を扱っている。しかしここでは竜崎晶が語る、という形になっている。当然伊集院大介も晶の視点で語られることになる。なかなか面白いと思う。実際にはこちらの方が早く出版されているようだから、この本も含めて何冊かをまとめることで、真・天狼星 ゾディアックシリーズ全6冊がまとめられたのだろう。幻魔大戦シリーズがこうした形を取っていたと思うが、いずれにせよ人気が無ければ無理だろうから、このシリーズはかなり熱狂的なフアンがいるのだと思う。栗本薫の場合、HPもMLもあるはずだし、そこでは大分盛り上がっているのかもしれない。

彼女の作品ではよく登場人物の人気投票の結果を発表していたし、もしかしたら今人気があるのは竜崎晶なのかもしれない。以前はほとんどがグィンシリーズの人物かだったはずである。もちろん伊集院大介は入っていたと思うが。

ストーリーそのものは、ゾディアックシリーズでよく知っていたわけだが、それでも最後まで楽しく読めた。

「家」は角川ホラー文庫の1冊として書き下ろされた作品である。自分の家を持つことを生涯の夢とした一人の主婦がマイホームの夢をかなえた所から、物語は始まる。自分だけの思いこみの世界を築きあげた主婦が、現実を見ようとしないで空想の夢の世界にいきる所が面白い。しかし現代の家族の孤独をよく描いているのかもしれない。

ホラー作品には私はどうしても感情移入できないところがあるのだが、この作品が3冊の中では熱中度は比較的低かったのもそうした面があると思う。

最後の本はエジプトを舞台にひろげられる冒険活劇推理小説である。この言葉は解説を書いている吉村作治氏の言葉であるが、なるほど今でもこうした言葉が使えるのかと思った。TVでもよく拝見する吉村氏も当時はまだ講師だったらしい。昭和61年の作品であるから、大分前の作品である。

古代十八王朝のアクナートンの王妃ネフェルティティによく似た女性との邂逅から物語は始まるのだが、私も古代エジプトは興味を持っているだけに、楽しく読めた。最後のどんでん返しなどは、推理小説の常道とはいえ、見事なものである。こうした作品を私ももう少し読んでみたい。

1999-12-25



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