INTO THIN AIR A Personal Account of the Mt. Everest Disaster (C. Nakagawa)


INTO THIN AIR A Personal Account of the Mt. Everest Disaster
by Jon Krakauer
published by Anchor Books, 378pages, $7.99US

Content:
1996年春Jon Krakauerはニュージーランドの登山家Rob Hallが率いる商業登山隊 に雑誌記者として参加します。お客(client)が8人、ガイドが3人、シェルパ4人からな るこのチームは、4週間にわたってベースキャンプから頂上をアタックする第4キャン プの間を登ったり降りたりして、Hallの立てた周到な環境順化計画をこなします。
1996年5月10日の早朝第4キャンプを出発、エベレストの頂上を目指しますが、お客8 人のうち登頂できたのは3人だけで、しかもリーダーのHall, ガイドのAndy, アメリカ人 のDoug, 日本人のYasukoは急変した悪天候のもと、下山途中で遭難してしまいます。 この日、ほかの登山隊の5人もの人たちが死に、この悲劇は75年前にエベレストがはじ めて征服されて以来最大のものになりました。

Impression:
 著者のJonは、自分の体験をもとにして、またその背景を詳しく取材し て、この日のことと現代エベレスト登山の実態をあらゆる観点から書いています。そ のなかで彼のチームメートの4人が死んだのは、断じてHallのやり方に不備があったの ではなくて、その日エベレストで自然のシステムが極度に壊れたからだ、と書いてい ます。実際にあった出来事は、ショックを受けずに読むことはできません。エベレス トに無事に登り、事故なく下山してくるには精神的にも身体的にも大変なリスクを伴 います。高度による脳浮腫や肺浮腫、低体温症、凍傷などの致命的な危険がありま す。実際Jonは子供のときからの念願のエベレストの頂上に立つことができましたが、 厳しい下山のことを考えそそくさと降りはじめます。

世界の最高峰エベレストの商業 化が進むことに批判的な人々もいる一方で、商業登山が一般化した背景には、ビジネ ス上の確執、そのメディアへの売りこみ、中国とチベットの経済事情などがありま す。頂上付近には1000個もの空の酸素容器が捨てられていることやルートの脇に遭難 者の死体が何年も放置されたままになっていることなどに驚きました。同じ日に登頂 した別のアメ リカチームのガイドをしていて、この悲劇を見届けたアナトリ・ブクレ ーエフが「The Climb」(邦題デス・ゾーン8843M)を出版していますので、読み 比べればいっそう事実に近づけるのではないでしょうか?

C. Nakagawa



感想はこちらに・・・・・・ohto@pluto.dti.ne.jp


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