「英国貴族になった私」 (マークス寿子)

「英国貴族になった私」 (マークス寿子)
《草思社 ISBN 4ー7942ー0265ー2》

図書館で借りた本なので、新しくは ないのですが、それが却って 当時の社会状 況と現在の比較ができて、面白く 読めた本です。

Toshiko Lady Marks of Broughton 英国籍で貴族、ですが れっきとした日本女 性、その半生記です。

全英一のスーパーマーケット・チェーン、 マークス&スペンサーの3代目当主、 マイケル・マークスと結婚して貴族の称号を得たのですが、 いわゆる サクセス・ ストーリーでは ありません。
学生の頃より、周囲の反対を押し切って 学問というか、研究に拘り続けてきた人です。 35才で すでに学生結婚に失敗、 運良く ロンドン大学で1年契約でのスタッフ に採用され、 5年後に英国貴族と結婚、離婚、 この本の書かれた1986年にはエセ ックス大学現代日本研究所日本語コース主任ということです。
1936年生まれですから、戦争も知っている世代。 当然、今より ずっと保守的 だったろう時代に、 これだけ自立し 常識に囚われず 思い通りに生きてきたこと に まずは圧倒されます。ですが、型にはまりきらなかったからこそ、苦労し 傷 ついた ということも あるのでしょう。

ですが、私がこの本で面白かったのは この女性の生きざまというよりは、彼女 を通してみる 日本、そして主には イギリスの社会、大学、 庶民の生活、価値観、ナ ドナド が語られているところです。後半でも 福祉の日米比較、一人の日本人の目 から見たイギリス貴族の様子など 興味そそる内容になってました。イギリスの 文化論という点からも 面白く 読めました。

ただ この本も 一気に読んでないせいでしょうか、私にとっては、最初の辺りが 特に印象に残る個所でした。マークスさん、英国留学に出発されたのが、1971年。 その後の研究のプラスになるとの助言で 日本よりイギリスの旧植民地を 回りながら ゆっくりと英国に向かうのです。沖縄、台湾、香港、カンボジア・プノ ンペン、バンコク そしてインド。当時は、沖縄もまだ返還前、ベトナム戦争の 真っ最中。 それぞれの国で 彼女が立ち止まり、そこの人たちと交わり 語られ る社会状況など 特に今と比較しても おもしろい。特に、女性の目を通してです から。
現在なら感じれ得なかった、大英帝国の遺産と偉大さが味わえる旅だったようです。 日本と英国、アジアとヨーロッパの違いは ただの距離でなく、文化的、歴史的 違いがあり また それぞれ違う顔があるということ、印象的でした。 それも 自分で体験できる旅だったということ、それも 35才デネエ、 うらやまし いのでした。
いやいや、知力、体力、粘り すべてに 敵いませんが。。。(^^;)

8月16日 りん



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