ロザムンドおばさんの贈り物


*ロザムンド・ピルチャー ロザムンドおばさんの贈り物 講談社ワールドブックス 1996.3.12
 *THE BLUE BEDROOM AND OTHER STORIES by Rosamunde Pilcher

この本は、読みやすかった。レベル1の「リトル・トリー」からすると、レベル2のこの本が読みにくいはずだけど、私の印象では明らかに逆だし、読みやすさという点ではその差はもっと開くかもしれない。

この本を読んでいて、ずっと前に読んだモンゴメリーの小品を読んだときのような印象を受けた。雰囲気がよく似ている。そうした点では、一昔前の物語と言う感じがしないでもない。ただ、モンゴメリーの作品には長年の秘められた恋と言うような恋愛のテーマが多かったのに対し、こちらは老人と子供の交流と言うような世代間の友情・理解などの作品が多いような気がする。いずれにせよ現代ではなかなかありえないようなほのぼのとした物語で、大体はハッピーエンドですから、気軽に読めます。犯罪事件も起こらないし、日常生活の中で誰にでも起こりそうなエピソードばかりと言うのも人気がある秘密かもしれない。

ここで収められている13の短編の中で、私がひとつだけ気に入った作品をあげるとすれば、Amitaです。これは回想がほとんど言う構成も、悲劇に終わる結末も、他の12の作品と比べたら異色の存在です。1930年代後半のインド人とフランス人のハーフであるAmitaと、イギリス人男性の結婚が、インドにおけるイギリス人社会から受け入れられず、それが幼い少女の目を通して書かれています。人種差別がテーマと言うのも、他の作品とは違う。自分の夢を、幼い少女にしか語れなかったAmitaの心情、Amitaを通して大人たちの偽善性を見ぬく少女の直感、そして第二次大戦で崩壊する英帝国などなど、いろいろありますが、絶世の美少女の悲劇と言うだけでも、十分に物語になる。(^^;

たまたま講談社ワールドブックスシリーズの1冊として、図書館に会ったと言うだけで読んだ本ですが、順不同で読んで行って、結局短期間で読み終えました。婦人雑誌に掲載された作品なのかなとも思いますが、そうしたことについてのヒントは書かれていなかった。ただし邦訳は「婦人之友」に連載されたようです。その後、いくつかのタイトルの下に分散して、単行本に収録されているようですが、それらは晶文社とPHP研究所から出ています。

2000-9-30



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