When We Were Orphans by Kazuo Ishiguro (C.Nakagawa)


*When We Were Orphans by Kazuo Ishiguro
published by faber and faber;368 pages

私、Christopher Banksは、子供の頃、上海で貿易会社に勤めていた父が行方不明になり、 2年後母も失踪したため、おばのいるイギリスに連れてこられた。

1930年、Londonで優秀な刑事になっていたが、ここ1年は上海時代の記憶に囚われ、 消息がわからない両親のことや一緒に遊んだ日本人の幼友達のAkiraのことが気がかりだ った。父の会社はインドから阿片を輸入し利益を得ていたが、母は当時蔓延していた阿片 中毒から中国人を救う運動を積極的に行っていた。母と私は、同居していたおじPhilipの 慈善事業の事務所をよく訪ねた。

博物館で当時の阿片貿易の資料を調べたり、私が上海をでてから後の新聞の切抜きかを上 海から取り寄せていた。その中に見覚えのある男の1枚の写真が興味を引いた。この男 Wang Kuは父の行方不明の後、家に出入りしていた多くの男女の中の1人だった。

1937年、私は孤児のJenniferを引き取って育てていたが、寄宿舎に入れて上海に向か った。その1年程前、あるパーティで知り合ったSarahがSir Cecilと結婚して、上海に移 り住むということを知って驚いた。

イギリス領事館のMr. Macdonaldから協力は得られなかったが、1915年当時の父の失 踪事件を担当していた刑事を探し出して、容疑者の1人が住んでいた家を突き止めること ができた。Sir Cecilはギャンブルで有り金を使い果したが、生活を変えようとしないので Sarahは別れてマカオに行こうとしていた。私は一緒に行くことを承知したが、発つ前に どうしてもその家を探し出して調べたかったので、約束を果すことはできなかった。当時 上海には日本軍が駐留してあちこちで中国軍と小競り合いを続けていた。そんな中で、負 傷して中国軍に捕らえられたAkiraと再会し、いっしょに行動することになった。探し当 てた家には両親の痕跡は無かった。

中国秘密警察に伴われて会ったおじPhilipから、父は愛人と逃げて香港で暮していたこと、母は阿片貿易を支配していた地方の有力者Wang Kuの妻となり、イギリスにいる私のためにおばに送金を続けたことを知る。1958年私はJenniferと香港の施設に母を訪ねるが、母は元気そうだったが自分の息子がわからなかった。

子供の頃に身に起こった出来事の秘密が20年もたってから明かされるまで、ハラハラド キドキの展開に引きつけられました。子供心に感じたことが、かなり正確に実情に即して いるものだと感心させられました。



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