Pigmanの遺産 by Paul Zindel


*The Pigman's Legacy by Paul Zindel (A BANTAM STARFIRE BOOK)

ZindelのThe Pigmanの続編を読んでみた。これは内容的にいってもやはり前作 の最後の後書きで書いていたThe Pigman Returnsに当たると思う。

この続編は面白かった。薄い本で最初は字が小さくて読みにくかったが、後半 は一気に盛り上がってきて夢中で読んだ。それにこの作品は、ストリーという か、主人公たちの考え方・行動はなかなか好ましいというか、彼等を一気に好 きになった。

多分、これは登場人物が、少ないからだとおもう。JohnとLorraineとMr. ColonelとDolly、それに犬のGusだけだ。本文でJohnやLorraineの親たちや、 友達、病院の医師・看護婦なども少しは出てくるが、彼等のことはほとんど書 かれていない。

形式は前作と同じく、奇数章をJohnが、偶数章をLorraineが書くという構成に なっている。今回はその中に、お互いに対する想いを、一部隠すという形を取 っている。

2人はPigmanの死を契機に子供時代と決別したのだ。彼等は、Pigmanの死に責 任があると思っているが、それに悩むことで、精神的にも成長したようだ。そ れに彼等の親たちも彼等を理解しようと、いろいろ努力し始めている。16才に なったばかりの彼等が、ようやく大人たちの苦悩を理解し始めた。だから彼等 の不満・寂しさは残っているにせよ、家族に対する憎しみ・軽蔑の念は大分薄 らいでいる。この作品には、The Pigmanに見られた私自身には理解不能と思え る言動は、Johnの場合を取ってもほとんどなかった。彼は相変わらず嘘をつく ことがうまいが、今回は反発を覚えるよりも、感心してしまった。

ストリーの展開はJohnとLorraineの2人が今は亡きPigmanの家を訪れるところ から始まる。驚くことにそこには人が住み着いていた。彼等は、それをPigman の亡霊だと思うが、実は自分の死期を予感して、しかも自分の家で死にたいと 望んでいたMr. Colonelだった。この人は、昔はスウェーデンの地下鉄を設計 したり、現在も大きな博物館みたいな屋敷を持っている。そのなかには各種の 恐竜の壁画やら、貴重な物がいっぱいあるようだ。しかし現在はIRSの追求を 何より恐れている。かつての金持ちも税金未納が続き、現在は財政的にはほと んど破産者のようで、かつてのPigmanの家に侵入し、食べ物を買う金もなく、 diverticulosisの病気のためにその気力も無く、誰にも知られず死ぬ寸前だっ た。その時JohnとLorraineと知り合ったというわけだ。設定が少し無理がある かなとは思うが、年齢ははっきりしないが、最後にDollyと結婚式を挙げると きに82歳以上となっていたようだから、まあこのへんは目をつむっておこう。

JohnとLorraineは、Mr. ColonelにかつてのPigmanの面影を見る。それは自分 たちの両親には見られない優しさだったのか。ここでもまた愛に飢えた者同志 は交流を深くする。それにJohnたちの学校の食堂の清掃員であるDollyが加わ る。彼女はかつては結核サナトリウムの補助栄養士だったのだが、結核が少な くなっていくにつれ、いわば職業的には降格という形になったわけだ。Dolly は60才だが、ColonelもDollyも結婚歴なしという設定。

彼等4人はある日、Atlantic Cityを目指して遠出する。そこにはカジノがあ って、ColonelとDollyは大金を稼ぐ。ところが2人がその金をどのように使う かと楽しい話しをして過ごしていた間に、その金を預かったJohnはすべてギャ ンブルで無くしてしまう。それを知ってColonelとDollyは悲しそうにするが、 それでもJohnを責めようとしない。両親とは大違いだ。夢破れて4人がStaten Islandに帰る途中、Colonelの様態が急変し、病院の緊急治療室に運ばれる。 そしてColonelのたっての願いで、ColonelとDollyはまさにColonelが死ぬ直前 に結婚式を挙げる。ギャンブル場から最後にかけては、私は一気に読んだ。

The Pigmanにもこの続編にも謎というか、人生のパズルというか、スフィンク スの謎みたいなパズルが載っている。The PigmanのはWife, Husband, Lover, Boatman, Assasinの5人が出てくるやつで、私もかつて流行した心理ゲームで 読んだことがある。この本で読んだときには驚いたが、どうやら源流はギリシ アにあるらしい。そしてこの本で紹介されているGame of Lifeも興味深かっ た。果たしてこうしたパズルが真理を言い当てているのかどうかは分からない が。

人生にとって、人は何をもっとも重要と考えるのか。どうもZindelの本は、若 者にこうした問いを投げかけているらしい。ユージーンでもインド人のマハト マはシバ神への信仰を通して、人生とは何かということをいろいろと話してい た。最後にJohnとLorraineはそれは愛だということを確信する。

Pigmanシリーズの2冊は若者と老人の交流を描いている。こうした作品が今で も人気があるのかどうかは分からないが、ここではアメリカの老人たちの寂し さとそしてまた潔さも書かれている。そして何よりも、individualismの厳し さ。

Zindelの作品で未読のはあと5冊手元にあるが、タイトルとカバーを見ると、 teens romanceのようで読むのに少し気が引ける。もちろん今まで読んだ3冊も 大きくいえばそうなのだが、これらはそれだけではない。しかしZindelの場 合、大体予想は裏切られているから、少なくとも後1冊は読んで見るつもり だ。

98-5-9



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