フォレスト・ガンプ


*ウィンストン・グルーム フォレスト・ガンプ 講談社ワールドブックス 1995.11.7

*FORREST GUMP by Winston Groom

久しぶりに読んだ痛快な本でした。

あまりにも有名な映画の原作ですが、TVでもたびたび放映されているらしいこの映画を、私は1度も見た事がありません。

ただ不思議な縁はある。私はこれを今まで飛行機乗りの物語だと思ってい た。飛行機マニアの甥が、アメリカのパイロット訓練学校から帰ってきたとき、持ち帰って見せてくれた映画の一部が,多分これだった。ただ、彼は他のところには興味が無かったらしく、私に直接飛行機シーンらしきものを見せてくれたのだけど、そのときは他のみやげ話が面白かったのか、あまり夢中になっていなかった。今考えれば、あれはガンプが宇宙に飛び出したシーンだったと言うのがわかる。

もうひとつ、私はずっと前から、この映画の英語版のビデオを持っている。 アメリカのe-palから、送ってもらった。他のe-palからも、ドラマやショーを録画したものをいくつも送ってもらったけど、あらすじは分かるけど、英語がよくわからないから、そのうち飽きてしまって、今でもまだ見ていないものがかなりある。

そうしたこともあってか、この本、あまり期待していなかった。ところが読み出して、かなり早い段階から俄然面白くなって一気に読み上げた。私が思っていたのとは、全然異質の作品、しかし思いがけない掘り出し物でした。ストーリーは、この本の解説にも詳しく書かれているし、周りの人に聞いても映画を見ている人は多く、本で読んだ人さえもいる。タイトルだけは、ほとんどの人が知っている、と言うことのようですので、書きません。私だけが知らなかったような感じです。(^^;

しかし最初のうちは、作品の背景も全然知らなかったから、IQ7が70のフォレスト・ガンプの悲惨な少年時代の話から始まるわけだから、つい現代版ディケンズじゃないのかなと思ったりした。この小説全体で使われる英語が、また南部の教養が無い人独特の、解説者はこれを「フォレスト・ガンプ」語と名づけているが、とにかく英会話や聞き取りが苦手だから、結構難しいかもしれない。まあこの辺は私のいい加減さで、勝手に想像して、読んで行ったけど、大体外れていないと思う。音読すれば、想像はつきます。

学生時代、やさしい英語で書かれていると言われていた「トムソーヤー」の原書に挑んだことがある。ところが、こうした変則英語と言うか、方言は辞書にも載っていない事が多くお手上げで、結局そのときは読破できなかった。ロバート・ケネディの推薦文が載っているPuffin文庫だったが、このとき少しばかり自信を無くした。

内容は私の好きな「ほらふき男爵の冒険」の現代版、というところか。あれはたしか正式のタイトルは「ミュンヒハウゼン」とか、言うのだった。しかし、私はこれがほら話であることに、最初は気づかなかった。これも解説を最初に読んでいなかったからだが、今ではよかったと思っている。しかしほらふき男爵よりは、内容が現実的・写実的だし、より叙情的・ロマンチックである。冒険小説と言っても良い。

IQが70で、自分を愚か者と思っているにも関わらず、数学やチェス、ハーモニカでは第一級の能力を発揮する。フットボールのスタープレイヤーであり、卓球でも頭角をあらわし、プロレスでは活躍し、はては宇宙まで飛び出したり、ビジネスでも大成功する。アメリカンドリームを描いた物語であると言っても良い。これでは今でも人気があるのもうなずける。ほら話でありながら、ペーソスと真実があるのも良い。

フォレストガンプの故郷はアラバマ州モービル。私はこの本を読んではじめて気がついた。そういえば、このビデオをe-palも、モービルの近くに住んでいる。このe-palはジョークは嫌いだそうである。そのe-palから送ってもらったビデオの原作が、こんな作品だったとは、かなりの意外性がある。

アラバマはDeep Southと呼ばれる、南部の州。南北戦争の遺跡もあちこちにある。私のe-palのHNもDixie's Darlingという。えらくやぼったいな、とも感じたけど、南部の人がdixieと言う言葉に寄せる想いは意外に深いのかもしれない。

今度暇があったら、是非とも映画の方も見て見よう。解説者の話によると、 やはり映画の英語もかなりブロークンなんものらしいけど、多分楽しむぬには差し支えないだろう。何も予備知識が無いまま原作から入れたことは、幸せだった、と思います。

日本語訳は同じ講談社から出ています。

2000-9-27



感想はこちらに・・・・・・ohto@pluto.dti.ne.jp


ホームページに戻る 

読書室のページに戻る