The Pigman by Paul Zindel


*THE PIGMAN by Paul Zindel  (A BANTAM STARFIRE BOOK)

ユージーンの日記に続いて、ZindelのThe Pigmanを読んでみた。これもBANTAM BOOKSである。どうやらこの作品で彼は小説家としての名声を築いたらしい。 初出版はHarper & Row から1968年3月に出ている。とすると、主人公たちは私 とはあまりに違わない世代ということか。

BANTAMのタイトル裏にあるRL 6, HL age 12 and upという記述から見ると、こ れもヤングアダルト向け、日本でいうティーンズ向けである。そしてこれも読 者対象は男の子だろう。作品構成は奇数章をJohn Conlan, 偶数章を Lorraine Jensenが書くという形になっている。2人とも、Franklin High Schoolのsophomoreという設定である。仲良しの2人組だが、まだ恋人というわ けではない。最後に載っているZINDELのinterviewなどから判断すると、15才 の少年がモデルらしい。4年生高校の2年生と考えれば、年齢的にはぴったしあ てはまる。

JohnとLorraineの家庭生活はあまり幸福ではない。Johnのような腕白少年を持 った父親母親は大変だろうと思う。家の電話に接着剤を流し込んでは、使えな くしたり、平気で嘘をつくというか、嘘をつくことに生き甲斐すら覚えている ようだ。もっとも彼の将来の希望は俳優だから、人生これすべて演技だという ことを早くも悟っているのかもしれない。Lorraineの場合、父親は既に無くな っているのだが、母親にいわせれば最低の男だったらしい。彼女は通いの看護 婦だが、患者たちの悪口ばかり言っている。さらに給料が安いことを口実に、 平気で派遣された家庭から物を盗んでくる。まあ、古典的少年少女小説の設定 と、現代の若者向け作品が異なるのはしかたないとしても、Zindelの登場人物 たちはどうしてこんなにも倫理観が希薄なのだろうか。たぶん、こちらが現実 感覚というか、読者にとっても身近に感じるのかもしれない。偽善を描くどこ ろか、偽悪でもなさそうだ。事実の方がはるかに厳しいというわけだ。

もっとも当時は既成の価値観が今以上に崩れているときであった。それにこれ はあくまでも若者たちの視点から見た大人たちなのである。大人たちに良いと ころがあるとしても、彼等はそれは敢えて無視するのはいつの時代にも変わら ない。母親には従順であったLorraineでも、最後の所では、母親のコピーから 抜け出して、自分自身を確立するために、反抗するのだから。現代は30年たっ ているから、もっと題材は深刻かもしれない。

物語は2人の主人公がひょんなことからMr. Pignatiと呼ばれる孤独な老人(し かしまだ60にはなっていない!!)と出会い、そして悲劇的結末を迎えるまでを 描いている。仲間の少年を含めて4人で見知らぬ相手と電話でどれくらい長く 話せるかを競っていた時に、2人はMr Pignati、すなわちThe Pigmanと知り合 う。Mr.Pignatiは名前にちなんで、豚のぬいぐるみやら、いろんな豚関係のア イテムを収集していることから、主人公たちがつけた愛称。

しかし主人公たちの性格というか、行動にはほとほとついていけない。最近の 日本の若者に似ているなという感慨を少し持ったが、多分これは私が年を取っ たということだろう。主人公たちとPigmanの3人の出会いが、悪戯にしては込 み入っている。話し相手がいないPigmanの弱みにつけ込んで、慈善団体の物だ と偽って10ドルをもらうということになる。私は読んでいてときどき、Johnに 対してはそのあまりの自由奔放さについていけないと思ったが、まあ友達の中 にはには将来殺人者間違いなしのNortonのような人物もいることだから(もち ろんこれはJohnの言葉であるから少しは割り引かなくてはならないが、書かれ ている内容から見たら既にその兆候は十分にあるようだ)、それから比べたら 彼は邪心はないというべきか。

家庭内でやすらぎを見つけられなかった2人はMr. Pigmanといると不思議に心 が落ちつく。Mr.Pigmanは最初妻はカリフォルニアの妹の所にいっていると話 していたが、どうやら少し前に妻は死んだらしい。2人がお互いに深く愛し有 っていたということに主人公たちは驚く。3人は孤独な魂がお互いに引かれる ように、一緒にいるとくつろぎを感じてくる。3人は一緒に動物園に行ったり する。Mr.Pigmanは毎日動物園に通っていて、ここのエピソードはなかなか重 要だと思うのだが、詳しく書くのは面倒くさいから省略。3人はデパートや、 家の中をローラースケートをはいて走り回ったり、ユーモアあふれる会話を交 わしたりなかなか楽しい時を過ごす。M r.Pigmanも急に若返ったというか、2 人を仲間と思っていたのだが、はりきりすぎで心臓発作で倒れる。

Pigmanが退院するかもしれないという日に、JohnとLorraineは、Pigmanの家で パーティを計画する。2人とも友達を自分の家に招待することが出来ない環境 にあったから、そのお返しの意味もあったのだろうが、多くの友達と一緒に Pigmanの家をめちゃくちゃにしてしまう。Pigmanが何よりも大事にしていた妻 の服をはじめ、豚の収集物も壊してしまうから、もちろん家に戻ってきたMr. Pignatiの驚き悲しみといったら・・・彼は心優しいから、怒り狂わないが、 さすがに2人の行動を若者にありがちなユーモア・ジョークとして片づけるこ とは出来ない。

JohnとLorraineは、お詫びもかねて、ようやく元気がないPigmanを動物園に連 れ出すのだが、Pigmanがお気に入りでこの世で最大の友と信じていたひひの Boboが死んでしまったことを知って、悲しみのあまりPigmanもその場で死んで しまう。

私は大体こうした作品は苦手だ。Zindelの作品はヤングアダルト向けとはい え、共感がなかなか沸き起こらないような気もする。ユージーンは面白かった が、今まで読んだ他の作品の登場人物は苦手なタイプが多い。Zindelは死んだ はずのPigmanシリーズとしてThe Pigman Returnsという作品を書くと予告して いる。この作品が書かれたのかどうか知らない。この感想を書きながら、同時 に読み始めたThe Pigman's Legacyがそうではないかと思うのだが・・・

何故この作品が面白いのかよく分からないところがある。しかしあまり共感し ないと書きながらも、しばらくZindelを読んでみようと思っている。

1998-5-8



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