「第三閲覧室」と「女学生の友」


まったく関係の無い本を、続けて2冊読んだ。

*紀田順一郎 第三閲覧室 新潮社

この著者の本は今までにも何冊か読んでいる。しかしいずれも書誌的なものというか、本に関してのものであった。小説は初めてである。

地方大学の図書館に発生した殺人事件を扱っている。ここにはこの大学の創設者兼学長が収集した東西の貴重な本が集められている第三閲覧室がある。そこが殺人の舞台になるわけだが、登場人物には大学関係者以外に古書店主や紙の権威者、古書通信の発行者などが出てきて、あちこちで本についての薀蓄を傾けてくれる。いろんな珍しい古書も出てくるのだが、幻の奇書を擬した偽本作りなども出てきて、本好きにはなかなか楽しめる。

作者はこれ以外にもミステリーものを幾つか書いているらしい。機会があれば、読んでみよう。

*柳 美里 女学生の友 文藝春秋

「女学生の友」と「少年倶楽部」の2編を収録している。題名から云えば、どちらも昔の雑誌みたいだけど、内容は女子高生の援助交際やら、小学生の集団性犯罪というわけで、現代風に生々しい。彼女の作品は評論も含めて、2冊読んでいるけど、あまり読後感は良くなかった。しかしこれらは内容は別にして、すらすらと読めた。多分文体が読みやすくなったのではないかと思う。

あるいは以前読んだ小説が、あまりにも私小説的というか現実の生々しかったのに対し、これらの作品がいずれもデフォルメ化されているからであろうか。題材的にそんなに楽しいわけではないのだが、私にはノンフィクションかモデル小説のようなものよりも、よりフィクション性が高いものが楽しめるような感じがする。

コギャル言葉やら、ゲームの話やらが出てきて、それなりに面白かった。さすがに私にはなじみが無い世界だから、時々理解不能な言葉もあったけど、時にはこうしたものも面白い。

99-12-17



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