Falling Leaves by Adeline Yen Mah (C. Nakagawa)


Falling Leaves by Adeline Yen Mah
Published by Broadway Books, 274pages

19世紀後半、曽祖父は上海で茶店を経営して成功し、子供達は一族ではじめて西洋教育を受ける。祖父のYeYeは天津で貿易商として成功、引き継いだ父も手広く貿易商を営み財を成す。1930年父は母と結婚。

1937年6月、日本は天津と北京に侵攻し、それ以来中国と日本の戦争が8年続いた。同じ年の11月30日、私Adelineは姉Lydia,3人の兄Gregory, Edgar, Jamesの次ぎに5番目の子供として生まれるが、母は私を産んで2週間後に30才で死ぬ。やがて父は再婚、新しい母をNiangと呼ぶ様に祖母に言われる。異母弟のFranklinと異母妹のSusanが産まれる。Susanが産まれてまもなく太平洋戦争が始まった。

Niangはすべてを取りしきり、祖母も同居している叔母のBabaも口出しできなかった。実の子供のFranklinとSusanは家庭教師がつき贅沢に育てられていたが、自分達兄弟はいつも空腹をかかえていた。慰めはBabaが母のように気遣ってくれたことだった。

太平洋戦争が終わりまったく先が読めない時代になって、1948年父は香港へ移る。私は作文のコンクールで1等賞をとったことで父が兄達と同じように英国に留学することを許してくれた。1952年英国に渡り医学を修めて1963年香港へ帰った。父の知り合いの病院に勤めるが、アメリカからきた交換留学生の薦めでアメリカに行く。アメリカに着いて6週間後、レストランで働くByronと結婚、1966年息子Rogerを産むが、幸せな家族を装うのに疲れて1971年離婚。

Babaは上海で銀行に勤めていたが、文化大革命のもと、財産は没収されで苦しい生活を送っていた。 1972年私はUCLAの教授Robert Mahと結婚、2年後Annが産まれる。1977年父はアルツハイマー病と診断された。1988年父が亡くなった時、父の財産はゼロで分けるものは何も無いとNiangは勝ち誇った様に宣言する。Niangがすべての財産を自分名義に書き換え,父の遺書を改ざんしたのをみんな知っていたが、従うしかなかった。

1989年Niangは大腸がんで亡くなるが、遺言には事業を継いだJamesに50%、Gregory, Edgarに20%、Lydiaに10%,Susanと私にはゼロというものだった。私はお金の問題でなく家族として認められなかったことにショックを受ける。Niangの家で見つけた父の遺書には財産を7等分して、7分の1を私に、とあった。遺書は1974年に署名されていてアルツハイマー病になるずっと前に書かれたものだった。私はこの遺書を読んで、父に抱かれ、痛みを和らげてくれる父の声が聞こえる様な気がした。

1994年Babaは89才で死んだ。母を知らずに育った私に愛情と寛大さとユーモアを持って接してくれたBabaの死の床に添い寝しながら、命の輪廻について思いをめぐらした。落ち葉は根に帰る、と静かな落ち着いた気分になっていた。

この本は事実に基づいて書かれています。著者は、産みの母が自分を産んだ後死んだことで、不幸をもたらした子と疎まれ、自分のことを望まれない子と言わなければならなかったつらい子供時代を過ごします。混乱の時代に、継母の虐待や兄弟からの疎外にあいながらも、勉強が出来たおかげで英国留学という夢がかないます。当時医学を志す女性は少なく、女性であることや中国人であることで差別を受け、よほどつらかったらしく働く場所を英国でなくアメリカを選んだのに少なからず驚きました。挿入されている12枚の写真が時代を反映していて興味深く、大変面白く読むことができました。



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